使いっ走れ、使い魔ズ!
「あの方は、道端で転んでしまった娼婦に手を差し伸べたそうです。私はその情報だけは仕入れることができたのですが……父の言いつけですから、自ら娼婦の方々とお話しに行くことはできなくて」
ふん、白々しい女ね。いかにもピュアピュアなんですって顔して敬虔ぶっちゃって。娼婦の方とはお話できないって何よ。そういう娼婦ですら見下げた態度から腹が立つわ。
だからうるさいんだよドロース。
アタシだって考え事くらいするわよ。ムカついてるのにこの女に対して罵詈雑言を口にしてないだけ感謝してくれない!?
はぁ……とにかく、彼女はそのお父さんの敵を討つ為にも情報を仕入れたいんだろう。けれど死んでしまったお父さんの言いつけは守りたいから、お父さんに言われていた通り娼婦と話したりはしたくないということなんじゃないか。
本当に、なんて健気な女の子なんだろう。なんだかいちいち自分と重ねてしまう。彼女のパパもきっと素晴らしい人だったんだろう。彼女に崇高な教えを与えてくれて、こんなにも美しく清らかな女の子に育て上げたのだからそうに違いない。
ふん、どうかしらね。
「それなら、ボクがその娼婦のことを調べてきます」
アタシの意思なんてお構いなしとばかりに、サロモンはそう口にした。
チョロすぎてつまんない男ね。そのうち悪い女に誑かされて金も何もかもこそぎ取られるのがオチよ、こんな馬鹿なヤツ。
お前も少しはメイさんを見習えよ。
「ありがとうございます。それなら……私は毎日ここでお待ちしてますから、何かわかったらいらしてください」
たしかに、連絡が取れないと不便だ。何かが分かったらここにやってきて、彼女にそれを伝えるというのは一番現実味がある気がする。
けれど彼女は、ずっとここにいるのだろうか。そう思うとなんだか不思議な気持ちになりながらも、ボクはとりあえず頷いた。
「任せてください、すぐにまた……会いに来ます」
こういう風に声を掛ければいいのだろうか。女の子にどんなふうに話すのが正解であるのか、分からないがゆえにやはりまだどことない不安感はある。
けれど彼女は、ボクのその言葉に目を丸くしてからすぐににっこりと微笑んでくれた。
「ええ……お待ちしてます、サロモンさん」
彼女は耳に心地いい声音でそう答えた。
ドキドキと鳴る心臓の音を嫌になるほど耳に染み込ませながら、ボクは小さく頷く。
そしてこのクソガキは、あの女にデレデレと手を振ってから意気揚々と日が沈むのを待った。




