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5.今度こそ英雄(ヒーロー)に。

向井玲奈。17歳。

向井幸一郎の一人娘で成績優秀、男女どちらからも好かれるマドンナ的学生だった。数年前事故で他界した母親の有美が医者だった事から将来の夢は同じ医者だったそうで某有名大学への受験の為塾にも通っていた。父親の幸一郎の事も深く尊敬していて父子家庭でも幸せな日常を過ごしていた。しかしある日向井玲奈の目にあるSNSの投稿が映り込む。


【ユーザーネーム 正義のヒーロー】


『大罪人、向井幸一郎。お前の隠されし悪行をここに全て提示する。あらゆる人間を苦しめ陥れた代償を今こそ受けるべきだ。全てを認め受け入れ反省し詫び償え』


慌てて添付されたURLを開いた玲奈は情報に目を通した後に膝から崩れ落ちた。そこには自身の父がしてきた幾つもの不正の証拠があった。裏金を受け取っている写真、女性事務員へのセクハラをしていると思われる写真に改ざんされた資料のビフォーアフター。敬愛していた父の悪事を知り玲奈は怒りに震えた。帰宅してすぐ玲奈に問い詰められた幸一郎は罪を認め謝罪。しかし自分を騙し続けてきた父親を許せなかった玲奈は記者会見を開き罪を認め償うように進言し幸一郎はこれを了承した。まさかの事態に陥った玲奈だったが本当に苦しみはこれからだった。


次の日。いつも通り通学した玲奈はある違和感を感じていた。それは周りからの目線。県議会議員という立場を利用しあらゆる不正を働いていた父親の事が玲奈に対する目を変えさせていた。挨拶を無視され影ではコソコソとある事ないことを囁かれた。そして教員からしばらくの休学を勧められ更には父親が不祥事を起こし捕まったと志望先の大学に知られれば進学は厳しいかもしれないと塾から話までされたそうだ。


決して自分のせいではない。それなのに自分の夢や友人を失った。玲奈の心は限界だった。しかし更に不幸は重なる。SNSに初の投稿が出てから1週間後。父親の向井幸一郎が自室で自殺したのだ。これにより玲奈は正真正銘全てを失った。許せなかった。こんな目に合わせた全てが…許せなかった。そしてたまたま見つけた闇サイトに全てを投稿。すると元投稿をした人間のことを知っているという男が連絡してきた。そして辿り着いた。渡辺樹に。


「これが真相だよ。ちなみに君を殺した後すぐ向井玲奈も自殺している。そうこれこそが君が犯した本当の罪だ」


言葉が出なかった。俺が追い詰め死に追いやったのは向井幸一郎という悪党でそんな男を殺した俺は正義のヒーローなのだと思っていた。だが本当は違った。罪のない少女の心と命を…殺したんだ。


「何が…正義のヒーローだ…。俺は薄汚いただの人殺しじゃねぇーか…!」


「そう。君はヒーローでもなんでもない。ただ復讐心に飲まれ身勝手な行動で罪のない人を苦しめた悪魔のような男だよ」


俺の行動に正義なんて無かった。父さんを殺された事を理由に他人を傷つけたかっただけ。とんでもない悪人だ。


「な?言っただろう。君は後悔しているって。でどうだい?やり直さないかい?」


「やり直し…?」


「そう。さっきも言ったけど吾輩の悲願に協力してくれれば新しい人生を歩ませてあげる。その新しい人生で今度こそ本当の正義のヒーローを目指してみるんだ。そうすれば償いにもなるし後悔を払拭出来るかもしれないよ?」


「いや…いい。もう何をしても取り返しなんかつかないんだ。俺は俺の悪意に気づかずいたずらに人を傷つけた。これからどんな善行を重ねてもその罪が消えることはない」


「ふーん。じゃあこれを聞いても転生しないって言えるかな。向井玲奈は既にその新しい人生を歩んでるよ」


「っ!」


「もちろん記憶はそのままに。彼女は彼女なりに後悔があったみたいだからね。君が転生すると言うなら彼女がいる世界に転生させてあげるよ」


玲奈さんも転生を…?!

それが本当ならもしかしたら直接謝れる機会があるかもしれない。もちろん謝ったからといって許されるとは思わない。それでも彼女の心を殺しておきながら死んで終わりのままにしては行けない。


「わかった…頼む!俺を転生させてくれ!俺は彼女に謝りたい。何もせず消えるより本来するべき事をして…消えるべきだ」


「ひひひひっ!よかろーう!吾輩の力で転生させてあげましょー!」


もう生きる事なんて新しい人生なんて求めてなかった。でもこれは俺に対する罰のひとつ。新しい世界で苦しんだとしても彼女に謝罪をするまで何があっても生きる。そう決めた。次は足を踏み外さない。


今度こそ…次の人生こそ本当の正義のヒーローになって見せる。


6話に続く

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