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『証拠保全は完璧です。追放令嬢は有能な親友と氷の公爵と組み法廷ざまぁを始めます〜慰謝料請求?倍返しで合法的に買収しますが〜』  作者: 月神世一


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無能はお前だ。新商品のプレゼンと掌返し

無能はお前だ。新商品のプレゼンと掌返し

王城の大広間は、文字通り水を打ったような静けさに包まれていた。

「あ、アルヴィン公爵閣下! な、ならびに、公爵夫人・アカネ様、ご到着!!」

従者の高らかな声が響いた直後から、貴族たちの視線は階段を下りる私たちに釘付けになっていた。

無理もない。極寒の北の辺境を治め、めったに王都の夜会に顔を出さない『氷の公爵』が姿を現したのだ。おまけに、その腕に寄り添っているのは、つい先日「無能な横領犯」としてグランツ商会から追放されたばかりの男爵令嬢。

それが一夜にして、この国で最も権威ある公爵の『正妻』として凱旋したのだから、彼らの思考が追いつかないのも当然だった。

「馬鹿な……っ! なぜあの女が、アルヴィン公爵の隣に!?」

広間の中心付近で、ワイングラスを落とし、醜く顔を歪めているのはルーファスだ。

その隣には、彼と結託して王都の利権を牛耳っている悪徳宰相の姿もある。宰相はルーファス以上に顔色を悪くし、不快げに舌打ちをしていた。

私はクラウス様にエスコートされながら、優雅な足取りで大階段を下りる。

ざわめきが波のように広がる中、クラウス様は一切の動揺を見せず、ただ冷徹な威厳を纏って広間の中心へと進み出た。

「皆様、久しいな。北の辺境より参った、クラウス・アルヴィンだ。今宵は建国記念の祝賀という佳き日、王家への忠誠と共に、皆様に一つの『吉報』をお持ちした」

クラウス様が低く、よく通る声で口上を述べると、広間は再び静まり返った。

彼の言葉一つ一つが、王族ですら無視できない重みを持っているのだ。

「私の隣にいるのは、先日アルヴィン公爵家に迎え入れた我が正妻、アカネ・ヴィクトリアだ」

「「「…………!!」」」

公爵本人の口から発せられた『正妻』という言葉に、会場に決定的な動揺が走る。

ルーファスが「あり得ない!」と小さく叫ぶのが聞こえた。

「そして彼女は、私が筆頭株主を務める新商会『アエギス』の社長でもある」

クラウス様はそこで言葉を切り、私に視線を向けた。

『さあ、お前の舞台だ。存分にやってみせろ』とでも言うような、信頼と愛情に満ちた微かな微笑み。

私はその視線に力強く頷き、貴族たちに向かって一歩前に出た。

「皆様、初めまして。アエギス商会代表、アカネ・アルヴィンと申します。本日は皆様に、我が商会が開発した画期的な新製品を発表させていただきたく存じます」

私が指を鳴らすと、事前に手配していた公爵家の騎士たちが、恭しく黒い布に覆われたワゴンを運んできた。

広間の中央に置かれたそのワゴンから、私は勢いよく布を剥ぎ取った。

「こちらが、我々アエギス商会が誇る最新の魔導具――『高効率魔導循環ストーブ』でございます」

現れたのは、洗練された流線型の金属フォルムを持つ、美しいストーブだった。

貴族たちが興味深そうに首を伸ばす。

「なんだ、ただの暖房具ではないか」

「既存のものと何が違うというのだ?」

疑問の声が上がる中、私は自信に満ちた笑みを浮かべた。

「皆様が現在お使いの魔導ストーブは、動力源に高価な『火炎魔石』を使用し、すぐに魔力切れを起こす燃費の悪さが課題でした。しかし、この新製品は違います。動力源に使用しているのは、鉱山で安価に取引される『低純度のクズ魔石』です」

「なっ……! クズ魔石で暖が取れるわけがなかろう!」

一人の貴族が嘲笑うように言った。

私は慌てることなく、ストーブの起動スイッチを入れた。

カチッ。

その瞬間、ストーブの内部に組み込まれた特殊な反射板が魔力を増幅し、心地よく、そして信じられないほど強力な温風が広間に一気に広がった。

だが、その熱は決して危険なものではなく、まるで陽だまりのような優しい温かさだった。

「おおっ! なんだこの温かさは!」

「それに、魔力の揺らぎが全くない。本当にクズ魔石を使っているのか!?」

驚愕の声が次々と上がる。

「その秘密は、内部構造と素材にあります。魔力を効率的に循環させる独自の『概念設計』。そして、王都のギルドが独占している既存の金属パーツではなく、ポポロ村の森で採取された魔獣『ジオ・リザード』の変異種の外殻を加工した耐熱筐体を使用しております。これにより、熱暴走の危険性は皆無。持続時間は既存製品の十倍、さらに製造コストは――十分の一以下です」

「じゅ、十分の一以下だと!?」

「そんな馬鹿な! それでは王都の魔導具市場が完全にひっくり返るぞ!」

貴族たちがざわめきを通り越し、パニックに近い興奮状態に陥る。

当然だ。このストーブが普及すれば、これまでグランツ商会から高額で買わされていた暖房費が劇的に下がるのだから。

「すでに公爵領の工房にて、大量の量産体制が整っております。先行予約をいただいた方には、特別価格にてご提供させていただきますわ」

私が極上の営業スマイルでそう締めくくった瞬間。

「あ、アカネ様! ぜひ我が家にも三台、いや十台ご用意願いたい!」

「我が伯爵家にも! ぜひアエギス商会と専属契約を結ばせていただきたい!」

「公爵夫人! 素晴らしい発明です! 私は以前からあなたの才能を信じておりましたぞ!」

先ほどまで私を「横領犯」「パクリ女」と遠巻きに見ていた貴族たちが、目の色を変えて私に群がり始めた。

完全な、そして強烈な掌返しだ。

(ふふっ。権力と利益の前では、誰もが正直ね)

私は心の中でほくそ笑みながら、彼らの称賛を優雅に受け流していた。

「おい、近すぎるぞ。私の妻に気安く触れるな」

クラウス様がさりげなく私の腰を抱き寄せ、冷気を放って群がる貴族たちを一歩後退させる。その過保護な独占欲に、私は思わずクスッと笑ってしまった。

一方、その光景を大広間の隅で見せつけられていたルーファスと悪徳宰相の顔色は、もはや白を通り越して土気色になっていた。

「バ、バカな……あんな複雑な機構、グランツ商会の技術部でも作れなかったのに……! あんなものが市場に出回れば、ウチの独占市場は終わりだ!」

ルーファスがギリッと歯を食いしばり、憎悪に満ちた目で私を睨みつける。

宰相もまた、額に脂汗を浮かべながら唸った。

「おのれ、アルヴィン公爵め……! ポポロ村の素材を使い、我々の流通封鎖を完全に無に帰すとは。あの女、ただの小娘ではなかったというのか……!」

彼らが築き上げてきた利権と嘘のメッキが、私の『概念設計』一つでガラガラと音を立てて崩れ去っていく。

屈辱と焦燥に塗れた元婚約者の顔は、極上のエンターテインメントだった。

だが、プライドだけは人一倍高く、自分の無能さを絶対に認めようとしないルーファスが、この状況を大人しく受け入れるはずがなかった。

いや、彼が「馬鹿な行動」に出ることは、すでに私とサクヤの計算の内だ。

「――ふざけるなァァァッ!!」

突如、ルーファスの絶叫が大広間に響き渡った。

彼は顔を真っ赤にして群衆を掻き分け、数十人の王都の衛兵を引き連れて私とクラウス様の前に乱入してきたのだ。

「その技術は、俺の商会のものだ! アカネ・ヴィクトリア! 貴様、グランツ商会から資金を横領しただけでは飽き足らず、我が商会の最高機密である新製品の設計図まで盗み出し、アルヴィン公爵に取り入ったな!」

ルーファスは衛兵たちに指示を出し、私たちを取り囲ませた。

周囲の貴族たちが息を呑み、サッと後ずさる。

「衛兵! その女は泥棒だ! 罪人として今すぐ捕縛し、地下牢にぶち込め!」

ルーファスが勝ち誇ったように叫ぶ。

大勢の貴族の前で私を糾弾し、強引に「盗作」のレッテルを貼ることで、この新製品の権利ごと公爵家から奪い取ろうという、あまりにも浅はかで醜悪な悪あがき。

「……ほう」

クラウス様が、極寒の怒気を孕んだ低い声で呟いた。

「私の妻を泥棒呼ばわりし、あろうことか私兵ではなく王都の衛兵を使って捕縛しようとするか。……いい度胸だ、ルーファス・グランツ。貴様、その言葉の重みが分かって言っているのだろうな?」

クラウス様が一歩前に出ただけで、衛兵たちがビクッと怯え、持っていた槍の穂先を震わせた。

だが、ルーファスは宰相の権力を笠に着ているせいか、恐怖よりも見栄が勝っていた。

「こ、公爵閣下といえど、罪人を庇うことは許されません! その女は私の商会で裏帳簿をつけ、アイデアを盗んだ悪女です! 騙されてはいけません!」

「……そうか。ならば、その言葉を証明するだけの『確たる証拠』があるのだろうな?」

クラウス様の冷ややかな問いかけに、ルーファスはニヤァと卑劣な笑みを浮かべた。

「証拠ならありますとも! 我がグランツ商会の金庫には、彼女が横領した金額を記した帳簿と、盗作の証拠がしっかりと保管されています! それを確認すれば――」

「――ええ、確認いたしましたわ」

ルーファスの言葉を遮るように、大広間の二階のバルコニーから、透き通るような冷たい声が降ってきた。

全員が上を見上げる。

そこに立っていたのは、数枚の羊皮紙と、赤く点滅する『魔石』を手にしたサクヤだった。彼女は極上の営業スマイルを浮かべ、眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせている。

「なっ……お、お前はサクヤ! なぜそこに!」

ルーファスが間抜けな声を上げる中、サクヤはバルコニーから優雅に一礼した。

「ごきげんよう、ルーファス様。そして宰相閣下。……私、法務代理人として、少々『証拠保全』のお手伝いをさせていただきました」

サクヤは手に持っていた赤い魔石――『完全記録の魔石』を高く掲げた。

「さて、皆様。これより、我がアエギス商会に対する数々の不当な嫌がらせと、横領の捏造、ならびにアイデア盗用の『真の犯人』を、事実と証拠に基づき、完全に立証いたします」

私とクラウス様は顔を見合わせ、共犯者の笑みを浮かべた。

さあ、舞台は整った。

待ちに待った、反撃の、そして公開処刑の幕開けだ。

第9話をお読みいただき、誠にありがとうございます!

ついに王都の大夜会でのプレゼンが成功し、貴族たちの強烈な掌返しが始まりました!

アカネの『概念設計』で生み出された新製品に度肝を抜かれ、焦ったルーファスが衛兵を連れて乱入してくるという、テンプレながらも最高の展開。

しかし、上空にはすでに「証拠保全」を完璧に済ませたサクヤがスタンバイしています!

「ざまぁの準備万端!」「ルーファスの墓穴掘りっぷりが最高!」「次回が待ちきれない!」と思っていただけましたら、

ぜひ画面下部(または上部)の【☆☆☆☆☆】の評価ポイントから、星をタップして応援していただけますと、作者の執筆スピードが限界突破します!

(※皆様の星が、アカネたちの完全勝利への後押しになります!)

【ブックマークに追加】も、どうかよろしくお願いいたします。

次回、いよいよサクヤが魔石の音声を大音量で再生し、ルーファスと宰相の悪事を白日の下に晒します! 完膚なきまでの論破による公開処刑をお楽しみに!

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