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動き出す

 その肉塊を見た俺は一気に後ろに下がり、コンバットハーネスにつけてあるナイフを引き抜く。するとその肉塊はたくさんの触手を俺に向けて伸ばしてきた。


 俺は身体強化魔法で強化した腕力と俊敏さでその触手を回避し、切って行く。

 だが俺はすぐに切るのをやめてその触手を回避することしかできなくなった。


 ナイフがボロボロになっていたのだ。

 多分この肉塊はものを腐食させる能力があるらしい。

 よく見たら床も腐食しているのか嫌な匂いが立ち始めている。


 「さて……どうしたもんかね」

 

 俺は拘束しようと襲ってくる触手を回避しながら考える。

 場所は地下の狭い通路。触れたものを腐食させる能力がある分、扱いが難しい。


 地上に吹き飛ばしてもいいが、屋敷の中が多分腐食しまくることになる。


 あまり世間には公にせずにこっそりとやっておきたい身としてはあまり派手にやりたくはないんだが……あれをするか。


 俺はハーネスに装着してあるもう一本のナイフを引き抜き、魔力を流してナイフを強化する。


 「幻刀……『縫い針』」


 するとナイフが俺の黒い魔力を纏い、俺の背丈ほどの長い針になった。


 「縫い付けてやるよ…そら!!」


 俺はその長い針を地面に突き刺す。

 すると狭い通路の壁中からたくさんの黒い刃が現れて、肉塊を串刺しにする。

 幻刀「縫い針」、幻刀「結月」は魔力を纏わせその魔力を斬撃と共に衝撃波として飛ばす技だがこの縫い針は地面に突き立てた幻刀本体からたくさん枝分かれさせて地面、壁、天井から枝分かれさせた魔力の刃を敵に突き立てると言う技だ。


 この技が効果的な時は狭い通路、または広範囲の殲滅に限る。

 

 うまくいったのか肉塊は串刺しになり、多少もがいた後動きを止めた。

 そしてその肉塊はドロドロに溶けた後、液状化したのちに蒸発したかのように消えた。


 「ふう……今回のやつは弱い方で良かったのか?」


 俺は消えた人間の魔物を思い出しながら言う。

 魔物化した人間の肉塊は、個体差がかなりある。

 かつて名を馳せた戦士や魔法使いなら、スピードもパワーも桁違いになる。多分今回の肉塊は普通の一般人だろう。研究者がこの街の人間をさらっては研究材料として使用しいていたとルーから渡されていた資料に書いてあった。


 本当に……こんなことをすることができる開発者に虫唾が走る。



 俺はそのまま肉塊が塞いでいた通路を進んでいく。

 






 ♢♢♢


 地下の通路を歩いていくとたくさんの機械的な装置や、魔法陣が描かれた儀式用の部屋、ましては人体実験のための拘束台などがあった。


 もちろん全て持ち帰れそうな資料を持ち出しては破壊している。

 ある程度の資料が集まってそろそろ別行動していた七葉たちと合流しようとした時、一番奥に小さな部屋があることがサーチでわかった。



 どうやら隠し扉のようになっていて扉は魔法で隠れているらしい面倒なので身体強化した蹴りで壁を吹き飛ばす。


 中は小さな部屋だった。

 どうやら研究者の自室のようだ。


 寝具一式と多少の棚、そして机と椅子が一つづつ。

 そしてその机の上には小さな日記があった。


 日記を開き中を確認してみる。

 中に書いてあることは人が魔物化し肉塊になるまでの過程が書いてあった。

 節々に書いてあることに変態的な言い回しがあったのをみると快楽殺人をする奴と思考が同じような奴なのもうかがえる。


 そして最後のページに小さい紙切れが入っていた。

 折りたたんでいるのを開くととあるメッセージが書いてあった


 『全ては魔神様のために、全ての破壊を』


 「……馬鹿らしい」


 俺はその紙切れを握りつぶし日記と一緒に付与魔法で炎を付与したナイフで切り裂いて燃やす。


 そしてそのまま七葉たちのところに合流しようと歩き出し部屋を出るといきなり身体中を嫌な感覚が走る。


 とっさに地面を転がるようにその場所から移動すると、その場所の地面を突き破るように人間の魔物である肉塊が現れてきた。


 ただ、その肉塊は先ほど倒した奴とは大きさがふたまわりをほど大きく、表面は屠った肉塊の赤い色とは違い、黒くなっている。

 

 ぐちゃぐちゃと音を立てながら地面から這いずり出てきて触手を俺に伸ばして拘束しようと動いてきた。触手を回避しながら先ほどと同じように縫い針で仕留めようとすると、なぜか魔力が集中せずに四散する。


 「?…まさか」

 

 俺は一瞬なんで集中できないのかわからなかったが、理由はすぐにわかった。

 あの肉塊が魔力を吸収しているのだ。


 これじゃあ、幻刀で仕留めるのは無理だ。

 幻刀は火などに変換しない魔力の塊のようなもので、魔力を吸収するようなタイプである肉塊には効果がなさそうだ。


 しかも最初のやつと同じで腐食させる効果もあるらしい。

 ……仕方ない。


 俺はアイテムバックから神無月を取り出して柄を握る。

 魔力を吸われ続ける感覚が発生したのを確かめた後一気に引き抜く。


 正直、魔力が吸われ続けるの神無月を使いたくはないが、背に腹は変えられない。肉塊に魔力を吸われた感覚から、外に魔力を放出しなければ魔力は吸われないようだ、なら直接魔力を吸収する神無月なら吸われている魔力の応用で刀身を強化すればいい。


 俺は神無月を構えて、肉塊に走り出した。


 

 

 



 

 

 

 


 


  

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