魔法学校四競技大会
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──魔法学校四競技大会。
それは百数十年続く歴史ある大会である。
五年生から大会出場権が与えられ、六、七、八年生までが参加となる。
ちなみに九年生と卒業生は、実地研修やら卒業試験、卒業後の進路先などで忙しなくしているため、学校にいることも少なく大会への参加はない。
学年毎に一日ずつ競技は行われ、計五日間のお祭り騒ぎだ。
この都市はそうでなくてもお祭り騒ぎだが、この期間中はより一層騒がしくなる。
学年毎に一位から最下位まで順位化され、一位になったクラスはたとえ樹クラスだろうと、周囲からは羨望の眼差しを向けられるという。
そんな大会で執り行われる種目はその名の通り四つある。
宝石奪取。
ポイント制の競技だ。
各クラスから代表を一名選出する。
クラス対抗ではなく、そして五名を混合した一チームを作り、計四つのチームに分かれる。
レッドアレキサンドライト(赤色)、ヨハネスカイヤナイト(青色)、ジェダイトマクシミリアン(緑色)、ブランザイトンプソン(茶色)の四チーム。
まず、各チームへは大人の大きさもあるチーム名と同じ宝石が一つずつ与えられ、自軍の宝石を守りつつ、相手の宝石を狙い合うこととなる。
さらに、至るところへ散りばめられた宝石を回収することでポイント獲得となる。
一時間のタイム制で、タイムアップ時の獲得ポイントの多い方が勝者となる。
あるいは、終了時間内であろうと自軍の宝石が壊れた時点、もしくは相手の宝石を壊した時点で即終了となる。
勝者となったチームに所属しているクラスに得点が入ることとなる。
散りばめられた宝石は、ダイヤモンド、レッドアレキサンドライト、ヨハネスカイヤナイト、ジェダイトマクシミリアン、ブランザイトンプソンの五つ。
ダイヤモンドのみ五ポイントで、他は全て一ポイントとなる。
チマチマと宝石を集めるのもよし。
相手の集めた宝石をごっそりと奪うのもよし。
一発逆転を狙い、相手の生命線の宝石を狙うのもよしだ。
攻撃はもちろん可とし、即席のチームで、いかに戦略とチームプレイが上手くできるかが肝心だ。
戦闘競争。
各クラスから三名の選手を選出。
決められたルートを通り、スタートからゴールまでのスピードを競う競技だ。
五クラスずつが争い、四回の計二十クラス。
そして、各回のトップだった四クラスが決勝を行う。
魔法も道具も使用可能、妨害もありだ。
但し、即致命傷に繋がる攻撃は失格対象となるから気を付けねばならない。
三名が全員ゴールしないとフィニッシュにはならず、一人でも脱落したチームは即失格となる。
仲間と互いにサポートしつつ敵の妨害を潜り抜け、いかに迅速にゴール出来るか。
一人だけが強く、速くても勝てはしない。
勝敗の予想が一番つきにくい競技とされている。
全力迷宮。
クラス全員に参加資格が与えられた競技である。
但し、ジュエルスティーリング、バトルカントリーにて負傷し参加できない者、又、その他の理由により参加の厳しい者は競技の欠場を認める。
最終競技(個人闘技)に参加する者は欠場とすること。
迷宮は四層構造となっており、各フロアーにはフロアーボスといわれる番人がおり、撃破の場合のみ次の階へと降りることができる。
全層クリア時のみ、残った人数に応じてポイントが割り振られる。
要するに、ゲームオーバーでノーポイントだ。
この競技のみ仮想空間を使用し、肉体的ダメージは精神的ダメージに変換され、致命傷を受けた場合、一日全速力で走り続ける運動量並の疲労感に襲われるから要注意だ。
その為、『ギブアップ』と宣言することでリタイアと形で仮想空間から抜け出すこともできる。
命を落とすギリギリを見極めるのも大事だ。
個人闘技。
各クラスから一人ずつ代表を選出し、計二十名が一対一を行う。
トーナメント方式。
場外に落ちた者、戦闘不能になった者は敗者となる。
そして個人闘技で優勝した者は、その学年の代表とし、五日目に行われる学年対抗個人闘技に参加となるのだ。
この競技は大会の目玉と言える。
花形の競技にして、優勝者はそりゃもうモテモテ街道まっしぐらだ。
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窓から射し込むオレンジ色の光が室内を赤色に染め上げている。
そして、光を浴びながら、その窓から眼下に広がる街を眺めながら、男は背後に立っているもう一人の男へと話し掛けた。
「──"核"はどうなっているんだ?」
「……はい、今のところ順調にございます。それに監視も上手く溶け込んでいるようで──」
「おい、二人の時は前のような話し方で構わないと言っているだろうが」
「……いえ。 大事なところでボロが出てしまっては困りますので」
「……。ふん、まぁいい。 それで?」
男は振り返り、背後に立つ男を見据えた。
背後の男からは、逆光により窓際にいる男の表情がよく見えなかった。
とはいえ、普段から感情の起伏があまりなく、ほとんど無表情であるために、逆光で顔が見えなかろうと特に気にも止めなかった。
男は話を続ける。
「はい、その者からの報告によりますと、"弟子"は近くにはいないようで、今のところ一度も接触はないようです」
「ほう、ならその消息は?」
「一人は分かりません……。 もう一人はあのマクシミリアンなので、彼だけをマークしていれば問題はないかと」
男は、陰っている窓際の男の顔をじっと伺う。
「………。 そうか…。 一応、引き続き目は光らせておけ。──ああ、それと奴はどうだ?」
「奴ですか…奴は……そうですね、レッドオーク以上かと」
「レッドオーク以上か。 まぁ、そうだろうな。あれは、素材がいいからな」
「はい。それと、今はまだ大丈夫ですが、手がつけられなくなるのも時間の問題かと。 ですので、そろそろ使おうかと……よろしいでしょうか?」
顔を伺うも、その表情は読み取ることができない。
「ああ。 して、どこで使うつもりだ?」
「はい、それなんですが、既に王も知ってることと思いますが、今度『魔法学校四競技大会』が開催されます。
そして、今年はそこへ各種族の王族が招待されているようでして。
いい機会かと思うので、そこにアレを仕向けようかと──」
「フフ、フハッハッハッ! それはよいな!よいよい! 大会が楽しみだ!」
顔が暗いままであるが、元国王であるユオダス・グランダルムの顔には喜悦の表情が貼りついているのが男にはわかった。
それは見なくとも、室内に響く彼の高笑いから簡単に想像できるだろう。
ユオダスがここまで顔に出すのは珍しいと言えた。
少なくとも、出会ってから一度だけしか宰相のシュヴアルツは見たことがなかった。
室内にこだまするユオダスの笑い声が切れると同時に、「──では」と一言残し、シュヴァルツは静かに闇に溶けていった。




