23 閃光の天使
時は遡る。
レグルス達がまだ祭壇の裏の階段を降りている最中の頃、ルーギアは入口で天を仰いでいた。
「…一人だけだな」
ボソッと呟いたルーギアは目を細める。すると空の彼方がきらりと光り、何かが降ってくる。その何かはドカーンと轟音を立てて地面に着地した。睨み構えるルーギア。視線の先には一人の男が立っている。男が大きな翼をバサッとはためかせると周りの土煙が吹き飛ぶ。
「お前誰だ」
「んー?妙だな」
「おいおい質問に答えろよ、お前は誰だ」
「偉そうな男が一人…報告では四人だったはずだが」
「はぁ…ダメだこりゃ。話を聞いてくれそうに…」
ビュン!ドカーン!
ルーギアの言葉を遮るように男は何かを放った。優れた反射神経でルーギアはそれを相殺したが冷や汗を掻く。なぜなら、少しでも反応するのが遅れていれば死は免れなかったからにほかならない。
「ほう。妙な感覚だ。私の信光が消えたように見えたが」
「ご明察。俺の天賦でね。他人の天賦を無効化する」
「無効化…なるほど。貴様、強いだろう。名を名乗ることを許す」
「つくづく傲慢だなぁおい!俺は傲慢なやつ大嫌いなんだよ!まずてめぇが名乗れ!この長髪イケメンがっ!」
「ふむ。いいだろう。私はアマタ・ツヴァイ・ナインティス。周りからは閃光の天使、と呼ばれている」
「閃光の…天使…?!」
ルーギアはその名前に聞き覚えがあった。
閃光の天使。最近天兵団に現れたルーキー。実力はかなりのもので入団して一ヶ月で第十六組の団長に選ばれた異例の存在。そして極度の悪魔嫌いで有名な天使だった。
「さぁ、私は名乗ったぞ。次はお前が名乗れ」
「ルーギア・ファルティナーク。嫌悪の悪魔だ」
「そうか。お前が嫌悪か。魔導組とかいう中途半端な組織を作り天兵団にも魔兵隊にも害をなす目的不明な男」
「ひでぇ言いようだな」
「単刀直入に言おう。英雄の悪魔の身柄を寄越せ」
「聞けねぇ頼みだ」
「頼み?ふざけるな。誰がお前達のような地虫に頼むことがある。これは命令だ。応じないのならば…死ね」
バッと腕を伸ばすアマタ。その手に光の粒子のようなものがどこからともなく集まってくる。
その粒子は次第に剣のような形に変化していく。その瞬間、翼を翔かせ轟速でルーギアへと詰め寄る。間一髪で一閃を躱すが素早い切り返しでどんどんと追い詰められていく。ぐらっと体勢を崩したルーギアを蹴り飛ばすアマタ。
「ちっ…いてぇなぁ」
「ふん。無価値の地虫にしてはよく動けるものだ」
「へいへいうるせぇよ」
「信光」
アマタがそう呟き手のひらを向ける。その手のひらから太いレーザーのようなものが放出される。
「パニッシュ!」
ルーギアはレーザーを天賦で打ち消す。
「やはりその天賦…鬱陶しい事甚だしい」
腰に付けた剣を抜く。その剣は特殊な装飾で出来た金色の派手な剣で柄には不思議な光を放つ石が埋め込まれている。
「なんだ?その剣は?」
「はぁ…無知なやつだ。見ても分からぬとは」
「いや、だって知らねぇし…」
「この剣は構築の剣 クリエリィ。五神剣の内の一本だ」
「……………えぇぇぇぇぇぇ!?!」
「流石に名前は知っていたか」
「あたりめぇだろ!てか待て待て、さすがに嘘だろ。五神剣が実在するなんて聞いたことないぞ」
「だがそれが事実。それにお前が信じるかどうかはどうでもいいことだ」
「あっそ!じゃあ信じねぇ!光を遮る闇の隙間を縫う遮光のような我が意思は、矢として顕現し放たれん」
ルーギアが詠唱を終えると魔力で出来た矢が数十本ほど現れる。ルーギアの手の合図で矢は真っ直ぐにアマタへと向かっていく。アマタはそれを見るなり剣を地面に突き刺す。
「有造」
辺りの地面の砂が数箇所モリモリと盛り上がり触手のように伸びて矢を全て弾く。
「はぁっ?」
残りの砂の触手はルーギアへと勢いよく向かっていく。
「パニッシュ!」
そう手を翳し天賦を使おうとしたが何故か砂の触手は崩れることなくルーギアを突き飛ばした。
「ぐぁっ!」
「無駄だ。これは天賦ではない」
「天賦じゃない…だと?」
「私の天賦は射虎傅翼。あらゆる光を操れる。光を操れるだけで砂に神力を流して操るなんてできない。そう、砂を動かしたのはこいつだよ」
剣を突き出すアマタ
「はぁ?」
「この剣の恩寵、「有造無造」。その場に存在するものの形を変形させる「有造」、あらゆるものを無から生み出す「無造」。その二つの力がこの剣には備わっている」
「まて…恩寵ってなんだよ。天賦と何が違う」
「恩寵は神が己の力の一部を直接与えたもの。天賦は神が与える訳ではなく生まれつき備わっている物だ」
「嘘つくな。天賦だって神が授けてんだろ」
「何言ってる。神が毎日何百と生まれる子供にいちいち一個ずつ天賦を授けているとでも?」
「なっ」
「はぁ…その顔…本当に信じていたのか。これだから悪魔共は腹立たしい。頭が悪すぎる癖に自分達は天使と対等だと思っている。これ以上話してもストレスが溜まり続けるだけだ。もう、問答はよそう」
「ってことはあの剣は本物の五神剣ってことかよ…!」
アマタが剣を水平に構え、空を見上げる。ブンッと空を斬ると空間に謎の亀裂ができる。
「無造」
亀裂からゆっくりと何か球体状の物が出てくる。それは誰もがよく見るものだった。メラメラと燃え、プロミネンスが定期的に表面に見える。そう。この球体はいつも昼間の空に輝いている太陽を小さくしたようなものだった。
「この剣の力を使えば太陽すら生み出せる。そして太陽は深淵の闇の中でもどこまでも届く光を放つまさに光の母。この場所に小さい太陽ができたということはどういう事か。わかるか?」
「お前さんの天賦の強化、だろが」
「はぁ…ダメか。理解がそこまで及ばないとは…」
「いちいち腹立つ兄ちゃんだな」
「私の勝利が絶対になったということだ。この太陽が生み出す光が全て私の手中。貴様の天賦ですら捌ききれん」
そう言いながらアマタが人差し指を立て天に掲げる。その瞬間、太陽から光が薄く伸び渦を巻くように旋回し、徐々に玉になっていく。その玉はさほどの時間も要さず無数に増えていく。
「おいおい…マジかよ!」
「連信光」
玉のような光が全てさっきアマタが放った光になり凄まじい速度でルーギアへと向かっていく。放たれる瞬間に合わせてルーギアは両手を伸ばし手を重ね魔力を放つ。
「シャット・ドーム!」
ルーギアがそう叫ぶとルーギアを中心としたドーム状の魔力の壁が現れる。光が壁にぶつかるとパニッシュの時と同じく消滅する。
「ほう…なるほど。手で直接触れずとも天賦の力を打ち消せる壁、ということか。鬱陶しく理にかなった技だ。しかし、それほど強力な技ならば大量の魔力を消耗するだろう」
「ちっ…察しがいいなこいつ…」
「さぁどれほど耐えられるかな」
アマタはまたしても太陽の光を操り何十個も玉を生成していく。ルーギアは焦っていた。
まずいな。あいつの言った通りシャット・ドームは魔力消費が激しい。このまま展開し続ければやがて魔力が底を尽きる。そうなったら俺は死ぬが…あいつはあの閃光の天使。生半可な攻撃を仕掛けたところで逆効果。隙をつかれて終わりだ。レグルス達がすぐ戻ってくるとも思えん。仕方ない…"アレ"を使うか?ここで死ぬのは不本意だ。だがあれを使えば中の三人にも……。万が一中で何かとの先頭になっていれば見殺しにしてしまうかもしれない。
またしても大量の光がシャット・ドームに降り注ぐ。シャット・ドームは当たった光を全て消滅させていく。その数に比例してどんどんと魔力が削られていくルーギア。
まずい…!こいつの光の攻撃は無尽蔵なのか…!?一向に猛攻が終わらねぇ…!このままじゃ魔力がもたない。どうにかしねぇと。
つってもこの状況から抜け出すなんて無理だ。避ける選択肢を捨てて受け切る作戦に切り替えた俺のミスだな。かなりの高威力の技だったからな神力の消費がでかいと思ったが案外バシバシ打ってきやがる。これなら先に潰れるのは間違いなく俺。魔力が尽きる前にこのドームを解いて避けるのも難しいだろうな。せめて、一瞬こいつの意識を逸らせれば…!
ドドドドドドドド!
くっそいつまで続くんだ…!
「いつまで続くのかと思っているな」
うるせぇ…言い当てんなよ
「お前が思っているよりも私の神力の総量は多い。諦めて死ね」
くっそ…!ここまでか…!
ルーギアが諦めかけたその時。
「ルーギアさぁぁぁぁんっ!」
聞いたことある声がルーギアの耳に飛び込んで来た。その瞬間、天神堂の扉が勢いよく開きハヤテとハヤテの腕に掴まり飛ばされかけているニシマが飛び出してくる。
「ハヤテッ!」
「うおっ!なんだこりゃ!」
「頼む…!あいつの意識を逸らしてくれ!」
「!」
ルーギアの一言で全てを察するハヤテ。
「わっかりました!」
再度、天賦を発動し駆け出すハヤテ。猛スピードでアマタの下へと潜り込む。アマタはそれを見てハヤテを警戒し少し構える素振りを見せる。そのせいで少し信光の狙いが曖昧になる。その隙を見逃さなかったルーギアはドームを解除、横へと展開し信光を躱す。
「チッ!」
それに苛立つアマタは信光をルーギアへと撃ち続けるがルーギアは華麗に避け、それどころか魔力の矢を撃って反撃している。あまりに攻撃が当たらない事にイライラとしているアマタは気づかなかった。背後の気配に。
「はっ!」
「翔兎地蹴!」
ドゴーン!
ハヤテに蹴られ地面に叩きつけられるアマタ。
「ナイスだハヤテっ!」
「なんなんですかあいつ!」
「閃光の天使だ。光を操る天賦を使う」
「えっ…あのっ?!そりゃ厄介だ…」
「そんで?お前はなんでここに」
「それが…問題が起きてて」
「問題?」
「はい。地下に街の水が無くなった元凶と思われる奴が現れたんです」
「なに?」
「それにあの感じ…恐らく堕天使です」
「なっ!?それはほんとか?!」
「はい。リリアが戦うと言っていましたが一人じゃ敵わない。だからレグルスにも戦うように促しました。それで暴走してもいいようにルーギアさんを呼びに来た…という訳です」
「そうか。そりゃ悪いが…レグルスの所には行ってやれねぇな」
「ええ。ですね…あんなのが来てるなんて」
ハヤテが向けた視線の先には地面に叩き落とされたはずのアマタが立っている。服に着いた砂を払いながら二人を睨む。
「良くも…私を地上へと降ろしたな…」
「おい、ハヤテ。お前あいつキレさせたみたいだぞ」
「ちょ、なんで俺だけが悪いみたいになってんすか。指示したのはルーギアさんでしょ。何とかしてください」
「いや。俺お前に目配せしただけだし」
「目配せしてるじゃないっすか!」
「ごちゃごちゃ五月蝿い…。絶対に許さん。お前たちは何がなんでも殺す…!」
手を突き出し構えるアマタ。太陽からまた光を取り込む。
「ルーギアさん!手を!」
「おう!」
「ニシマ君も俺の手を掴んで!」
「わ、わかった…。ってまさかまたあの速いのっ…?!」
「死ね!地虫共!連信光!」
アマタの手から何発も信光が放たれる。ハヤテ達は超高速でそれを避けながらどんどんと距離を詰めていく。
「パニッシュ!」
避けきれないものはルーギアが無効化し突っ込んでいく。そうして一撃も当たることなくアマタの眼前へと到達する。
「ば、バカn…!」
「月兎廻蹴っ!」
何かを言いかけたアマタの顔面に強力な回し蹴りをハヤテが決める。ぶっ飛ぶアマタに追撃を試みるルーギア。
「光を遮る闇の隙間を縫う遮光のような我が意思は、矢として顕現し放たれん!」
ルーギアの作った数十本の魔力の矢がアマタへと放たれる。その矢の殆どがアマタへと直撃し爆発を起こす。
「っしゃ!モロに入った!」
「油断しない方がいいですよ!」
「そんなことわかってる!」
「ニシマ君も俺のそばを離れないように」
「う、うん…っ…おえ…」
膝を着いているアマタ。
「初めて…だ。こんな屈辱を味わったのは…そうか…貴様らは…そこらの雑魚とは違うのだな…。そうかそうか。なら全力を出しても問題ないというものだ」
立ち上がり剣をしまったかと思うと空へと飛び上がった。そして両手を空へと掲げる。その瞬間、小さな太陽から徐々に光が集まりどんどんと光が大きくなっていく。
「虎帝光!」
「おいおい…なんつーデカさだよ…」
「問題ない、ビビるな。俺の天賦で消せる」
その瞬間、突如姿が消えるアマタ。
「なっ!」
「消えた…っ!?」
それに驚いている二人の目の前にアマタは突然姿を現し、ルーギアに向かって殴りかかってきた。それに咄嗟に反応しガードで受けた事で大きなダメージは喰らわなかったものの体勢を崩す。その隙を突き、アマタはルーギアに抱きついた。
「対象に手を触れるかあのドームをだすか…それでしかお前は天賦の力を無効化できない。そうだろ?」
「くっ!」
「ルーギアさんっ!」
「落ち着け!」
こいつ…何考えてんだ?確かに俺の天賦の発動条件はだいたいこいつの予想通りだがこいつ自身に触れて天賦を無効化しちまえばいいだけの話だ。
「パニッシュ」
抱きつくアマタに触れて天賦を発動した。
しかしアマタはニヤリと笑っている。
こいつ一体…何を…。
ルーギアはそう思いながら何か違和感を感じとった。ふと上を見上げる。すると先程の巨大な光の玉が消えずに残ってることに気づいた。
「な、なんでだよ…!」
光の玉は消えるどころか徐々に大きくなっていくように見える。
なんで消えない!こいつの天賦は俺が………。いや、違う…!あの玉はでかくなっている訳じゃない。落ちてきてるのか…!
「気づいたか地虫…!そう、虎帝光はもう放たれている。俺の天賦を無効化しても意味はない…!」
こいつ…!技を放った瞬間に俺に近づいて俺があの玉を消せないように抱きつき両手の自由を奪ったのか!自爆覚悟の強引策…見かけ通り強かなやつだ
虎帝光はどんどん迫ってくる。何とか拘束を解こうともがくがアマタを剥がせない。このままでは間違いなく二人に直撃するという時、いきなり二人の体がぶっ飛ぶ。驚いたアマタが目線をやると飛び蹴りをしているハヤテの姿があった。
「瞬兎飛蹴!」
ゴフッ…!
ルーギアが吐血する程の威力の蹴りでルーギアとアマタは虎帝光の範囲外へと押し出された。アマタに捕まったままアマタごと虎帝光を受けるよりもアマタはダメージを負わずルーギアが諸に攻撃を食らうが虎帝光の範囲外に出れることの方が利があるとハヤテは判断した。
その判断が正しかったとハヤテはすぐに実感する。虎帝光が地面に直撃するなり砂漠に轟音が鳴り響きハリケーンのような突風と砂塵がその場にいる全員を襲う。それが収まったかと思うと目の前に大きな湖から水を抜いたと言われても信じれるほどの大穴が現れた。あのまま当たっていたらルーギアは無事では済まなかった。
しかし、それはアマタも同じこと。
アマタの本来の目的はレグルスを連れ出す事のはずだ。それなのに己の攻撃が通用しない悪魔と対峙したというだけで自分の身を顧みない技を躊躇なく使ったのだ。ルーギアは改めてこう思った。
この男は異常だ。
「ルーギアさんっ!」
「大丈夫だ…ハヤテ…!サンキューな…!」
「虎帝光を避けられるとは思わなかったが…もう二度と離さん。このままお前天賦を使う魔力が無くなるまで…ずっと信光を撃ち続け殺してやる。離れられないお前は死を待つしかない」
「くそっ…ルーギアさんを離せぇ!」
高速で走りパンチを繰り出すハヤテだが、ビクともしないアマタ。まるで鉄の壁でも殴っているのかと勘違いするほどの硬さだった。
こいつの身体、異常なほど頑丈だな。俺のスピードに魔力を乗せて殴っているのにそれもルーギアさんを拘束している状態なのにビクともしないなんて変だぞ。でも、この感じどっかで見たことあるような…。あっ!レグルスだっ!
あいつのオーラを纏っている時と雰囲気は似ている…。まさかこいつ……間違いない。
「ルーギアさん!そいつは光を纏ってる!」
「光…?」
「光を操る。つまり、光をまるで布のように引き伸ばし纏って鎧にしているんです!注力すると薄らと明るく見える!」
「なるほどな…」
「ふん、気づいたところでどうにもならん」
あの太陽だ。あれの放っている光がこいつの力を増幅してるんだ。俺の天賦でこいつの天賦を無効化してもその光の鎧とやらが消えないってことはクリエリィで光を鎧に変形させてるって事も有り得るな。くっそ。せめて拘束をどうにか解くことが出来れば…あるいは。
「頼む…ハヤテ…!こいつを引っぺがしてくれ!」
「は、はい!」
超高速で走り出すハヤテ。
「うぉぉぉぉっ!月兎乱襲!」
ハヤテの乱打がアマタに炸裂するがビクともしない。
「ダメだ!ルーギアさん!こいつ…!全然効かねぇ!」
「諦めろ。お前らじゃ無理だ」
ダメだ。ハヤテじゃこいつの防御は破れない。俺もこいつの拘束を解く術がない…。あの太陽が消えない限り…俺はこいつに何も出来ない。このままじゃ確実に…死ぬ。
天使の中でも上位の強さを誇るアマタの実力と五神剣の力の前にルーギアが打ちのめされかけていたその時。
ドカーン!
突如、天神堂の扉や壁中の窓から水が吹き出してくる。その水は瞬く間に砂漠の砂を飲み込む勢いでかさを増していく。次第に小さな太陽もその水に飲み込まれた。
「なっ…!」
「今だ!」
太陽の光が水により遮られた事で鎧の形が保てなくなったのだろう。拘束が一瞬緩む。その一瞬をルーギアが逃すはずはなかった。アマタの腕を払い、蹴りを入れ距離をとる。そして叫んだ。
「ハヤテぇっ!」
「うぉぉぉぉっ!瞬兎飛蹴!」
ハヤテの瞬速の蹴りがアマタを吹っ飛ばした。ルーギアの拘束を続ける余裕なんて無く、アマタはルーギアから引き剥がされた。
「っしゃあ!」
「って喜んでる場合じゃないです!ニシマ君!こっちに!」
「う、うんっ!」
ハヤテの元に駆け寄るニシマ。そこにルーギアも一緒に寄ってくる。天神堂から吹き出した水は留まることを知らずずっと吹き出し続けている。やがて周りは海のように水に溢れかえり今ルーギア達が立っている場所は小島のようになっている。やがて水の中からビシャビシャになったアマタが現れ宙に浮く。
そして掌を向けて攻撃を放つ。
「信光…!」
それを腕で弾くルーギア。
「パニッシュ!」
ドカーン!
弾かれた光の線は隣の小島状態になっている場所に着弾し爆発が起きる。
よし。威力が下がったな。これならやれるかもしれない。
「ハヤテ、まだいけるか?」
「はい、大丈夫です…!ニシマ君、俺から絶対に離れるなよ!」
「は、はい」
「おい、お兄ちゃん。ここは見逃してくれねぇかな。俺には一生攻撃通せねぇぞ」
「断る…お前達はここで殺す」
親の仇でも見るような鋭い殺意の籠った目を見てルーギアは何故か可笑しくなってしまった。ここまでの殺意を向けられたのならこちらもそのつもりで返すしか対抗のしようがないということに気づいたからだ。
「そうかい…んじゃ悪いが少し寝てもらうぜ」
「やってみろ。地虫め」
水上の砂漠で二人はお互いを睨み合っている。ピリピリとした殺気のぶつかり合う嫌な空気が辺りを包んでいた。
24話に続く




