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樹属性魔法の使い手  作者: 深海 和尚
王都魔法学校再入学編
54/68

ようやく戻れる!

アクセスありがとうございます。

 遡ること数時間前。

 

 氷の大陸はブザンソン。

 鬼族の村。


「じゃあそろそろ行くわ」

「もう行くのかえ?」

 

 俺は村の中心にある広場で、鬼族の村人に囲まれていた。

 ちらほらと鬼族以外の連中も目に入る。

 

「うん。 まあ五年後にディアブロ主催のアレがあるから、それまでには戻るよ」

「ヴェルー。 絶対戻ってきてよ! というか、私が行くからっ! もう少しで上手くいきそうだし」

 

 涙目のカーラだ。

 ネグロとレビタは、俺の見送りには来ないで今も必死に修行している。

 彼らはこの五年間血の滲むような努力をしてきた。

 飛行術を取得するために。

 いや、違うな。

 彼らは細胞レベルで取得はしているのだから開花させるために。

 

 そして、そんな彼らを嘲笑うかのように一番に開花したのがカーラだった。

 元々素質があったのだろう。

 常に踏んばっているようなぐぬぬ顔をしている二人を横目に、カーラは、用を足した後のような爽やかな顔をしてあっさりと浮くことに成功していた。

 ちなみにそれを言ったら平手がクリーンヒットしたぜ。

 俺のほっぺに季節外れのモミジが咲き乱れた。


 そんな俺は、彼らとは違った切り口で飛行魔法?進化した浮遊魔法?を成功するべく、必死にぐぬぬしていた。

 あと数年したらイブリースとかいうメガネ野郎との戦いもあるのに、修行そっちのけで飛ぶことに没頭した。

 模擬戦一割、飛行魔法に九割でこの五年間を費やしてきたのだ。

 

 そして、遂にその甲斐あって、俺は人類初となる『ヴェルデ式飛行魔法』を開発したのだ。

 たぶん、初ね。

 もし先にフライングヒューマンがいたらごめんなさい。

 ヴェルデ式とか大層なこと言ってごめんなさい。

 

 そしてこれを成功させたことで、それが俺自身を強化することになった。

 偶然の産物である。

 いや、必然か。

 飛行するには高等技術が必要だから、それができるようになれば自身のレベルアップに繋がっちゃうよね。

 じゃあ、その高等技術とは何か。

 それは、二つ同時に魔法を発動すること。

 持続的に魔力を使い続ける魔法を発動しつつ、その最中にもう一つ魔法を使用することもしかり。

 そんな持続魔法である浮遊魔法と吹き飛ばし魔法を使用するのが、ヴェルデ式飛行魔法。

 一度浮遊し、それを維持しつつ自分を吹き飛ばすのが基本。

 そして、右手と左手で同時にその魔法を発動させることができれば、よりスムーズに飛行を行える。

 もう自由自在に空を飛べる。

 空は俺のもの。

 俺は空の王!

 そんな俺のことをみんなは『スカイキング』と━━━

「気を付けてね! ブラク!」


 無邪気な鬼族の子供達。


 ………。

 そう呼ばれる日は近くはない。

 が、そう遠くも…ないと思いたい。


 では、それがどうしてレベルアップに繋がるのか。

 もちろん飛行という機動力を得たことだけでも脅威だ。

 それだけでももう負けなしの気分全開さ。

 だが、左右の手で同時に魔法を使用できること。これが一番の戦力アップ。

 常に二倍攻撃みたいなものだからな。

 まあそれは飛行してない状態でのお話。

 俺の場合、空を飛ぶ為に魔法を既に二つ発動しているからね。

 なら、飛行しながら攻撃することはできないのか?

 空からの攻撃は夢のまた夢?

 一度吹き飛ばし魔法をストップさせ、浮遊して状態でなければダメなのか?

 いやいや。

 そんな疑問も俺は三つ使うことで即解決さ。


 そう、俺は三つの魔法を同時に発動できるようになった。

 そしてそれをさらに応用して━━と、まあそれは置いておこう。

 

 とにもかくにも、俺は飛行魔法を完成させ、その魔法をもってして、一度、故郷のある緑の大地へ戻ることにしたのだ。

 やっとだ。

 やっとこ戻れる!

 

「じゃあ、あっちで待ってるよ。 頑張ってな、カーラ」

「……ヴェル…、いってらっしゃい」

 

 カーラは既に半べそをかいている。

 元々美人だったが、この五年でグッと綺麗になった彼女。

 俺に好意を持ってくれてるのは間違いないんだよな。

 でも、何をどうしたいとも言わないわけで、ネグロのこともあって、特に何か起こるわけでも発展するわけでもなかった。


 そんなカーラを俺はあっさりと置いていく。


 さてと、そろそろほんとに行こうかな。

 向こうまでの距離はどれくらいなのか不明。

 俺の魔力が持ちこたえるかも不明。

 不安はあるが、まぁ大丈夫だろう…。

 

「じゃあ、行きます! 」

「気を付けるんじゃぞ」


 俺は鬼ババと最後の挨拶を済ますと、ラモンからこっそり貰った仮面を装着する。

 ラモンの家で飾られていた民芸品の中にあった一つだ。

 留め具も無しに顔に装着できる魔道具だ。

 色は黒。

 眼のところが透明の材質でできている。

 その目を跨ぐようにして上下に入った三本の金のラインがシックでカッコいい。


 何故これを装着するのか。

 理由は二つ。

 人族で飛行できるの者はいまのところいないと思われるから、身バレしないようにというのが一つ。

 もう一つはこれがないとスピードが出せないからだ。

 

「ゼピュロスフロート×エアーバースト」


 俺は垂直に一気に上昇した。

 一瞬にしてみんなが豆粒サイズ。

 空気も程よくあるし、この高さがちょうどいいようだ。

 目指すは緑の大陸。

 進むは北北東。


 ああ、それとこれくらいなら杖無しでも安定して発動できるようになった。

 だが、樹属性魔法にはやっぱり杖がないと上手くいかなかった。


 ┼┼┼


 それから飛行すること二時間あまり。

 眼下には大陸が広がっている。

 緑の大陸へと入ったのだ。

 

 ハイスピードでガンガン飛ばしてきたが、魔力にはまだまだ余裕はある。

 しかし、仮面を着けていなかったらやはりキツかった。


 このスピードだと、まず呼吸が難しい。

 何か顔に当たれば激痛だし。

 もうね、むしろ空気が痛いのよ。


 という理由で、仮面は必須アイテムさ!

 

 と、大陸を見下ろしながら進んでいると、森に囲まれた平野に大勢の人の姿が見えた。

 

 中心にいる二人を囲むようにしてドーナツ状にワラワラと広がっている。

 手に持つ武器や身なりからして盗賊か山賊と言ったところか。

 

 真ん中にいるのは格好からして女性?

 もう一人は女性を護っている?

 

 

「━━━なっ、なんだ?」

「━━━お、おい! お前っ!」

 

 よく見えるようにと、少し高度下げてみたら早速見つかったようだ。


 気にせず、とりあえず声の届く高さまで。


「君、大丈夫かい?」


 女の子は反応なし……。

 周りがすっごく反応してるけどね。


「おーい」

 

 ………。

 えっ? 聞こえてるよね?


「おーい、君は大丈夫なのかい?」

「おいおい、何だお前は! 何で飛んでる?!」


 護衛かと思ってた奴が、驚愕と好奇心の入り交じった顔をしながら声を上げた。

 あれは護衛じゃないわ。

 なら、無視。

 

「おーいって……ちょっと聞いてよ…」

「てめぇが聞けやゴラァッ!!」

 

 近づいて来ていた盗賊の一人が怒りの籠った声で、何か言っている。

 とにかく、うるさい。

 だが、その声の甲斐あって、漸く女の子が反応を示した。

 盗賊を見つめ、それからゆっくりと上を見上げた。

 バッチリ目が合う。


「やぁ。 お困りかい?」


 目が虚ろな彼女。

 相当まいってるようだった。

 しかし、どこかで会ったことがあるような……。

 髪はブラウン。

 まだ発展途上ではあるが、豊満になりそうな体……。

 どこで……?


「……男の子…? 仮面……?」


 あ、仮面したままだった。

 かといって、これだけの人(どうみても悪人)がいる中で、今さら仮面をはずす気にもなれなかった。

 どうやら声を聞いて俺を男と判断してくれたようだ。

 

「うおおぉぉぉ!! 無視してんじゃねーぞー!!」

 

 突如、叫びながら斧を構えて走ってくる一人のおっさん。

 いきなり大声出すからあぶない人かと思ったわ。

 いや、危ない人には変わりないか。

 

 さらに刺激されたのか、駆け出すおっさんが二人。

 これじゃ、ゆっくりと話もできやしない。

 俺は女の子へ優しく微笑んだ。

 仮面越しで見えないけど。

 

「少し待ってて━━エウロスレッグス×エアーバースト×エアーボム」

 

 次の瞬間。


 彼女は俺の姿を見失った。

 

 ┼┼┼


「えっ?」


 私は周囲をキョロキョロと見回す。

 仮面の彼を探して。


「ぐあぁぁぁ!!」


 しかし、見つけたのは最初に斧を振り回した盗賊が吹き飛ぶ姿だった。

 さらに聞こえてくる悲鳴。


「うああぁぁぁぁ!!」

「ギィヤアァァァ!!!」

 

 次々と吹き飛んでいく盗賊達。


 しかし、その悲鳴はすぐに止んでいく。

 悲鳴を出すと同時に気絶しているからだ。

 

「うあぁぁっ!!」

 

 今度はかなり離れた所からだ。


 また、盗賊の悲鳴が聞こえ、消える。


 後ろで。


 前方で。


 右手、左奥。


 右、右、前、左、右、後ろ、左、左、前。

 

 何かのコマンドみたい。

 

 吹き飛ぶ盗賊が盗賊を巻き込んで吹き飛んでいく。

 至るところから盗賊の悲鳴が聞こえ消えていった。


「えっ?えっ? どうなってるの……?」


 私にはわからなかった。

 全く見えない。

 バンを見れば彼は固まっていた。

 彼も目で追えていないのだろう。

 

 私は一方的にやられていく盗賊の姿に困惑だった。

 絶望の淵から這い出たような気分だ。

 引きずり出してくれたのは、仮面の得体の知れない男の子だったけど。


「アイツは魔族……か? くそっ、ちと手に負えねーか。 シャーロットこいっ!」

 

 バンが私には近づいてくる。

 捕まれば人質になっちゃう。

 足手まといは嫌…。

 けど、もう魔力もなくて何もできない……。


 震える膝。

 

「おいおい、オッチャン! それはダメだよー」

 

 バンの背後に彼はいた。

 その声に足を止めるバン。


 既に辺りは静まり返っていた。

 立っている者はいない。

 あれだけいた盗賊が全て、地面に横たわっていたのだ。

 

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