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第17話 乾杯

「タイキ……」


 リリスがしんみりと見つめる。共に戦ってきた彼女もまた、向こう見ずにも勇ましく魔物に立ち向かう、そんなタイキの事が以前より少し分かった気がした。


「はははなるほど、それは要するに死んでも男の子ってことか? いでっ!?」


 閃いたように指を鳴らしアジバが感想を言うも、隣にいたリリスがその職員の脇腹を、手持ちの杖の底で小突いた。


「高校生の経験していい世界観じゃないだろそれ! なんてやつだよタイキ! やっぱり只者じゃねぇなお前はッ! はははは!!」


 万年AAA級であり、タイキの先輩冒険者と自負するハヤトが馬鹿騒ぎしながら叫ぶ。やはり期待のルーキー、タイキ・フジはハヤトの思っていた通り只者ではなかったのだ。


「これがタイキ・フジか」


 遠目に見届けていた支部長のミタライにも見えた。タイキ・フジ──彼という人物がいかなる正義を抱え、その不屈の強さと剣を振り翳し、この先いかなる道を行こうとするのかを。


 ギラつき熱く輝く赤の瞳、爽やかな青髪の青年に、彼女は今は亡き友の姿を重ね合わせる。

 口角を僅かに上げた。




 そんなほとんどの者がしんみりとした中、大袈裟な拍手を送る冒険者が一人。


「いやはや素晴らしい! まさに君は大器、いやタイキ・フジだ! いやぁーこれはこれは涙なしには聞いていられない、しかし前向きな若者な姿というのは──」


「ちょ、ちょっと!? あっあんたね、そういうのっ! こっちまで嘘っぽく見えるからやめなさいよ! しかも、全然涙も流してないじゃないのよ……!」


 群衆を掻き分け、愉快な拍手をしながら前に行進してきたアキトを、リリスは慌てたように杖を横にし通せんぼした。


 なんとも空々しい言動を放ちながら、勝手に心情代弁のような事をされては困るのだ。芝居がかったやかましい拍手で、せっかくのしんみりとしていた余韻も台無しであった。


「ははは、それは失敬した。どうも最近涙腺の方が詰まっていてね。揺れ動かされたのは事実だが、少し仰々しすぎたか? あ──しかしタイキ、肝心の乾杯の音頭がまだのように見えるが、焦らしているのかい?」


 リリスから杖を華麗に奪い、それをマイク代わりにし懲りずに語り出したアキトは、曲がった杖の先を向け壇上にいる青年へと愉快に問う。


「そうだそうだ! お兄さんたちに飲まさない気か!」

「ぅぐっタイキぃ、なんてすごい子なのよ……」

「もう飲んでるやつもいるぜ?」

「お涙頂戴の回想はもうその辺でいいぞータイキーはははは」

「早くこのしょっぱい酒を飲ませろーー」

「リリス女子はジュースか?」

「女子扱いはいいからっ! タイキっ、早くここの連中どうにかしてよねっ!」


 団員たちはもう待ちきれないようだ。コップ、グラス、盃を片手に皆が壇上にいる青髪の彼のことを様々な表情で見つめている。


 タイキ・フジはそこから皆を見渡す。もしかすると彼が見たかったのは、こんな光景だったのかもしれない。


「あははは。分かったアキトさん、リリス。──といったところで、えっと、じゃぁ……ise会シロツメ支部っ、乾杯っ!!!」


 最後にリリスに後押しされて、タイキはようやくグラスを天へと掲げた。


 皆が、同じポーズを取る。喝采と隣り合うグラスを合わせる音が鳴る。威勢のいい乾杯の合図と共に騒ぎ出したら、冒険者たちはもう止まらない。

 夜狩りの成功と帰還を祝う──白い切り株の上のパーティーは、まだ始まったばかりだ。

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