貧弱すぎでしょ、使い魔くん!
城に帰り食料庫を覗いてみると、大量のパンや果物があった。ついでにサインつきのメモ書きもある。
『お散歩は楽しんできたかな?少し時間があったから食材を届けておいたよ。餓死しないようにしっかり食べてね! エレオス』
「うげ、きもちわる」
ドロースが呟いた。食糧を用意してくれるのは正直助かるといえばそうなのだが、ここまで世話を焼かれるとやはりなんだか気持ち悪い。
あの悪魔に飼い馴らされているような気分、というのが一番的確な表現だろうか。
やめてよ、わざわざそんな風に表現しないで。アタシあんな悪魔に飼い馴らされたつもりないし。今はこんな状況だから仕方なく服従してるだけだけど、いつかは新たな身体を得て復讐してやるんだから!
アンタは、エレオスに一矢報いてやろうとか思わないわけ?
ドロースが動かしているらしい左手が、大きなメロンを手にとった。ずっしりと手の上が重たくなる。
もちろん、ボクだってエレオスのことは許せない。あいつは期待させるだけさせておいて、ボクから奪えるものをすべて奪ったのだ。
でもそれを言ったら、お前だって許せない。そもそもお前がパパとママを殺さなかったら、ボクはエレオスにもドロースにも会わなくて済んだんだ。
くっだらない。たらればじゃないの。そんなこと言ってるくらいならもう少し前向きなさいよ。
別に恨むとか許すとか聞き飽きたし興味ないけど、昔のこと気にするくらいならこれからどうするか考えた方が楽しくない?
これからどうやって復讐するかとかさ……あっ、それとアタシの場合アンタもよ、サロモン。パパとママは完璧に殺したのにうっかり殺し忘れちゃったんだもん。エレオスと仲良く揃って逆十字に磔にしてやるからせいぜい楽しみにしときなさい!
……ふざけるなよ、エレオスとセットで殺されるなんて勘弁してくれ。そもそもお前に殺されるくらいなら自分で死んでやる。
ボクだって、お前が出てったら絶対すぐに殺してやるからな!
ふん、こんな貧弱な身体でよく言うわよ。メロン一つで腕ぷるぷるしてんじゃないの。ホント不便ったらありゃしない……。
ドロースが頭の中でぐちぐちそう言いながら、キッチンにメロンを運ぶ。それを置き、もう一度食料庫へ戻ってパンをとってくる。
パンを適当な皿に載せ、キッチンにあるナイフを出してメロンを切ろうとした。しかし、想像以上に硬い。
「う……かった……!」
刃がほんの少し食い込んでも、それ以上深く刺さることはなく止まってしまう。
アタシの今まで切ろうとしたものの中でダントツで硬いかもしれない。……いや違うわね、この感じは。
サロモン、アンタ力弱すぎでしょ!
「うるっさいな、ボクだって一生懸命……!」
「知らないわよ!一生懸命やったって結果が出ないんじゃ意味ないでしょ!」
結局、ボクたちはメロンを切れなかった。
その上ナイフを引き抜こうとしたら予想以上にそれも硬いし、変にナイフがすっ飛んで心臓にドスッとかいったらホント洒落にならない。そう結論づけてアタシたちは諦めた。
というわけでキッチンには、ナイフの中途半端に刺さったメロンが放置されている。
晩御飯に適当なパンを食べて、デザートに食べたリンゴをモナークにも分けてやって、ボクは眠りに就いた。




