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樹属性魔法の使い手  作者: 深海 和尚
魔法学校四大競技大会
64/68

休日と幽霊スポット

アクセスありがとうございます。

 本日は、ここ王都で有名な幽霊スポットに来ています。

 え? 学校はどうしたかって?

 そりゃもう、学校は二日間のお休みさ。


 というわけで、今日は幽霊スポットを散策して、明日は実家へと突撃訪問したいと思っています。


 しかしながら、今日は良く晴れた日で、幽霊スポットとはいえ、全く恐怖はありません。

 むしろ、清々しささえ感じます。

 

 さてさて、この屋敷。

 どうやら幽霊(ゴースト)が出るという噂ですが……。

 ほんとに昼間っから出るのでしょうか。


 学校でも町でも聞いてみたのですが、実際に見た人は一人としていなかったのですけどね…。


 一応立ち入り禁止の立て看板はあるが、セキュリティはガバガバで入りたい放題のようだ。


 ほうほう。今、遂に中へと足を踏み入れたわけですが、この建物は私が今まで見た中で一番の豪華な造りになっていますね。

 

 ところどころに空が見えちゃってるけど、天井は高いです。

 あの大きな穴、はて……、隕石でも降ったのでしょうか。


 どうしても目立つのは中央に聳える螺旋階段。

 とても立派でさぞかし高かったことでしょう。

 しかし、施された装飾部分は盗まれたのか、そこにあっただろうという痕跡のみを残し、全て無くなってしまっているのが何とも悲しいです。


 それに壁紙は全て剥がれ地の色がお目見えしている。

 壁紙まで盗んで行ったのでしょうか。

 十中八九、盗人が根こそぎ盗って行ったのでしょうね。


 うん、そんな輩を見つけたらぶっ飛ばしてやりたいです。


 それから、壁の至るところにも穴が空いて通気性は抜群。

 光もバシバシ入ってきています。

 中まで明るく、カビ臭さなど一切ない……かな。


 ここまで通して、ゴーストが出る要素は今のところどこにもないですね。


 崩された瓦礫が散乱し、砂ぼこりが一面に落ちていることから、人の手が入っていないことがわかります。


 と、そこに残る足跡が人が立ち入った証拠として残っていますね。

 これは複数人のものです。

 

 ゴーストは足跡を残すなんてことはないでしょうから、これも盗人なんでしょうね…。

 しかもよく見れば、比較的新しいではありませんか。

 もしかしてもしかするとですよ……。

 さぁ、目をとじて耳をすましてみましょう。

 おや? 何やら話し声のようなものが聞こえてきましたよ。

 

「────、────」


「──、────、────」

 

「───!─────!」

 

 うんうん…。

 何を喋っているのかはよく分からないですが、ゴーストではなさそうであります。

 そして、この声の感じからして複数人はいるようですね。


 ──盗人?


 どうやら、奥に見える地下の入り口らしき所から声が聴こえてくるようだった。


 ┼┼┼

 

「──あ、兄貴、早くいきましょうよ……。人が来るかもッスよ…」

 

 チンチクリンの出っ歯は怯えた様子で入り口へと目を向けている。


「そうでやんすよ、兄貴。 もうこんな所、金目の物なんて何もないでやんすよ。 ずっと変な声みたいなのが聞こえるし……怖いでやんす……」

 

 兄貴と呼ばれる男の両肩を掴み、激しく揺するガリガリのおかっぱ頭の男。

 揺すられている男はその揺れのせいで手元がブレにブレ、何も見つからないことに感じていた苛立ちが、より一層増してくる。


「──うるせーな! 探せば何か出てくんだ! 邪魔すんな!」

 

「──兄貴ー、出てくるのはゴーストっすよ…しかも、さっきから何か甘ったるい変な匂いがしてくるし………あっ! あ…あ……」

 

 入り口を見つめ続けていたチンチクリンの出っ歯は何かに気づいた。

 そして、その様子を見て、ガリガリのおかっぱ頭も異変に気づく。

 チンチクリンの視線を辿り、降りてきた階段へと視線を移すと、その恐怖から体が条件反射のように震え出した。


「──あ、あ…あに…あに……」

 

 流石に様子のおかしい二人に手を止める兄貴。

 

「──おいっ! あっあ、うるっせーなっ! なんだって───あ?……ぼ…亡霊…?」

 

 怒りが急速に冷めていく。

 

 …………。


 室内に充満するアンモニア臭。

 漏らしたのは誰か。

 

 三人の視線の先には、黒い仮面を着けマントを靡かせた得体の知れないものが浮遊し、ゆっくりと階段を降りてくるところだった。

 ボヤーっして輪郭がハッキリしていない。

 顔も霞がかっているようで、見えるのは耳の辺りまで裂けた口だけ。


「─────にげろッッ!」

 

 叫んだのは兄貴だった。

 

「あ、あ、あに、兄貴……こ、こ、腰が──」

 

 兄貴以外の二人は尻餅をついている。


「──バッカヤローが! 立て! ほら、逃げるぞっ!」

 

「…う…う…ッス…」

 

 膝をワナワナさせて立ち上がる。

 まるで生まれたての動物の赤ちゃんのように。

 

「──けど、逃げるったってどうするでやんすか?! 出口は階段しかないでやんす!」

 

「くっ! そうだったな…。 よ、よし、俺が流して(・・・)やる!」

 

「あ、兄貴…無謀でやんすよ…。 成功率半分じゃないすか……」

 

「や、やるしかないんだ!! いいなっ? 」

 

「……わかったでやんす!」

「……うッス!!」

 

 二人の顔つきがかわる。

 覚悟を決めた兄貴の背中を見て、気合いをいれたのだ。

 膝を叩き奮い起たせる。

 

「いくぞっ!!」

 

 兄貴は腰に差してあった杖を取り出した。

 そして、構えるとすぐに魔力を練り始める。

 

「静かなる清流(せいりゅう) 出流(いずる)水流(すいりゅう)──」

 

 練習に練習を重ねた魔法。

 滑らかな詠唱と共に上手く魔力が杖先へと集まり出した。

 

「──我が手より()の者を奔流(ほんりゅう)へと取り込まん──ウォーターカレント(水流砲)!!」

 

 瞬間、杖先からドドドッと川のような水が溢れ出した。

 実戦でのぶっつけ本番。

 兄貴は賭けに勝ち、自分に打ち勝ったのだ。


 階段を下から上へと登り、その勢いは、間にある異物を全て押し上げていく。

 

「いまだっ! 乗れ! にげろっ!!!」


 そこにいる亡霊がどうなったかはわからない。

 分かりたくもなかった。

 もう関わりたくなかった。


 とにかくここから逃げられたなら、もう近づくことはないと、兄貴は心に誓った。


 三人は川の流れに乗ってそのまま地下から地上へと押し流されて行く。

 半分溺れるようにして。

 

 溢れた水と一緒に階段を上がるやいなや、息を整える暇もなく、とにかく急いで玄関から外へと三人は逃げ出したのだった。

 

 そして、兄貴は後日、学校でこの出来事を言いふらすのだ。

 

「──俺はドライの亡霊をみたぞ!」と。

 

 そう、ここは幽霊スポットなどではなく、ドライ先生の、イースト家のお屋敷だ。 

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