やるべきこと
久しぶりのあの頃の夢を見た。
あの最後の一年は『あの力』を制御するために沢山の裏の人間を斬った。あの時の感覚は今でも忘れるわけがない。
だって、あの力を制御するなんてーー
『願ってはいけなかったんだから』
♢♢♢
ルーの戦いの後、神無月を元に戻してから一週間が過ぎた。
その間俺はかなり忙しい毎日を送っていた。
ルーの戦いの後、カイエの軍部の者たちに訓練をして回ったり、アルレル研究に付き合ったり、ルーの先頭の相手にも、複製模倣も研究の合間にバンピィの家庭教師として魔法の基礎である無詠唱や魔力使い方の応用、魔法の性質の使い方などを叩き込んだ。「鬼」と呼ばれることもあったがその分頑張った分だけバンピィの好きなことをさせていた。要は飴と鞭である。
そんな生活を送っていたが、それも終わりがやってくる。
それは今日もバンピィの家庭教師をして1日が終わった時だった。
「ナオヤ、少しいい?」
「ん?どうしたルー?」
バンピィに魔法を使った実戦訓練をして出た汗をタオルで拭いているとルーから声がかかった。声がかけられた方を見てみると真剣な表情をしたルーがいた。
「きて、少し重要な話になるから」
「わかった。お前の部屋でいいんだよな?」
「ええ、先に行ってるわよ」
「おう」
それから着替えてルーの部屋に向かう。
部屋に入って椅子に座るとルーは先ほど見せた真剣な表情のまま話しかけてきた。
「ナオヤ、クラド帝国に潜らせている諜報員から今日の報告書でね少しきになるものを見つけたのよ?」
「気になる?」
「ええ、ナオヤ魔神教って知ってる?」
魔神教と聞いてピンとくるものはなかった。
「知らないな。それがどうかしたか?」
「ここ最近、クラド帝国の裏の人たちが密かに信仰しているらしい宗教なのよ。崇めるのはあなた倒した光の勇者、光輝よ」
「……その宗教はいつから?」
「かなり前みたいよ、できたのは。それこそあなたがこの世界から元の世界に帰った後の二、三年後ぐらいに源流はあったらしいわ」
『光の勇者』ときて俺の中にある何かの熱が、一気に下がった気がした。
光の勇者、新藤光輝。俺と一緒に召喚された勇者の一人で……最初に対立し、俺が殺した。
その光輝を信仰対象として信仰している宗教があったことに俺は少し黒い感情が出た。
だってあいつは……あいつは……
「仲間を殺した奴の話なんて聞きたくないでしょうけど、少し我慢して」
「……わかってる」
俺の中に蠢き始めた感情を感じたのか少し申し訳なさそうに謝ってきたルーに俺はなんでもないように答える。
「その謎宗教がここ最近、クラド帝国の裏の人間や国王に突っかかるような人間が信仰しているのがわかったみたいなの」
「それで?その宗教はテロ的なことはしてないのか?」
「してないような感じがあるけど、かなり怪しい研究をしていたわ。報告書には人体実験や魔物を使った実験をしていたわ」
「もっと詳しい研究内容は?」
「あまりいいものではないわね。人体実験としては『人間を魔物に変える』実験、魔物は他の魔物と交配させてより強い魔物を『造る』実験をしていたわ」
最初の研究内容を聞いてさらに黒い感情が溢れてきた。
その研究は……
「なんでその宗教は禁忌のうちの一つをやっているのかってしてるわね」
「当たり前だろ。それは俺が全て処分した研究だ」
人間を魔物に変える。
この研究は五百年前、奴隷をすぐに戦力として投入するために研究されたもので実際に戦ったことがあった。
その姿は……見るに耐えないものだった。
元になった人間の原型はほとんどなくただの肉塊、それなのにたくさんの顔のような模様を持つ、異形ののもの。腕のような触手を持つ、負の感情の塊。
あの魔物を見た時は今でも忘れない。
あの戦争が終わった後俺はその研究内容を全て処分したはずだ。なのになんでそれが今また研究されているんだ、禁忌にも定めたはずなのに。
「それで?その研究施設はどこにある?」
俺は溢れそうになっている黒い感情をぶつける場所を探すように研究施設の場所を聞く。
聞いたルーは少し難しそうな顔をするが話してくれる。
「クラド帝国の最北の街、アイズよ」




