お疲れさまです、悪魔さま!
アルフとの契約が終わってニ週間。ここはとある国のとある貴族の別荘地。
この季節には誰も別荘になんて来ないから、それをいいことに僕はこの優雅なお屋敷に居候させてもらっている。
それにしても、アルフはなんだか可愛くなくなってしまった。最初は可哀想で可愛かったんだけれど、しばらく面倒を見るうちに随分と傲慢になってしまったというか、逞しくなってしまったというか……。
でも、最後に死にそうになりながら救いを求める姿は少し可愛かった。救う気にはならなかったけれど、どうしようもないところまで追い詰められてついに死を覚悟する姿……あれはすごく魅力的だった。
そんなことを思い返しつつ新鮮なトマトジュースを用意して、僕は膝の上に座ったモナークを撫でながら新聞を読んでいた。
『フランスにてまたも惨殺』
そんな見出しと共に、大きく無遠慮に絵が描かれている。これまた見覚えがあるというか、なんというか。
そこに写った男性の死体は両腕をもがれ、女性の死体も同様にされて逆十字架の形に組まれて、縫い付けられている。もがれた四本の腕も丁寧に継ぎ合わせてまた同じように逆十字架にされているようだ。
どうやら二人は教会牧師の夫婦であるらしい。それにしても、なんだか聞いたことのある話だ。丁度少し前に契約をしたローマの方の女の子も、親を十字の形にして殺されていたっけ。
僕は膝の上のモナークの頭を撫でた。
「逆十字架だって。君の尻尾とお揃いだね」
そういうとモナークは"んにゃあ"とか言ってつまらなそうにしてから僕の手を払い除けた。そのくせ僕の膝には居座り続けるんだから、やっぱり猫だ。
僕は苦笑いしつつトマトジュースを飲み干す。
「何なんだろうね、これは……ローマの彼女が親を殺されたのは、うーん……七十年前。こんなこと老人ができるわけないし、単独犯としても変だ……」
特に意識もせずにモナークを撫でようとして、やはりそれがうざったかったのかその手を噛まれそうになった。
「あっ、ごめんね」
モナークはついに愛想を尽かしたらしい。不機嫌そうに僕を睨むと、僕の膝から降りて毛繕いを始めた。軽くなった膝がちょっとさみしい。
「何かの組織?いや……悪魔召喚の儀式?うーん……」
新聞を見てしばらく唸ったものの、やはり答えは出ない。多少興味はあるが、僕には関係ないことだ。そう考えて、トマトジュースを飲み干した。




