第十九話 ファッションセンスが全然ない
第十九話です!平和な日常の一幕ですね。
「こんにちは、萌葱ちゃん」
「・・・・・・」
「音無鈴・・・・・・A君の彼女やってます♪」
「待てっ、何言ってんですか先輩。あと萌葱、お客様には挨拶を返すのが常識だ。」
「ほんの冗談ですよ。それに、ほら萌葱ちゃんの興味も引けましたしね。」
「別に気になったんじゃないんですよ。それに、強姦まがいのことをしている、わるものAさんに、常識を語られたくはありません。」
「っぐ・・・・・・」
先輩の言葉に萌葱の方を見ると、確かに珍しくパソコンから顔を上げた彼女に猛攻撃を食らう。
短い付き合いで、萌葱はパソコンをやっているときは性格が若干悪くなることを知っている俺だったが、ここまで言われたのは初めてだった。
「改めて、こんにちは萌葱ちゃん。A君の上司の音無鈴です。」
「・・・・・・こんにちは。」
なんとか第一コンタクトは成功したようだ。二人のことは二人に任せることにして、俺はキッチンへと向かう。今日のメニューは萌葱の好きなカルボナーラにしようか。
「おーい、お昼にしようぜ。」
俺は苦心して知識を生かし、作り上げたカルボナーラを手にリビングへと戻る。
「へえー、A君料理とかできるんだねー意外!」
「はい、そうです。ただ、わるものAさんの料理はちょっと・・・・・・」
褒めてるんだか、褒めてないんだかわからない先輩の言葉をスルーして、萌葱の伏せられた目を極力見ないようにしながら、カルボナーラをテーブルに並べていく。
二人はつい数時間前にあったばかりとは思えないほど意気投合しているようだった。先輩も嬉しそうに微笑んでいる。
が、その笑顔は萌葱に続いてテーブルに近づいてくるにつれて消えていく。
「あの・・・・・・これは、一体。」
「分かりましたよ、これはカルボナーラですね!」
「えっ?!」
慣れたもので、黒焦げの謎の物体を一目見た瞬間、その正体を看破する萌葱と、目を剥いている先輩。
「俺がつくると、何故かこうなっちゃうんですよね。」
「でも、味は保証しますよ!」
ドックフードを美味しいと言っていた女の保証なんて欲しがる人はいないと思うが、味は大丈夫だ。
「じ、じゃあ・・・・・・」
恐る恐るフォークに巻いたカルボナーラ(イカスミパスタ風)を口に運ぶ先輩。
「・・・・・・カルボナーラだ・・・・・・!」
短い感想には、万感の思いが溢れていた。その証拠に、先輩は顔をほころばせて、二口目に突入している。隣の萌葱もそれを見て満足そうに笑うと自らもフォークを手にとった。
しばらく無言でカルボナーラを味わっていた俺達の沈黙を破ったのは、意外にも萌葱だった。
「音無さん。」
「鈴でいいよ。前みたいに、さ。」
「・・・・・・鈴さん。その、わるものAさんとは、どこで出会ったのですか?」
「うーん、そんなことはどうでもいいじゃん! それよりも・・・・・・」
萌葱の素朴な疑問を一蹴して、先輩は萌葱をじっと見つめる。
というか、先輩と俺が出会ったのはお互いが萌葱のおかげで入社できた会社のはずだから、萌葱は知ってるはずなんだけどな・・・・・・記憶力の問題だろうか。
食後の紅茶をすすりながら、ぼうっと二人のやり取りを眺めてそんな他愛ないことを考える俺。実に平和だった。
「その服・・・・・・ずっと、同じの着てるでしょう」
紅茶を吹き出しそうになるのをこらえながら先輩を見る。先輩は怒ったように何故かこっちを見ていて、
「A君、君は萌葱ちゃんのことをなんだと思ってるの? 女の子なら、新しい服を欲しがるものなんだよ?」
「・・・・・・一応、洗濯はしてますよ。」
萌葱を見る。彼女は確かに出会った時と同じ服装をしている。薄いカーディガンの下に、大人っぽい模様のついた、かなり丈の長いワンピースだ。
萌葱の服はこれと、あと一着しかないので、それらをローテーションしてなんとか生活している。本人の希望だったので、それまで気にしてさえいなかったのだが・・・・・・。
「何を言ってるの? 大体、萌葱ちゃんもファッションに疎すぎるのよ! 女性らしくしないと、好きな人も逃げちゃうんだからね!」
そんなこと言っても、萌葱が聞き入れないことは経験上読めている。先輩だって、それを知っているだろうに・・・・・・
「どうしたらいいんでしょう?」
と思っていたのに、予想を裏切って萌葱は泣きそうな顔で先輩を見ていた。
「簡単なことだよ・・・・・・萌葱ちゃん、あたしとショッピング行こ!」
「・・・・・・嫌で」
「A君だって、可愛い服着た萌葱ちゃんを見たいよね?」
「まぁ、そうですけど・・・・・・」
突然の謎の質問に、一応本音で答える。でも本当に何の意味があってこんなことを聞くのだろうか?
「行きますっ!」
首をひねる俺の目に映ったのは、滅多に見れない萌葱の焦った顔と、びしっと挙げられた彼女の手だった。
「それじゃあ、行ってきまーす! 帰りは8時過ぎになるだろうから、夕飯はいらないよー。」
「行ってきますね、わるものAさん」
昼食の後片付けを済ませて、一息ついていた俺に、萌葱の手を引いた先輩がやってきて言った。
正直、心配だったが一応常識人な先輩がいれば、大丈夫だろう。
「わかった、よろしく頼んだ。」
「任せておいて!」
最後に大きく手を振った先輩について出て行く萌葱。
その嬉しそうな横顔を見て、俺は純粋に温かい気持ちが湧き上がってくるのを感じていた。
なんだかんだ言って、休みを満喫していない、一眠りするか。そう思って自室に戻った俺が、騒がしい声で目を覚まして向かった萌葱の部屋で見たのは、
「ただいまー!」
大量の紙袋を持った萌葱の姿(ロリータ装備)と、同じく大量の袋に入ったお酒を持って笑う先輩の姿(ゴスロリ装備)だった。
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