「ヴィー様、あまり妄想とかしないタイプなのも解釈一致」
「まぁ、見てください、ヴィー様!!」
マドロールの視線の先には子供達の姿がある。皇妃であるマドロールは、子供達のことを大変可愛がっている。
――子供達が中庭で、護衛たちと一緒に遊んでいる姿が視界に映っている。
「可愛いですわよね。ふふっ、ああやって楽しそうに過ごしている様子を見るだけで自然と笑顔になりますわね」
マドロールは嬉しそうな表情で、ヴィツィオに話しかけている。
彼女は子供達と自分で遊ぶこともよくある。ただ常に子供達と過ごしているわけではない。
マドロールは護衛達のことをとても信頼しているので、特に心配もせずに子供達のことを見ていた。
「そうだな」
「すくすく育っていている様子を見ると安心しますわ。子供って本当に些細なことで命を落とす可能性もありますから、元気に育っていてくれているだけでも嬉しくて仕方がありません」
にこにこしながら、慈しむような視線をマドロールは子供達へと向けている。
マドロールは子供が命を落としやすいことを知っている。前世でもそういったニュースは幾らでも聞いたことがあった。そしてこの世界ではより一層、子供は知らないうちに亡くなっていたりもする。
出生届などを提出する仕組みはあるにはあるけれども、周りに存在を知られずにそのまま天へと帰ってしまう者も居なくはない。
マドロールは皇妃として、不幸な子供はなるべく減らそうとは思っている。制度を整えたりといったことは試行錯誤しつつ行っている。
とはいえ、この世に絶対ということは無く、なか難しいものである。
だからこそ、子供達が病気などに侵されることなく、元気で生きていることがマドロールには嬉しかった。
(ヴィー様も幼いころから身体が強い方だったと聞くし、その遺伝かしら。私もそこまで病気をすることもなかったしなぁ。元気な体に産んでくださったお母様たちに感謝だわ!!)
マドロールはそんなことを考えてならない。
「ねぇ、ヴィー様は子供達はどういった大人になると思いますか?」
「分からない」
「ふふっ、そうですわよね。確かに想像しか出来ませんもの。それにしてもヴィー様ってこういう時にはっきりと分からないっていうのも、素直で、良いですわよねぇ。ヴィー様、あまり妄想とかしないタイプなのも解釈一致」
彼女はそう言いながら、だらしない表情をしている。
ヴィツィオは妄想ばかりしているマドロールとは違い、そういったことはあまりしない。想像豊かな妻と、現実主義者の夫で、かなり正反対である。
「なんにしても、幸せになってくれたらいいなってそれしか思いませんわ。いずれ反抗期が来たりもするのかしら。子供の反抗期は存在するものだとは知っていますけれど、可愛い子供達に冷たい態度をされたらと思うと、悲しくはなりますけれど……!!」
マドロールは前世では子持ちではなかったので、子供を持つのは今世が初めてである。可愛くて仕方がない、愛しい夫との子供達から冷たくされるのは正直言って想像しただけでも辛い。
「大丈夫だ。子供達がマドロールにそんな態度をしたら許さない」
「もう、ヴィー様ってば過激なんだから。もし仮に反抗期が訪れたとしても、酷い扱いをしたら駄目ですからね?」
マドロールはそう言いながら、宥めるようにヴィツィオを見つめる。
ヴィツィオはいつも過激であり、過保護である。妻を愛してやまない彼はいつも暴走しがちだ。
子供達のことも可愛がってはいるものの、一番大切に思っているのはマドロールなのだろう。
そういうところも、ヴィツィオらしい。
マドロールは反抗期のことを心配はしているものの、ヴィツィオがマドロールを大切にするように散々言い聞かせているのでそれがおこる確率は低いだろう。
今年九歳になるヴィダディは、父親は冗談などを言わないことを知っている。マドロールを心から悲しませることがあれば、きっと父親は子供相手でもそれはもう容赦ないだろうと分かっている。
そして弟妹達にもきちんと、くれぐれも母親を大切にするようにと言い聞かせていた。
兄としては、弟妹達が父親の地雷を踏まないように言い聞かせるのは重要だと思っているようだ。
「ああ」
「もう、本当に分かってます? ヴィー様、子供達がどういう選択をしようとも、親である私たちは応援しましょうね。もちろん、ちょっと大変な方向に舵を切ろうとしていたら助言はしなければならないですけれど。ああ、でも親子喧嘩というのを経験してもそれはそれで楽しいかもしれないとは思いますけれど!!」
マドロールがそう言ってにこにこ笑うと、その様子をヴィツィオは穏やかな表情で見つめる。
皇妃は子供達の未来を考えるだけで、楽しくて仕方がないのであった。




