今度こそ
「ーーこれが、あの街での出来事だ」
「そうですか、報告ありがとうございます」
クラド帝国の王城の一室でナナリ王に今回のことを報告全て報告し終わり、俺とナナリ王はメイドと執事たちが用意してくれた紅茶を飲んで一息つく。
「それにしても魔神教を率いていたのが、あなたが倒した光の勇者光輝様だったとは思いもしませんでした」
「まあ、五百年前の勇者が生きていて今度は完璧な敵になっているなんて思いもしないよな」
俺はナナリ王の言葉に反応はするが、どこか上の空な気分だった。
その理由は光輝の魔力の感じがおかしかったからだ。おっさんの体を介して話をしていた時、気付くべきだった。
光輝の力は《《あんなものじゃない》》。
光の勇者の能力は万能型、光の属性を含む特殊な魔法を使うことができ、まさにthe勇者みたいなことができるものだ。だから死体を操りそれを介して離れた奴と会話することなんてできない、それは神を取り込んだ後でも同じだったはずだ。あいつと前の召喚で、俺が戦ったのだから1番わかっている。
声も魔力もそっくりだけど……あれは光輝じゃない。
それは断言できる。
俺はナナリ王と話をしながらそんなことを考え続けた。
♢♢♢
「それで……?もういくの?」
「ああ、七葉は好きなようにしてくれても構わない」
ナナリ王へ報告をして王城に一泊するように言われたが、俺はすでに王城を出る準備をして、割り当てられた部屋の窓から出ようとすると、七葉が
「とりあえず私は魔法陣を完成させてからロベルトに会いにいくけど……それより白花さんはいいの?」
「……」
「彼女は本気だと思うわよ、私が変態と戦っている時も根を上げないで必死に戦ってた。それはあなたも確認済みのはずだけど」
確かに必死に戦っていたのは俺も見ていたので知っている。
ちゃんと魔物にもとどめを刺していたし、短剣を振るうのにもためらいはなかったようにも見える。だけど……
「まだ彼女は弱すぎる」
確かに覚悟はあるみたいだけどこれから俺は「魔神教」の調査もしながら旅をする。
だから危険と隣り合わせだ、いくら彼女が行きたくても連れてはいけない。
「それに…白花さんは七葉の弟子だろ?ちゃんと俺も過去のことをしっかり終わらせて、日本に帰れるようになってもまだ俺と旅をしたいのなら……今度は連れて行くさ」
「そう……なら、私もしっかり育てておくわ」
七葉は俺の言葉を聞いて驚いた表情をしたが、すぐに軽く笑いながらそう言ってくれた。俺もつられて笑って言う。
「頼むぞ」
そう言って俺は自分に割り当てられた部屋の窓から空歩を使って空を蹴り出した。
俺は空を蹴りながら光輝のことを考える。あれが本当の光輝なのかはわからないが、せっかく五百年前の戦争で平和にしたんだ。自己満足のためにやり直しをさせるわけにはいかない。
だから、あいつの前に立ちはだかろう。
何度でも俺は刃を抜こう。
なぜならそれが剣の勇者として…伊澄直也としてできる、この世界にできる唯一のことだから。




