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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「マドロール……早く、目を覚ませ」―皇妃、記憶喪失編③―

「陛下、皇妃様に直接魔法を打ちこんだ者は捕えています。皇妃様は……?」

「まだ、目覚めていない」



 皇妃であるマドロールが、魔法を受けて倒れた。城内はばたついていた。皇帝であるヴィツィオに魔法が向けられたのは、彼に恨みを持つ者の仕業だった。

 『暴君皇帝』はこれまでも容赦なく、皇帝として決断を下し続けていた。

 恨みを持つ者もそれなりの数は居る。それでいてヴィツィオの国の治め方に対して意見を従っている者も居なくはない。




 だからこそ、溺愛されている皇妃も危険に陥る可能性は十分にあった。それもあり、常に護衛がついていた。それでも――絶対ではないのだ。



 本来ならならずものが入ってくるはずのないエリアまで、魔法使いが入ってくることを許してしまった。その結果、皇妃は皇帝を守るために飛び出してしまったのだ。

 ヴィツィオの表情は、険しい。

 それでいて愛しい妻が目を覚まさないことが心配で仕方がないのか、恐ろしいオーラを醸し出している。




 周りにいる文官や騎士達は、そんなヴィツィオの様子に緊迫した雰囲気である。




 愛する妻がにこにことしながら笑っていると、『暴君皇帝』の雰囲気もがらりと変わる。周りにいる者達はこれまでの皇帝の姿が珍しかったのだとそう実感していた。




 皇妃と出会ったからこそ、ヴィツィオは家族思いの夫になっていた。その溺愛している姿は帝国中に広められている。その姿に慣れている者達は、すっかり皇帝の恐ろしさを忘れてしまったりしていた。

 それはあくまで皇妃と出会ったからに他ならないのだ。




 ――今の険しい表情は、皇妃に出会わなかった彼の姿である。

 きっと別の女性を妻に迎えていれば、皇帝としては立派でも夫としては冷たい人間として噂になっていたことだろう。




(マドロール……早く、目を覚ませ)




 ただそれだけを思っている皇帝は、眠ったままの皇妃をじっと見つめている。



 彼は皇妃が倒れてから、常にその傍に居る。片時も傍から離れないとでも言う風に傍で書類仕事をこなしていた。

 基本的に酔っぱらった彼女の面倒も一人で見ようとするような独占欲の強い男である。




 今回も眠っている皇妃のことを他の者に見せたくないらしい。

 ヴィツィオはマドロールの眠っている姿を見るのも好きだ。いつも無防備に、ヴィツィオのことを信じ切って穏やかな表情で目を瞑る姿を見ると、彼は思わず笑みを零してしまう。



 ただだからといって、ずっと眠ったままの彼女を見たいわけではない。寧ろにこにこと微笑みながら、真っすぐな目で無邪気に笑いかける姿を見たいのだ。




 視線の先のマドロールの顔色は悪くはない。

 寧ろ医者や魔法使いたちに見てもらった限りは、身体に異常はなさそうだということは報告されている。魔法を受けたというのに傷一つない身体。



 ヴィツィオは、マドロールが傷つくことが無くて良かったとほっとはしている。これで自分の目の前でマドロールが命を落とすなどということが起こればヴィツィオは耐えられなかっただろう。

 だけれども、身体に傷がないにも変わらず目が覚まさないということは目に見えないところで何か起こっているのかもしれない。そう思うと、ヴィツィオは心配で仕方がなかった。



 すぐにでもマドロールの元気な姿が見たくて、あまり睡眠もとらずに妻の様子を見ている。




「母上……」

「お母様、まだ、おきたいの?」

「お母様、大丈夫……?」



 子供達も心配そうに時折姿を現す。まだ三歳の双子皇子たちも侍女につれられて顔を出しては目を覚まさない母親に不安そうな表情である。

 ヴィツィオは子供達を安心させるように、「そのうち起きるだろう。心配するな」とそう口にしていた。




 マドロールが目覚めなくなってからというものの、常に厳しい表情の皇帝も子供達の前ではそういう気遣いは出来るらしい。



 その姿をマドロールが見れば、「ヴィー様が子供達のためにとこんな様子を見せているなんて素敵だわ」と目を輝かせたことだろう。寧ろ目が覚めた時に「そんなヴィー様の姿を見逃すなんてっ」とショックを受けること間違いなしである。マドロールはそんな女性だ。

 それからしばらくの間、マドロールは目を覚まさなかった。




 マドロールの眠り続ける時間が長くなればなるほど……、ヴィツィオの機嫌は日に日に悪くなっていた。




 城内で過ごす誰もが、早くマドロールが目を覚ますことを望んでいた。

 皇妃が目を覚ませば、この状況は好転するだろうと彼らは知っているのだ。

 そしてその時はやってきた。ただし、誰にとっても予想外の結果だった。



 マドロールが目を覚ました時、傍にはヴィツィオの姿があった。

 起き上がると同時に、虚ろな様子で視線を彷徨わせるマドロール。



 ヴィツィオは、マドロールが起き上がったことにほっとしたように息を吐く。ただし見ていると、何処か普段と様子が違うことは見て取れた。




 目が合った。

 マドロールはヴィツィオと目が合うと、目を大きく見開いた。ヴィツィオは何を驚くことがあるのだろうかと疑問に思った。


「マドロール」


 ヴィツィオが声をかけると、びくりっと身体を震わせる。



 そして次の瞬間には「えええええええええええぇえええ?」と大きな声をあげたのだった。


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