おかえりなさい、使い魔ズ?
毛先の跳ねた短い茶髪、健康的な色の肌の色と、吊り目に縁取られた暗い濃紺の瞳。どこかニヤニヤしたような顔がムカつく。形のいい耳には金色の何かの破片のような耳飾りを掛けているようだ。
エレオスもサロモンの身長からするとデカく見えるけれど、コイツはもう少し大きく見える。エレオスよりも少し身長が高いのか、圧迫感があるのか。まぁ、その気になって努力を重ねれば女の子のふりもできそうなエレオスよりも確かに肩幅はあるかもしれない。そこまで筋肉質というわけではないけど、スーツ越しに筋肉があるだろうことは見て取れる。
黒いシャツの一番上のボタンを開いて、やたら質の良さげな赤色のアスコットタイを引っさげた胸元。同じ赤い色のベストにそのアスコットタイの先端が収まっているらしい。パリッとしたスラックスを履いて、上から黒のフロックコートを羽織っている。
まぁ色男の類なのかもしれないけど……。
やめろよ、ボクにそういう趣味はないぞ!仮にもボクの身体なんだからこんな悪魔との恋愛なんて絶対にするなよ!
というわけで今は残念ながらアタシの魂はクソガキの身体に収まっているから進展にリアリティがないわけだ。それにそもそも得体のしれない相手だし、アタシはどっかの誰かさんみたいに初対面で恋に落ちちゃうほど単純じゃないから。
良かった……。いやちょっと待てよ、それボクのことか?
大正解。サロモン君すごーい!
頭の中でサロモンが舌打ちを打ったような気がしないでもないがとにかく、寝起きにわけのわからない悪魔と仲良くなる気なんてちっとも起きない。ので、アタシはあからさまに眉をひそめてみせた。
「はぁ?アンタ誰?」
エレオスが入って来たら"アンタに助けられる義理なんてないしそうなるくらいなら死んでたほうがマシだった"と吐き捨ててやるつもりだった。けれどエレオスですらないし、それなのにコイツはエレオスのことを知っているような口ぶりで話すし、なんだか馴れ馴れしいし。
そう思って述べると、悪魔は片手に持っていた本をこっちに投げつけて人差し指を立てた。アタシはどうにか投げつけられた本を片手で受け取り、開いているページに視線をやる。
「おいおい坊ちゃん、何でもかんでも質問して許されるのは五才までだろ。そのくらい大きくなってんなら本でも読んでお勉強しな。幸いこの城は本だらけだしな!」
悪魔はそんなことを言って一人で笑っている。何なんだよ、得体のしれないやつだな。今回ばかりはドロースと同意見というか、正直コイツも気味が悪い。誰か質問しているのに本を投げつけてくるって何なんだよ。ボクもドロースと同様に眉をひそめてみせた。
投げつけられた本をよく見ると、それはかつてドロースを召喚するときに読んだ『悪魔召喚全書』だった。
……えっ、ちょっと待ってよ。アタシこんな人間の本に収録されてたの?それで召喚されてこんな目に遭ってんの?はぁ、嘘でしょ何それ……。
ドロースには構わず、そのページをどうにか読解しようとする。しかし、読もうとしている途中で悪魔が自分から話し始めた。
「いい加減もう読み終わったよな?読み終わっただろうから改めて自己紹介させてもらうが、俺は執着の悪魔ストルゲ。エレオスの先輩だよ」
悪魔は得意げにそう名乗った。




