再び王都
ルーの話を聞いた俺の行動は早かった。
話位を聞いたその日のうちに出発の準備をして、その翌日には朝早くルートアルレルにまた来る約束をしてカイエをでた。
そして出発してから数日で、俺はクラド帝国の王都に戻ってきていた。
「いいぞ、通ってよし」
「どうも」
俺は前に王都を出た時と同様に門番に冒険者カードを見せて中に入る。
そしてそのまま王都の中央にある王城に向けて歩き出すのだった。
♢♢♢
「久しぶりというべきかしら?直也」
「一応あっていると思うぞ。七葉」
場所は変わってクラド帝国王城、術の勇者白崎七葉に与えられている部屋に俺はいた。
七葉は少し不機嫌そうにしながら自分の前にある紅茶を飲む。
「それで?……カイエに行って旅に出ず戻ってきた理由は?」
「ルーの部下の諜報員がこのクラド帝国の裏で流行っている宗教とその宗教がやっている研究を持ってきてな。内容が内容だったんで、俺が潰しに来ただけだ」
「内容は?」
「禁忌に定めた一つ、『人間の魔物化』」
俺がそう言った瞬間、七葉の顔が険しくなる。
「まだ、あのクソみたいな研究やっているクズがいたのね」
「ああ、それにその宗教は信仰しているのが光輝らしい」
二人の間に険しい雰囲気が生まれる。
その雰囲気に当てられた普通の凡人なら気絶してしまうのではないかと思うほどの重苦しい雰囲気である。そんな雰囲気の中七葉は口を開く。
「それ、私も参加できるんでしょうね?」
「そのためにこっちに寄ったんだ。準備に何日かかる?」
俺の言葉に七葉は笑って答える。
「すぐにでも、どっちみち後二、三日後にはエルフの森に向かう予定だったしね」
「……旦那が待っているからか?」
「うっさい」
少し顔を赤くして言う七葉に少し笑みがこぼれる。
エルフの森、魔族領とは反対方向の西にある強大な森でその森にはエルフが暮らしている。
そこには最初の召喚で仲間であったエルフの男であり、七葉の恋人であったロベルトがいる。どうやら七葉はそろそろエルフの森に向かうつもりだったらしい。
「じゃあ、その宗教の研究施設は俺が一人で潰そうか?」
「いやよ。あんな研究をしている場所なんて私も潰さないと治らない。それに収まってない状態でロベルトに会いたくない」
どうやらそう言うのはいらないらしい。
まあ、七葉もこの研究には反対派だったからかなり腹が立っているらしい。
「今回潰すのはそこだけ?」
「今回の諜報員の報告ではそこだけだからな」
俺はそう言ってルーからもらった諜報員の報告書の写しを七葉に見せる。
しばらくその報告書の写しを見ていた七葉は少し面倒そうに愚痴をこぼす。
「これ、この国の貴族も絡んでるみたいだから面倒よ?ナナリ王に話を通すべきじゃないかしら?」
「……あ」
完全にこの研究所を潰すこと以外考えていなかった。
そんな心の中を読んでか七葉は呆れた顔をする。
「直也、また感情が先に出て何も考えずにきたわね?」
「う……」
七葉の言葉が痛い。
確かに早くその研究所を潰したい一心でこっちに戻ってきた。
確かに勇者だからと言って国の領地にある物を壊すのはダメである。
そんなのは只の暴君となんら変わりない。
「そうだな。先にナナリ王に話しておこう」
俺はそう言って座っていた椅子から立ち上がる。
ナナリ王の方に行こうと足を向けると俺は思い出す。
「そういえば七葉、あいつらはどうなった?」
あいつら、これは今回の召喚で一緒に召喚された高校生のクラスメイトたちだ。
流石に戦争がなくなった今では訓練はしていても戦争の準備はしていないだろう。
勇者(笑)の天川が切らすを引っ張っているのならしっかり訓練はしているとは思うが。
七葉は俺の言葉を聞いて察したのか天川たちの話をしてくれる。
「クラスメイトたちなら今は白花さん以外は迷宮がある町の学園に戦いの基礎を学びに行っているみたい」
「?…白花さんはついて行かなかったのか?」
俺の疑問に七葉は答えた。
「彼女、今は私に弟子入りしているのよ」




