ようやく相対、使い魔ズ!
まさかの大当たり。ボクは一瞬目を丸くして喜びかけたものの、まだ探し求めている相手であるかは分からない。確認をしてからでないと、その次の行動に踏み切ることはできない。
「最近、転んだりはしなかったか?」
そう質問すると、その女はゆっくりと首を傾けた。それからまだぼんやりした様子で少し思案した後、頷いた。
「ええ、転びました。おじさまが手を差し出して助けてくださったんですよ」
女はあまりに平和ボケしたようにとろとろと話す。ゆっくりした口ぶりを聞く限り、この女がメイさんの父親を殺したとはとても思えない。
けれどこの女は、今のボクの分かる限りでは確実に一番真相に近いところにいる。メイさんの元にこの女を突き出して、これからどうするべきかを三人で話すのが最善である気がする。
「一緒に来い」
そう述べると、女は丸い目をぱちくりさせた。そしてボクではなくその上の方を見て、視線を泳がせた。まるで何かを探しているかのように、女の目は左右に揺れる。
「駄目だわ。……行けない」
そうして目線をふわふわさせながら、その女はボクの言葉を拒絶した。
その様子はあからさまにおかしかった。来いと言った途端に目が泳いで、駄目だなんて答えるのだ。何かを隠しているように見える。懐疑心を募らせ、ボクはその女をじっと見据えた。
「なんで」
そう問い掛けた途端、むわっとさっきの甘ったるい刺激臭が強くなった。鼻が痛いし、頭がぐらぐらする。匂い一つでこんなに脳みそを揺さぶられるなんて。今まで知らなかったその感覚に眉をひそめながらも、どうにか意識を保とうとする。
「ごめんなさい!」
女はそう言って、ボクに背を向けた。手を伸ばしてどうにか掴もうとしたものの、ぐらっと視界が眩んでそのまま座り込んでしまう。
立てない。力が入らない。気持ちが悪い。
視界が重たい黒に彩られ、しりしりと血管を血が迸る音しか聞こえなくなっていく。
駄目だ、今あの女を逃したらメイさんが悲しむ。気合いを入れて立たなくちゃ、捕まえなくちゃ。
そう思って伸ばした手を、黒い何かに強く掴まれる。
「年端も行かない子供のくせに私の物に手を出そうとは」
まともに声が聞き取れない。キィンとした耳鳴りが頭の中を満たす。
「二度とそんなことができないように喉を切ってやろうか」
自分の体が自分のものじゃないような感じがする。冷や汗がにじむ。震える。けれどその全てが他人事のような、まるで悪い夢をはっきりと見ているような感じがするのだ。
何もかもがわからない状態の末、ボクはついに意識を手放した。




