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神無月

 気絶したルーを起こし、失った血液と魔力を回復させるために小分けにした血液を渡した。

 

 「んく…んく……ふう、やっぱりナオヤの血はいいわねえ」


 「気持ち悪いこと言ってんじゃねえよ。そんなんならアルレルの血でも飲んでなさい」


 「それは毎日お互いにやってるわよ」

 

 「やってんのかよ」


  同族に吸血する時って性的興奮の時とか親愛行動って聞いたことがあった気がするんだけど。そのことが本当ならイチャコラを毎日してるってカミングアウトされた気がするんだけど。


 「……あ!待って今のなし!!」


 「気づいてなかったのね」


 「うー……」



  自分で失言をしてしまったのに気がついたのか真っ赤にするルー。

  相変わらず妹分は可愛いようです。


 しばらくは失言のことをいじって遊んでいた。

 側から見たら本当に兄弟が戯れているように見えていたらしく訓練場からの巨大な音が止んだことでやってきていたアルレルにそう言われて、余計に顔を赤くして恥ずかしがるルーだった。


 



 



 ♢♢♢




 ルーをアルレルといじり倒したあと、俺は一人また訓練場にいた。


 自分の訓練のためである。


 「今回は『幻刀』を使ってみたけど、技の威力は少し落ちたんだよな」

 

 俺は一人そう呟きながら鞘に収まったクロスを見る。

 『幻刀』、ルートの戦いで最後に見せた本気の技。この技の特徴は魔力を魔法に変換せずに、そのまま魔力の塊を使う技である。


 基本的に魔力は何かしらの魔法に変換して使うもので、普通は魔力のまま使うことはあんまりない。むしろあの技は邪道に分類されるもので七葉に教えた時は驚かれた。


 魔力は魔法に変換することで確かに使用者の魔力特性や、魔法適性に分かれるものの、魔力は基本的にどんなも魔法に変換される。だが俺が使った幻刀は魔力のまま使うという魔法?のようなものである。


 基本的に炎や氷などの魔法らしい魔法も使えず、ろくに遠距離用の魔法もなかった俺が考えついたもので、どちらかというと某魔法科の無系統魔法に近い。(近いというわけでそのままというわけではない)


 己の中にある魔力を魔法として変換せずに他の人の魔法にぶつけて吹き飛ばしたり、剣にまとわせて剣自体を強化したり、鎧のように身体中に纏うことも出来る。だが欠点としてはかなりの魔力量があることが条件で、消費も激しいので精密なコントロールが必要になる。


 その技術と条件を揃えた時に完成したのが「幻刀」である。


 剣に纏わせて使ったり、魔力オンリーで刃の形に形成してそれを飛ばしたり出来るのがこの幻刀のいいところで、イメージ次第でどんな形にも変化する。

 

 

 クロスを抜き放ち、ルーの戦いと同じように両手で構える。


 「『幻の刃よ・今ここに姿を現し・敵を打ち倒せ』」


 詠唱をするとクロスが俺の魔力を纏い始める。

 基本的な幻刀の型、「結月」である。


 結月は剣に魔力を纏わせて全体の強化をし、場合によっては魔力を衝撃波のような形で放つことができる。だがさっきも思ったとうり先ほどルーのとの戦いで使った結月は少し威力が低かった。


 多分原因は剣の適正にあるのだろう。

 基本的に幻刀は刀で発動させる技で、この世界で普及している西洋剣の形ではうまく発動ができないのだ。


 多分『今』のクロスだと思う存分幻刀を発揮できないのだろう。

 少しあいつらに説明がいるけど……”戻すか”


 俺は幻刀を解除し、クロスに魔力を吸われている感覚を感じ、その感覚に任せてさらに魔力を吸わせながら、ある言葉を口にする。


 「『姿なき聖剣よ、その呪いにも近い力を担い手に』」

 

 その言葉を口にした瞬間、とんでもない勢いでクロスに魔力を吸われる。

 いくら勇者として異世界から召喚された勇者でも、今吸われている魔力の速さだとすぐに枯渇してしまうだろう。幸い俺は他の勇者より魔力が多い方なのでまだ枯渇まではいかないが八割は必ず持っていかれる。


 「ぐっ……ふ…」


 クロスに魔力を吸われる勢いが強すぎて苦悶の声を上げてしまう。

 だがその魔力を吸い続けているクロスに変化が現れる。


 刀身にたくさんの刻印が浮かび上がり、何重もの魔法陣がクロスの周りに浮かび上がり、しばらくすると少しずつだが、クロスの形が変わる。


 西洋の十字剣のような見た目だったが徐々に両刃だった刀身は反りのある片刃に変わり柄も日本刀に近い感じの見た目に変化、さっきまであったはずの鍔もなくなり鍔のない一本の日本刀に姿を変えた。刃紋のない真っ黒な刀身で、空気を切り裂きそうな雰囲気を持った日本刀に……



 「この姿にするのは最初の召喚でも最後の一年ぐらいだっけな……久しぶり、『神無月』」


 俺は姿を変えたクロスの本当の呼び名を呼び、軽く振る。

 するとヒュンと軽く振っただけなのに鋭い音がなった。


 「相変わらずよく手に馴染む。やっぱり俺はよくある物語の勇者には向いてないようだ」


 俺は一人姿を変えたクロス……神無月を見ながらそう呟いた。


 その姿を見ながら驚いている仲間のことを知らずに。


 


 


 

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