7色の王 白崎七葉
「行くわよ」
七葉は自分が持っている杖、聖杖ローズで軽く地面をトンと叩く。すると周りに飛んでいた七色の光が水色に変化してリング状に変わり一気におっさんに飛んでいく。
なんの詠唱もなく発動した魔法に驚いたおっさんは回避を試みるが、そのリングは追尾しておっさんの跡を追う。
七葉専用魔法「フェアリーリング」
この世界にある魔法は無属性以外の魔法を全部で7属性に分割できる。
炎系の火属性、水系の水属性、風系の風属性、土系の土属性、闇系の闇属性、光系の光属性、最後に浄化などの魔法が分類される聖属性がある。
フェアリーリングは七葉の神器、「聖杖ローズ」の能力と組み合わせた特殊魔法だ。相手の最も苦手な属性の魔法に変化して、相手を追尾する。
聖杖ローズの能力は二つ、「看破」と「魔法補助」である。
「看破」は相手の弱点や苦手とする属性を自動で解析する能力で魔法補助は文字通り魔法の補助をする。
消費魔力を十分の一に抑えて属性変換を素早く行えるように自動調節し、威力を倍にする。ローズを持っている七葉は初心者用の攻撃魔法でも発動すると中級レベルの威力の攻撃魔法になるといった感じだ。
その能力を使いおっさんを解析し、おっさんに一番ダメージを与えられる属性に光を変化させて攻撃しているのが今の状況だ。
おっさんは必死に逃げているが追尾してくる水色のリングはむしろ速さを増しておっさんに迫る。だが七葉もフェアリーリングだけでは仕留めきれないのはわかっているのでさらに魔法を発動する。
「『水龍』」
七葉がそう唱えると魔法陣から大量の水が龍の形をかたどり雄叫びをあげる。
上級水属性魔法「水龍」、七葉が作った水の龍はリングとともにおっさんを挟み撃ちにして迫る。
だが、流石におっさんもバカではない。
逃げながら風を魔法で発生させて水龍とフェアリーリングを吹き飛ばす。
おっさんはそのまま続けざまに火球を七葉に飛ばしてくるが、それを読んでいたかのように防御魔法を発動させる。
「『土流壁』」
今度発動させた魔法は土属性の防御魔法「土流壁」。
巨大な土の壁はおっさんが放ってきた火球を簡単に防ぐ、続けて七葉は土流壁に魔法をかける。
「『土流槍』」
そう唱えると土流壁は形をやりに変えておっさんに飛んでいく。
流石におっさんもすぐに攻撃が来るとは思わなかったのか回避が間に合わずに直撃した。
七葉の一人での戦いは、術の勇者として召喚されたおかげで手に入れた魔法適性と勇者の中でも一番の魔力量を誇り、神器であるローズの補助を使った魔法の連射が売りだ。普通の魔法使いではここまで連射できる人はなかなかいない。少なくても早くて5秒のインターバルが必要になる。
だが、七葉ならローズの能力も相まって高位の魔法も詠唱を破棄し、ほぼインターバルを無しにして発動できる。
土流槍が直撃したおっさんに七葉は続けて魔法を放っていく。
おっさんは余裕のない顔をして防御用の魔法を付与してあるらしい腕輪に触れて七葉の魔法を防いでいく。
しばらく七葉の攻撃をおっさんが防いでいる時間が続くが、おっさんも反撃しないとまずくなってきたようだ。腕輪から手を離して魔法の合間を縫っていくように風魔法で体を浮かせ七葉に飛んでくる。
だが、その行動を読んでいたかのように七葉は口の降格を少し上げる。
おっさんが七葉の目の前に来た瞬間おっさんの真下に魔法陣が現れる。そしてそのまま植物の蔦のようなものにおっさんは拘束される。
特殊魔法「ギルティソーン」。
七葉が開発した特殊な魔法だ、この魔法は七葉専用ではなく普通の人でも使える。トラップ設置型の特殊魔法で、魔法陣の上に相手が来る時に発動し効果は魔力でできた蔦で拘束する。
拘束されたおっさんはもがきながらなんとか蔦の拘束を解こうと魔法を発動させようとするがもう遅い。
すでにおっさんの上空に氷の槍を作り出した七葉はローズを振り下ろす。
「いきなさい」
そう呟いた瞬間、その氷の槍はおっさんの腹を貫いた。
これで終わりかと思っていたが、腹を貫かれたおっさんはドロドロの液体に変化して蔦からの拘束から抜けていく。
離れたところでその液体はまたおっさんに変化する。
そのゴツい体の関節をゴキゴキと鳴らしながらふう、と息を吐く。
「あー驚いた。いきなり拘束されちゃうんだからびっくりしちゃった」
「それはこっちのセリフよ。よくあの攻撃を避けれたわね変態」
「だから私は変態じゃないって!!」
おっさんと七葉はそう会話しているが、個人的にはおっさんに感心していた。七葉の魔法はインターバルがほぼないから回避するのが難しいのだ。身体強化魔法で強化しないと俺みたいな近接型は回避はほぼ不可能なので直撃まではしなくても必ず一撃は持ってしまう。だが、それでは七葉にはかなわない。
「私は天才なのよ。流石にあなたの魔法に発動速度には驚いたけど、躱すのはどうとでもなるわ」
「そう……でも自惚れると足元すくわれるわよ変態」
「え……ごぽっ」
おっさんが七葉の言葉を聞いて首をかしげると、おっさんの口の中から大量の水があふれ出した。俺はその光景を見てうわぁと声が出てしまう。
あのおっさんが吐いている水は七葉の魔法だ。
水属性魔法「蓮華・裏」、この魔法は「蓮華」と呼ばれる回復効果のある水を生成し、患部をその水で覆い回復させる魔法の効果を反転させたものだ。
回復効果ではなく、毒素を含む水を生成し覆うのではなく体内に侵入させると言うものだ。しかも見た目はただの水なので先ほどおっさんが水に体を変化させた時に体に仕込んだのだろう。
「相変わらずえぐい戦術を使うな」
思わずそう呟いてしまった。
実力では俺の方が上だが、自分の実力でできることをしっかり把握している七葉は戦術を考えるのがうまい。俺の力が「剛」だとしたら七葉は「柔」だ。柔らかい思考で普通じゃ考えられない魔法を作り出し、運用し、勝利する。
「変態、確かにあなたは天才の部類だと思うわ。でもね、天才だからといって相手を侮っていると痛い目見たでしょ?」
七葉は毒素が混じっている水を吐き出しているおっさんを見ながら杖の先を向ける。おっさんは苦しいのか顔を青くして七葉を見ている。目には怒りの光が灯っていた。
「じゃあね、変態」
そう言って風の刃を発生させて、七葉はおっさんの首をはねた。




