さぁ召し上がれ、この悪魔!
少しは軽くなった気のする身体を立ち上がらせて、もう一度ドロースの死体に近づく。彼女の心臓を突き刺したままのナイフにうまく角度を付けて、まるでフォークでお菓子を取るようにその心臓を抜き取る。申し訳ないけれど心臓に引っかかる肋の骨は丁寧に折らせてもらって、ナイフの突き刺さった心臓を取り出した。
ぽたぽたと垂れる血で自分の服を汚さないようにしながら、それを片手にサロモンに歩み寄る。
上手くいくかはわからない。けれどこの場で彼の延命をするには一番最善の手段だ。
……いや、正直に言うんなら、可愛い契約者と好都合な敵役を同時に生かしておける僕にとっての最善というだけだ。
とにかく僕は息も絶え絶えといった様子の、というかほとんど息なんてできていないサロモンのそばに屈んでその頬に手をやる。
かろうじて脈があるばかりで、もうほとんど死んだような様子だ。虚ろに濁った目玉は僕なんて見ちゃいないみたいだ。
もう意識もないのだろうか。それならそれで好都合なんだけれどと思いながら、僕は彼の顎を引っ掴んで口を開かせる。
「吐き出しちゃ駄目だからね、大事にお食べ」
どうせ聞こえていないだろう。けれどそう口にしながら、彼の口の中にドロースの心臓を入れる。どうにか口に押し込めたそれを、顎を抑えてゆっくり咀嚼させ、そのまま喉に流し込ませる。
咀嚼する度にじわ、と溢れ出た血液が彼の口から溢れた。不味いだろうな。こんなのやっぱり気を失ってるほうが正解だ。そう苦々しく思いながら、僕は悪魔の心臓を飲み込んだ彼の頭を撫でた。
人間の胃腸は弱い。悪魔の心臓、もとい魂なんて飲み込めるか分からない。僕だって吸血鬼などの怪物類の魂は消化しづらいのだ。ましてや悪魔なんて、僕が食っても消化不良を起こしかねない。ほれを人間が消化して取り込んで、上手いこと再生してくれるなんて好都合なことが起きるだろうか。
けれど火事場の馬鹿力とか、最後の悪あがきとか、そんな感じの本能で上手いこと吸収してくれるかもしれない。やけに甘いことを考えてしまいながら、僕はサロモンの瞼を下ろして目を閉じさせた。
やはり僕一人の見解ではどうなるか分からない。でも上手く行ったらいいなぁ。
それよりも何だか疲れてしまったので、僕はそのままサロモンの横に寝転がった。できるんならサロモンに血をもらいたいけれど、さすがに今もらったら彼は失血死してしまいそうだ。
仕方がないので取り敢えず眠ることにして、僕は目を閉じた。




