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血統 ー蹄の記憶ー  作者: あいまいもこ
幻の馬

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54/61

18_続く物語

だが――

物語は、そこで終わらない。


終わったのは、一頭の命であって、血ではなかった。

トキノミノルが消えたあとも、その血は、静かに残り続ける。


表舞台ではない。歓声の中心でもない。


だが確実に、どこかで繋がっている。

全姉――ダーリング。

彼女の血は、途切れなかった。


一度、歴史の奥へ沈む。


誰もがトキノミノルの“幻”を語る中で、

その血統は、目立つことなく、受け継がれていく。


だが、血というものは不思議なものだ。


消えたように見えて、

ある日、突然――


形を持って現れる。


時代は進む。


競馬は変わる。


戦後の混乱は遠ざかり、

新しいスターたちが生まれていく。


そして現れる。


グリーングラス。


TTG。


時代を象徴する三強の一角。


その一頭。


力強く、しぶとく、どこまでも諦めない走り。


その奥底に流れているものを、

誰もが意識していたわけではない。


だが確かにそこにあった。


トキノミノルへと繋がる血。


あの、異様なまでの勝負根性。

前へ出ようとする意思。


それは形を変えながらも、

消えてはいなかった。


そしてさらに、時代は巡る。


二十世紀の終わり。


再び、「三強」という言葉が語られる。


その中の一頭――


グラスワンダー。


異国の血を持ちながら、

日本の競馬場で圧倒的な存在感を示した馬。


その名に、「グラス」を持つ。


偶然か、必然か。


血は、繋がらなかったが、意思を引き継ぎ、

再び表舞台へと姿を現す。


その走りは、豪快で、力強く、

そしてどこか、懐かしさを感じさせるものだった。


まるで――


かつての誰かが、そこにいるかのように。

トキノミノルは、短かった。

あまりにも、短すぎた。


だが、その一瞬は、あまりにも濃かった。

だからこそ、その影響は消えない。


血として。

記憶として。

物語として。


受け継がれていく。


人は言う。


名馬は、ただ勝つだけでは足りない。


何かを残すことができて、初めて――

本当の意味で「名馬」になるのだと。


トキノミノルは、確かに残した。


勝利以上のものを。


命以上のものを。


そしてそれは、

ダーリングを経て、

グリーングラスへ、

さらにその先へと繋がっていく。


バトンは、渡された。


見えない形で。

確かな重みを持って。


だから――


トキノミノルは、終わっていない。


あのダービーの直線で止まったまま、

今も走り続けている。


血の中で。

記憶の中で。


そして、競馬という物語そのものの中で。

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