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ダンジョンはお好きですか?〜祝福され呪われた俺達は迷宮を彷徨う〜  作者:


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上層へ行けますか?

思っていたより、ストーリーの進行が緩やかになってます。

 何かがおかしい。


 上層へと行けそうな下り坂を進む事、2時間。

 僕達はまだ坂の途中にいた。


 見える範囲に開けた場所はまだ見えない。


 皆もそう思っているのか、表情には若干の焦りが見てとれた。


 ダンジョンの壁に陰になっていて休めそうな窪みを見つけた所で、リーダーの佐藤くんが一旦休憩しようとみんなに提案する。


「静寂さん、休憩しよう」

OK(オッケー)


 少し先を進み皆から離れていた静寂さんに佐藤くんが声をかけている間に、僕は鞄から飲み物を出して配っていく。


「「「ふー」」」


 静寂さんと木嶋くんとミリアさんは、飲み物を飲んで一息つく。


「まだ、上層じゃないのか」


 佐藤くんは飲み物を片手に、ダンジョンの壁を触っていた。


 自分達が今どの層にいるか。

 その判断の一つとして、ダンジョンの壁で解る。だからだろう。


 浅層は土壁。

 上層は土壁に岩が混じる。


「濃く見えた魔素も、魔素溜まりのせいだったのかもね」

「その可能性は全然ある、か。大きい道だからあんまり気にしてなかったけど。坂は洞窟状だし、まぁ、あり得る話だよな」

「この先が行き止まりで上層のフロアになっていなかったら、きっとそうなんでしょう」


 皆の議論に、僕もそう思えた。


 浅層でもどこでも、魔素が濃くなる現象。

 その一つとしてあるのが魔素溜まり。


 魔素は滞留して溜まれば、蓄積されて濃くなっていく。


 下の階層に降りていく程に魔素は濃くなると、強い魔物が現れたり数が増えると、そう教えられている。


 魔素は、魔物の栄養の様なモノらしい。


 坂に来てからは魔物が見当たっていないから、上層かどうかを魔物の種類や強さで判断するのは難しい。


 魔物が見当たらないのは、この先が行き止まりなら説明がつく。


 魔物が、僕達を追い越していったのは見ていない。

 なら。僕等より先に魔物が坂を進んでいる場合以外には、此処に魔物はいない事になる。


 だからだ。


 そして、先に魔物がいる可能性は低いだろう。


 魔素が溜まり通常より濃くなっていれば、浅層の魔物だって上層と勘違いして近づきはしない。

 栄養がいつもよりあっても、行きたくても、上層には自分より強い魔物が棲んでいるのだから。

 警戒するのは当然だ。


 行き止まりになっている場所ではよくある事らしいから、皆が予想する魔素溜まり・行き止まりの可能性はかなり高いだろう。


「その事も考慮して。どうする?まだ下ってみる?魔物との戦闘は避けられなくなるけど、上層まで行ける有名な道まで戻るのも、ありだと思うよ」


 佐藤くんの言葉に、ミリアさんが挙手をした。


「本で読んだのですが。下層から深層に行く道で、3時間以上かかったっていう話もあるみたいですよ」

「そうか……」


 顎に手を添え、佐藤くんは考える。


 木嶋くんは「リーダーに任せる」と伝え。

 ミリアさんと静寂さんは何も言わず。

 僕も「リーダーに任せるよ」とだけ、伝えた。


「解った。じゃあ、後1時間だけ下ってみよう。変化が何も無かったら、またこの場所に戻ってきてここで野営する。今日の探索はそれまで。先に何かがあったら、またその時には相談。それでどうかな?」

OK(オッケー)

「おう」

「解りました」

「うん」


 みんな、その答えに賛同した。


 そこからは各々10分程自由に過ごし。

 再び、坂を下り始めていく。


「できれば、一泊程度で決めたいところだったけど」


 ふと。佐藤くんの口から、考えていたであろう言葉が漏れてきた。

 考えていた予定が少し難しくなってきたので、今後どうするかを考え直していたんだろう。


「悪かったよ、リーダー。俺が変な道を薦めちまったからだ。すまない」

「いや、気にしないで。勝手にそう思ってただけだから。試験の期限も特にはないし、担当の人に止められるまでは続けられるから」

「私はキャンプをするのが好きなので、三泊くらいでも構いませんよ。せっかく組んだチームなんだし、みんなと仲良くなりたいですから。だから、ちょうど良いです」

「ハハッ。そう言ってくれて、嬉しいよ」


 重くなりそうだった雰囲気は、三人の会話で消えていく。


「僕も、みんなともっと仲良くなりたいから。気にしないで」

「ありがとう」


 静寂さんは先に進み離れていたから会話に参加できなかったけれど、話は聞こえていた様で右手の親指を立てて視線だけを送っていた。


 時間が経つにつれ、雑談が徐々に増えてくる。


 此処はどうやら魔素溜まり、行き止まり。

 魔物も出ない。


 その気持ちが強くなり、全員の気を緩めていた。


 休憩してから30分程歩いた。


 その時だった。


「ねぇ」


 先を進んでいた静寂さんが、立ち止まって僕等を待っていた。


「此処がゴールみたい」


 そこは一面、ただの壁。

 やっぱり行き止まりだった。


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