焼くぞお節介、使い魔ズ!
「呪われた女?」
ボクは眉をひそめた。呪われた娼婦なんて、どういうことだか皆目見当がつかない。
そうすると、娼婦は説明を続けた。
「そう。リーゼって女。……いや、あの女の名前を口にするだけでも恐ろしいね、私まで痛い目に遭いたかないし」
そんなことを話す娼婦に、ボクはなおさら意味が分からなくなる。呪いとは一体どういうことなのか。そう思ってボクは首をひねった。
娼婦はそんなボクを見て肩をすくめ、それからボクが与えた上着に視線をやってから軽く手招きをしてきた。
正直娼婦なんて見下げた連中とはあまり付き合いたくないし近寄りたくもないのだが、メイさんのためだ。仕方ないからボクは娼婦に少し歩み寄った。
そうすると娼婦はボクの耳元に口を寄せ、周りを気にしてからこそこそと喋った。
「あの女を買った男は……いや、声を掛けただけの男でもね、皆事故に遭ったり死んだりするんだよ。そんなやつがこの前、雨の日にすっ転んだのを見た。そこにいかにも優しそうな中年の男が手を差し出したんだ。……まあ、あの女に触れたんだ。あの男はきっと死んだだろうね」
なるほど、それがメイさんのお父さんだとしたら、相当ややこしい事態になる。ただの殺人事件じゃなくて呪いだなんて物騒な言葉が出てくるとなれば、また悪魔や魔法使いが絡んできたりするかもしれない。
やはりこうして調べてみると、メイさんを放っておけない気持ちが強く募っていく。彼女の父を奪った悪魔だか魔法使いだか、なんだか分からないがとにかくその相手が許せない。
こうなったら、やっぱりボクの手で復讐を果たしてやらなくてはいけない。
「ありがとう、助かった」
決意を新たにしながらも、娼婦に一言そう述べる。たまには卑しい商売をしている連中も役に立つな。
卑しい商売って何よ、見下げたこと言っちゃって……。金を稼ぐためのただの一手でしょ、これだからホント堅苦しいヤツは嫌なのよ。
頭の中で、ドロースが大袈裟なまでに溜息を吐いた。
見下げたことを言っているも何も、事実じゃないか。清らかでいるべきなのに自分の体を汚して、それで金を稼ごうとする女なんて浅ましいことこの上ないだろ。
大抵の連中は好きでやってるわけないでしょ。そもそも神様がいるんならソイツが貧しくて困ってる連中も助けてくれればいいのよ。なのに助けてくれないから神様なんて信じるのをやめて自分の誇りを捨ててるわけでしょ?
ほんとバカなガキね、そんなんだからあんな悪魔に服従させられて、あんな女に引っかかるのよ。
今日のドロースはとことん不機嫌だった。そもそもこんなふうに外に出ようと言い出したのもドロースの方なのに。
ボクが一人で眉をひそめると、娼婦も何をしているんだとばかりに眉をひそめてからくるっとボクに背を向けた。
「仕事しなくちゃいけないの。暗くなるから気をつけて帰りなさいよ、坊ちゃん」
そう言って手をひらひらさせた娼婦の背に、ボクも背を向ける。
「ふん、卑しい女のくせに」
そう呟いて、今日のところは城へと戻ることにした。
どこか奇妙な―気持ちの悪い甘い香りがする道を歩いて、ボクは城へと向かった。




