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3.正義の英雄(ヒーロー)

まだ転生してないです。もうちょい待ってね

送られてきたのは一件の映像ファイルだった。

開いてみるとどうやら防犯カメラの映像らしい。

再生前から得られる情報は暗い道路で横断歩道がうっすらと映っている。そこを渡ろうとしているのだろうか男性が一人立っている。


ん?この容姿…見覚えが…。

あっ!父さん!?


じゃ、じゃあこの映像は父さんが轢かれた時の…?

なぜこいつがそんなものを持ってる?

いや、そんな事よりこれを見ていいのだろうか。

何かの合成映像?ウイルスか…?

しかし…もしこの映像に真実があるとしたら…。


覚悟は決まった。

再生すると父さんは信号と時計を交互に見比べているような様子だった。そして信号は変わり歩行者用信号が青色を示す。足早に歩き出した父さんの元に遠くから眩い光が猛スピードで近づいてくる。


一瞬だった。

父さんが画面の外側に弾き飛ばされた。


「父さんっ…!」


思わず動画を止めてしまった。吐きそうだ。

こんなの見なきゃ良かった。酷い酷すぎる…父さん…父さん…父さん…!

苦しい。もうやめよう。動画を閉じようとした時ある違和感を感じた。止めた映像の右端に映っている父さんを撥ねた車。その車の見た目だ。

黒塗りの高級車。これは…外車だろうか。

うっすら見える運転席は左ハンドル。おかしい。

逮捕された戸塚は無職。こんな車を維持できる金があるのか?


『どうだイ?気づいたかナ?』


『車か?』


『そうそウ!正解!これ、おかしいよネ』


『どういう事だ。戸塚はそういう裏社会系の奴らに繋がってたってことか?』


『違う違ウw』


ならなんで戸塚がこんな車に…?


『だから戸塚じゃないんだっテ。戸塚は犯人に仕立てあげられただケ。本当の犯人。知りたイ?』


仕立てあげられた?!

つまり冤罪…?


『そんな訳があるか。警察が調べて情報は確定しているはずだ』


『そんなの手が入ってるに決まってル。この映像も握り潰されるギリギリで僕がハッキングして奪った映像だからネ』


ハッキング?!

なんだよそれ。これって実は…とんでもない事が起きてるんじゃ…!


『じゃあ、この車に乗ってたやつは何かしらの方法で戸塚を犯人に偽装して逃げてるってことか?』


『そういう事。で?知りたイ?真・犯・人』


だとしたら許せない!戸塚を身代わりに自分の罪を逃れるなんて。俺の父さんを轢き殺しておきながら自分の身の安全を守るために関係のない人間を陥れる。鬼畜の所業だ。見つけ出して絶対に裁きを下す。必ず…必ず!


『頼む。教えてくれ!』


『いーねいーネェ!wじゃあ教えてあげるヨ。これ見テ』


また別の映像ファイルが送られてきた。

さっきの防犯カメラの映像を解析した物らしい。

再生すると車の運転席に座っている男にズームしていく。かなり寄ったところでノイズ除去が行われ映像がクリアになっていく。その作業も終わるとそこに出たのは男の後頭部だった。恐らく父さんを轢き驚いて振り返っている状態なのだろう。そのままコマ送りで映像は進んでいく。すると男は携帯を取り出しどこかに電話をかけ始め正面を向いていく。


こいつ…車を出て父さんに駆け寄る訳でもなく電話だと?揉み消しの電話…って事なのか?


段々と正面を向く男の顔。ついに完全に前を向いた状態になった。そのとてつもない形相の顔はどこかに見覚えがあった。どこだ?どこで見た顔だ?


『動画は見れたカ?』


『あぁ。こいつが犯人か。こいつは一体何者だ?』


『まジ?ピンと来なイ?この顔二?』


ピンと…?いや、来ない。

見た事があるのは確実だか…どこで見たのか、誰なのかはさっぱり思い出せない


『すまん。わからん』


『まじまじマジンガー?じゃあ答え合わせしちゃうネ。こいつは県議会議員の向井幸一郎だヨ』


県議会議員の向井幸一郎?!

駅前で演説をしているのを何度か見かけたあの向井か!

だから見た覚えがあったんだ。そうか…議員。

揉み消さなきゃ自分の立場が危うかったんだ…!

こいつが…こいつが俺の父さんを!


『これを警察に見せて向井を捕まえてやる!』


『ダメダメ〜。そんな事したら僕まで捕まっちゃウ。この映像は警察に流させないよン』


なに?ふざけんな!

犯人が分かっておきながらほっとけとでも言うのか!


『じゃあこいつを放っておくのか!こいつは俺の父さんを殺したんだぞ!』


『落ち着きなよ樹君w』


なっ。こいつ俺の名前を…!

そうか。さっき俺は父さんと掲示板で書いてしまったこいつはハッキングができる。特定なんざ容易いのだろう。


『警察には突きつけられないけどこいつを陥れる方法ならあるんダ』


陥れる方法?つまりこいつに裁きを下せるやり方があるという事なのだろうか


『なんだ?』


『ネットだヨ。こいつは色々と汚ったないことをやって来てるんダ。今回の件もその中のひとツ。だからその情報をネットで流し燃やさせル。かなり燃えれば警察も動かざるを得なイ。揉み消すのだって簡単じゃ無イ』


そうか!ネットの力か!

確かにどんなに権力で揉み消す力があっても拡散は止められない。人々の総意が必ずあいつを追い詰める。

そういう事か…!


『わかった。それをやる。だから情報をくれ。金はほぼないが今の手持ち30万くらいなら払える。どうか頼む』


この金は父さんが貯金で残してくれていた金だ。

こんなことに使えば怒りそうだが仇を取るためにどうか許して欲しい


『いいヨ〜。それにお金は要らなイ。楽しいショーを見せてくレ』


なに?いいのか?自分が調べて手に入れた情報をそんなに簡単に他人に…。やっぱりこのサイトに集まるやつはイカれてる….。まぁ俺も人のことは言えないが…。


そんなことを思っているうちにコスモスレッドから大量のデータが送られてきた。写真データに映像データ、音声データ。書面のスクショのようなものもある。どれも全て確認したが裏金、セクハラのもみ消しに恐喝。どれも酷いものだった。俺はこの情報の一部を色々と編集しひとつにまとめあげ匿名のSNSに流す事にした。


【ユーザーネーム 正義のヒーロー】


『大罪人、向井幸一郎。お前の隠されし悪行をここに全て提示する。あらゆる人間を苦しめ陥れた代償を今こそ受けるべきだ。全てを認め受け入れ反省し詫び償え』


投稿がバズるには時間はかからなかった。

添付したURLへの接続はあっという間に100万を超え俺の元投稿が削除されてもあるゆるSNSで転載され収集はつかなくなっていった。


遂には向井幸一郎への誹謗中傷がネット上に溢れかえる自体となった。辞めろや謝罪しろなどという声は当然、死ねや生きてて恥ずかしくないのかと言った声も当然のようにあった。あまりの事態に諦めたのか向井は全てを認める旨の声明を出し記者会見で謝罪した。そう。罪を認めたのである。警察に捕まるのは時間の問題だろう。しかしこんなんじゃ足りない。まだだもっともっと苦しめ…そう思った


当然怒り狂った民衆もそんな事では鎮まらない。家に押しかけ物を投げつけたり壁に落書きをしたり親族を攻撃する奴らも現れ警察がそいつらを逮捕したというニュースすらも流れるようになった。


自体はどんどんと加速していきトレンドに向井と入ったワードがあり続けたまま1週間が過ぎたある日、またしてもニュースでとてつもない情報が流れてきた。


昨晩、向井が自宅で亡くなっている状態で発見されたというものだ。自殺の可能性が高いらしい。

あまりの誹謗中傷に耐えかねたのだろう。

ニュースの画面にはマスコミは家の前から淡々と中継を続け大勢の警察官や救急の人間が右往左往している様子が映されていた。


不思議と俺は満たされていた。戸塚の自殺のニュースの時とは違う高揚感。正義は為された。ゴミクズがゴミクズ専用の扱いを受け死んで行った。あぁ。気味が良い。父さんを殺した報いをようやく受けた。

それに死後もあいつは多くの人間から恨まれ続ける。

存在した事が罪となり虐げられ続ける。ざまぁない。


俺はDMを開きコスモスレッドにお礼を送った


『ありがとう。お前のお陰で正義を執行できた』


『礼はいいヨ。執行おめでとウ。でも知ってル?自分の正義を執行するのには代償が必要なんだヨ』


『代償?俺は父さんを殺された。もう奪われるものも失うものもない。お前との関係もこれで終わりだ』


『本当にないのかな失うもノ』


『無い』


『そうかイ』


何言ってんだか。代償だなんだってそんな事どうだっていい。俺は勝った。悪を逃がさず仕留めた。これでいい。そうだ。コンビニでジュースでも買ってきて祝杯をあげよう。やったよ。父さん。


俺は財布を持ち家の扉を開けた。

するとそこには制服を着た少女が立っていた。同い年くらいだろうか…?


「あなたが正義のヒーローさん?」


何だこの子。何を言って…


グサッ____


突如腹に激痛が走った。

ゆっくりと下を見ると自分の腹に包丁が刺さっている。その包丁を握ってるのは紛れもない少女だった。


「教えてもらったの。ある人から。正義を騙ってお父さんを死に追いやった悪いやつがいるって。あなただよね」


正義を…騙って…お父さんを…?

まさか…この子は…


「君…は。向井……の?」


「そう。あなたが殺した…向井幸一郎は私のお父さん」


「そ……ん…な」


「死ね。死ねよ。早く死ねよ。お前のせいで…お前のせいで…私はぁっ!」


絶叫する少女の声がどんどんと遠くなっていく。

感覚も比例して遠く薄れていく。倒れたのだろう。全身に強い衝撃が加わったのを何とか感じた。それ以降は目の前が暗くなりどんどん冷たくなっていくのをじっくりと待つしかできなかった。


これが…死。


「この…!悪魔!」


4話に続く

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