敵を見つけろ、この悪魔!
「その、組織っていうと……なんなんだ、変な宗教とかか?」
僕は小さく頷く。
「ああ、最初のローマの新聞は七十年前だからね。老人が一人で君の両親を殺して逆十字にできたとは思えないし、人間が犯人なら何らかの組織になるだろう。だとしたら脈々と変な思想が受け継がれていることになる」
さすがに悪魔ではあるものの、人を殺して逆十字にするのが素晴らしいとは思わない。取り残された人達が追い詰められて僕を呼んでくれるのは可愛いから万々歳だけれど、人殺しそのものは容認しかねる。
逆十字ということは、人間だろうが何だろうがきっとキリスト教には反抗的なんだろう。どこかの悪い悪魔と手を組んであんなことやこんなことをし始めかねないし、本物の悪魔信仰団体が出来上がってしまうと小さい子を殺したり女を嬲り尽くしたりするからたちが悪い。そういう面において、一部の人間と悪魔の相性はうんざりするほど良すぎる。
そんなことを思って僕が溜息を吐くと、彼は許せないといった様子で眉をきつく寄せた。
「どこの誰だよ、そんな思想作ったやつ……地獄の果てまで行っても追いかけて殺さないと気がすまない」
「まだ人間の組織による殺人とは決まってないし、地獄に行った時点で死んでるからね」
僕は優しく指摘してあげた。
「うるさい悪魔!そういう空気の読めないところが悪魔なんだよ!」
怒られた。咄嗟に僕の眉がハの字を描いてしまう。
「うっ……なんだよその顔……」
彼はばつが悪そうに目を逸らした。
「僕、君に悪いことしてないのに……」
あえて眉を下げたまま述べると、彼は少し気まずそうにしてからすぐに普通の調子に戻ってしまった。
「それで!悪魔とか、その手の生き物だとしたらどうなんだよ」
話題を逸らされてしまった。今の雰囲気は仲良くなれそうだった気がするんだけど、あまりしつこいのも良くないだろう。そう思って追及したい気持ちを我慢し、彼の質問に答える。
「人間と契約をせずに魂を食べ漁ってる悪魔っていうのが一部にはいるんだよ。そういう連中の中でも特に生意気な悪魔が、人間の死体をもてあそんでるとか……。あとは吸血鬼や獣人の類も寿命として考えられる。けど、血が吸われた様子はないし獣人がこんなことをするのも理由が分からないな」
そう説明すると、彼は不満そうな顔をして腕を組んだ。
「結局何も分からないじゃねえか」
僕もこればかりは苦笑いしかできない。
「そうだね、今のところは」
彼はそれで落胆するわけでもなく、真面目な顔をして言い出した。
「じゃあ、これからどうするんだよ」
随分しっかりした子だ。こんなにまだ小さいのに、教育が良かったんだろうか。惜しい親を失くしたものだなと思いつつ、それはあくまで口にしない。
「取り敢えずは調査、かな」
僕がそう言うと、彼は怪訝な顔をした。




