情報集めだ、使い魔ズ!
ボクは、娼婦の居そうなところへとりあえず歩くことにした。
娼婦は、薄暗い路地とかで男を呼んでいる連中だろう。僕がそこを歩いても金の無いやつとして見向きすらしてもらえない気がするが、どうせ情報を聞くだけだ。話を聞くくらいならあの連中も金なんて取らないはず。
どうかしらね。娼婦はいつでも金欠だもの。お金になるんなら子供がお話を聞きたいっていうだけで請求するかもよ。
そもそも持ち合わせなんて無いんでしょうけど。
それじゃあどうしろっていうんだよ。お前の言うとおりボクはあいにく今は無一文だし、娼婦に払うお金なんて持ってない。
ヘラヘラ偽善悪魔に着せられてるお洋服があるでしょ。アイツ、魔法でやたら高い生地を用意するじゃない。
言われたとおりに自分の着ていたコートを見てみると、確かに高そうだ。こんなものをわざわざ用意して着せているエレオスの気がしれない。嫌がらせのようなことをしておいてまるで自分の子供にするような待遇。本当にことごとく気持ち悪いな。
とにかくそれをあげれば喜んでペラペラ喋ると思うわよ。あとはアンタの話術の問題ね、せいぜい頑張ってちょうだい。アタシ疲れたから寝る。
他人の身体の中に勝手に寄生してるだけのくせに、魂単体でも疲れるのか?
アンタのクッソつまんない色恋沙汰が悪魔のアタシにはストレスでしかないの!
ドロースは頭の中でそう吐き捨てたっきり、何も言わなくなった。
ようやく静かになった脳内に安心しながらも、ボクは薄暗い路地を一つ一つ覗き込んだ。けれど昼間だからか、それらしい人影はない。
日が暮れ始め、だんだんそれが橙色に染まっていくまでボクはずっとそれを続けていた。そのうちにようやく、ボクはある一人の娼婦と巡り合うことができた。
茶色くくるくるとした髪の持ち主で、いかにもつまらなそうに目を半開きにした女。諦観とどこか嘲るような色を持ったその顔は、どうにも男に媚びる姿を想像しづらかった。けれどこの感じは娼婦だろうと、ボクは直感したので声を掛けた。
「最近転んだ娼婦を知らないか」
そう口にすると、娼婦はボクに視線を向けて眉をひそめた。ボクの頭から爪先までをじろっと眺めたあとで、腕を組んで口を開く。
「なぁに、おませな坊ちゃん。あたしを買おうって言うの?」
馬鹿にしているんだろうか。その質問にボクは不機嫌そうな表情を浮かべてみせた。
「そんなことは一言も言ってない。……最近転んだ娼婦を知らないかと聞いてるんだ」
娼婦はボクを直視するわけでもなく、ふっとあからさまに鼻で笑う音を立ててから横目でボクにようやく視線をやった。
「お喋りするんなら金を出しな」
そう吐き捨てた娼婦に、ボクは溜息を吐く。ドロースの言うとおりじゃないか。それも尚更面白くなくて、ボクはあの悪魔に忠告された通りに上着を脱いで娼婦に突き出した。
「持ち合わせの金はない。でもこの上着なら金になるだろ」
娼婦はじっと品定めするようにボクの差し出した上着を見つめ、その末ににやりと笑って頷いた。
ボクの手から上着を掻っ攫うと、その娼婦はそれを大事に畳んで持ちながら話し始めた。
「……呪われた女が転んで、男が手を差し伸べたのは見たよ」
娼婦は意味深にそう言って目に弧を描いた。




