妹分との勝負
あの食事会から数日後、俺はルーの屋敷にある訓練場に来ていた。
今日は久々にルーと勝負することになつたのだ。
いちよう二人とも回復系統の魔法や薬も用意があるので一応本気でやりあうことになっている。まあ、流石に殺す気ではやらないけど。
「それじゃ、やるわよ……本気でかかって来なさい」
「おう。どっからでもかかってこい」
俺は白鋼と黒鋼を、ルーは自分のブラッドマジックで作り出した細剣を構えて訓練場の中心で相対する。
数秒お互いに動かずに相手の出方を見ていたが、先に動いたのはルーだった。
「っふ!」
500年ぶりに見る鋭い突きを見て腕は落ちていないことを確認して俺は右手に持つ黒鋼の刀身で受け止める。
およそ血でできたとは思えないほどの硬度の細剣と、同じく動物の牙でできた(竜である)短剣が激突したことで大きな音がなる。
「腕は落ちてないようだな」
「ナオヤこそ…ね!」
俺の言葉に答えたルーはそのまま細剣を回して俺の黒鋼を巻き上げて右手から落とさせようとする。だがまだ甘い。他の剣士なら今ので巻き上げられていたと思うが剣の勇者を舐めてはいけいな。
俺は逆にその細剣を巻き上げてルーの腕からはたき落とす。
「うそ!?」
「まだまだ、これからだぞ?……エンチャント『蒼炎』、『魔力撃』、『一迅』」
俺は白鋼たちに付与魔法を付与して強化する。
あの時ペトラルカたちに見られながらやったあの技を使うとしよう。
「蒼炎連撃……『叢雲』」
「相変わらずね…それ熱くて痛いから嫌なのよ」
そうルーは言いながら防御のためにブラッドマジックで血の混じった壁を作り出す。
俺はそのまま蒼い炎を灯した白鋼を振るう。
ルーの作った防護壁を一撃で砕こうとする。
だが思った以上に頑丈でヒビすら入らなかった。
付与魔法の効果が切れるまで切り続けたが、結局ヒビを入れることはできなかった。
「へえ……これに耐えられるか」
「伊達に五百歳年取ってないわよ」
「じゃあ、もっと上の攻撃をしても構わないんだな?」
「ええ、最初に言ったでしょ?本気で来なさいって」
俺の言葉に壁をなくしたルーがニヤリと笑顔を俺に向けてくる。
その顔は何となく、鏡で見た昔の自分のようなただただ強いやつと戦うことを楽しみにしている。戦士の目。
「いいだろう。俺の全力で相手をしようか」
そのルーの目を見た俺も、多分同じような目をしたのだろう。
ルーの目がさらに輝き、ギラギラと光らせている。
俺は白鋼と黒鋼を戻して腰に吊るしていたクロスに手を掛ける。
魔力を吸われているのを確かに感じると一気に引き抜く。
さらに俺は自分の個人魔法である複製模倣を発動する。
「複製模倣……『監獄・愚者の鎖』
俺がそう口ずさむと周りから小さな魔法陣が現れてたくさんの真っ赤な炎に包まれた鎖が現れる。
『監獄・愚者の鎖』、あの拷問用の魔法、監獄の攻撃要素である。だが実際にはこの鎖に攻撃力は全くと言っていいほどない、多少火傷するぐらいである。
なのにこの鎖を出したのは訳があった……それはこの鎖の「拘束力」である。
この愚者の鎖、高速で相手の体を貫きその場に固定することができるのだ、この拘束を抜け出すのは術の勇者として魔法にかなりの耐性がある七葉ですら抜け出せなかった。
だが俺の準備は終わらない。
「『豪腕』『金剛』『俊足』」
全身に身体強化魔法を使用する、そして魔力をクロスに注ぎ込み、さらに奥の手を準備する。
「次は『装填』」
最後に銃弾を発動させるために複製した鉄の剣を付与魔法で強化してさらにそれを複製して装填数を増やす。その数五十。
一旦準備はおわりかな?
俺は本来敵にしか向けない殺意を身にまとって正面にいるルーを見る。
ルーの目にはやはり、楽しそうにしていた。
「やっと…やっと本気のあなたと戦える。楽しみで仕方ない」
「くく……やっぱお前は俺の妹分だな。戦場なら逃げ出している方が正しいのに」
「逃げる?そんなことする訳ないでしょ?こんな楽しそうな戦いから」
そう言ってルーは新しく作った細剣を握って一気に駆け出す。
俺もそのルーの動きに合わせて地面を蹴った。




