表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンはお好きですか?〜祝福され呪われた俺達は迷宮を彷徨う〜  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/14

迷宮探索者になれますか?

「それでは皆さん、お静かに」


 小学校の体育館。壇上に備え付けられた演台を前にした校長先生の低い声が、マイクを通してスピーカーから響いた。

 賑やかに騒ぐ生徒達へと、声をかけたのだ。


 みんなが騒いでいたのも無理はない。

 ドキドキとワクワクで、興奮しているせいだ。


 僕もみんなと同じ気持ちだ。


 校長先生から声がかかった事で、体育館の中は一気に静かになる。

 騒ぎの原因となるイベントが、楽しみなせいだろう。

 早く早くという気持ちから、みんなが一丸となっている。

 いつもよりも静かになるのが早い。


 全員が、今か今かと校長先生を見つめている。


「皆さんもいよいよ、5年生になりました。全員が10歳を迎え、スキルという特殊な能力(ちから)の種がしっかりと芽吹き、鑑定の宝玉の欠片というアイテム(道具)で、それがどんな能力なのか、判別がしっかりとできる年齢になりました」


 校長先生の話はいつもスローペースだ。

 それが今は、本当にもどかしい。


「中には溢れ出る才能を持ち、既に自分の能力が何なのか、解っている生徒もいると思います。ですが、それでも。曖昧なままではなく、自身のスキルをしっかりと調べ、把握し、皆さんの今後の進路の参考や道標として、しっかりと生かしていただけたらと思います」


 いよいよかな!?


「これから解る―――」


 まだ、かぁ。


「スキルで。皆さんの進む方向は、大まかではありますが、決まってしまう可能性が高いと思います。ですが、あくまでも。それらは参考や道標であって、必ずそれを活かした道を進まないといけない、そんなものでは断じてありません。その事を、忘れないでいてください」


 校長先生がひと呼吸入れる。


「皆さんが将来、道に迷わぬ様、祈るばかりです」


 すると、壇上の下にいた教頭先生が声を発した。


「それでは、皆さん。今から担任の先生の前に列を作ってもらいます。呼ばれたらパーティションの中に入り、鑑定のアイテムを受取って使用。その後、結果の記録をとります。終わったら各自、速やかに教室に戻って自習していてください」

「「「「「「はぁい!」」」」」」


 教頭先生が言い終わったのを合図に、みんな我先にと担任の先生の前へと移動して列を作る。


 僕も急いで並んだけれど、場所は良くも悪くもない。列の中間辺りだった。


「なあ、カケル」

「あっ!ショウちゃん。何?」


 僕の直ぐ後ろには、名前に“翔”という同じ漢字をもつ友達がいつの間にかいた。


 僕の名前はカケル。進藤 翔。

 友達の名前はショウ。空知 翔。


 僕も、ショウちゃんも、自分のスキルが何なのか解っていない者同士だ。


「お前、どんなスキルが良い?俺は絶対、ダンジョン探索に行けるヤツが良いんだよな!」

「僕も、同じかな」

「何だよ!お前もかよ!」

「やっぱり迷宮探索者って、カッコイイよね」


 お互い笑顔で話をする。


 ショウちゃんも興奮している様子で、ずっと笑顔だ。

 自分もきっと同じ顔をしているんだと思う。


「だよなー!それに魔物の素材は凄く高く売れるみたいだから、お金持ちにだってなれるんだぜ!」

「僕は、お金持ちにはなれなくても良いかな」

「なんでだよー!好きなお菓子も、ゲームも玩具も、買い放題になるんだぜ!お小遣いじゃなくて自分のお金だから、使いたい放題だ!」

「僕は珍しいモノとか、色々なモノを見つけて、誰かの役に立ったりして……みんなの英雄(ヒーロー)になりたい」

「それも確かに良いな!カッコイイ!」

「だよね!」


 ショウちゃんとの話は尽きず、おかげで自分の順番はあっという間に回ってきた気がした。


「次の人、入ってきてー」


 パーティションの向こうから、担任の先生の声が聞こえてくる。


「じゃあ、ショウちゃん。先に行ってくるね」

「おう!また後で、教室でな。お互い良いスキルだったら、チーム(仲間)になろうな!」

「うん!」


 僕はテンションMAXで、ショウちゃんに応えた。


 パーティションを越えて、先生に渡された鑑定の宝玉の欠片というアイテムを飲み込む。


 心臓の鼓動が解る。

 ドキドキしている自分の前に、何もない空中に、パソコンのウィンドウ画面に似た半透明の画面が表示された。


[スキル【強化】=自身の力を自身、又は触れているモノへと付与する。効果・1分限定。再使用・1分経過後]


「先生、これって……」

「能力アップ系のスキルね。建築のお仕事とか、倉庫や宅配とか、色々な事に活かせ―――」

「迷宮に行けるやつ!?ダンジョンで探索できる!?」


 まだ先生が喋っていたけれど、聞きたい事は一つだった。


「ま、まぁ。いけない事はない。と、思う……けど」

「やったぁー!」


 その言葉に、拳を握りしめ両手を上げて喜ぶ。


「け、けどね。色々と制限があるみたいだから、しっかりとスキルの練習をしてみないと。まだ解らないわよ」

「はい!ちゃんと勉強もして、身体も鍛えて、頑張って迷宮探索者になります!」

「そ、そうね。頑張るのは良い事だわ。でもね、他にだって、スキルを活かせる良い職業はたくさん―――」

「じゃあ終わったから、教室に戻りまぁす」


 直ぐ後にショウちゃんも控えているし、早く交替しないとだよね。


 先生に迷宮探索者になれると聞けた事が、凄く嬉しかった。


 足取り軽やかに教室へと戻る。

 けれど、それは束の間の喜びになった。


「俺、ダンジョンには行けない」


 生産系のスキルだったから、と。

 教室に戻ってきたショウちゃんのスキルが【鍛冶】だと教えてもらった時、僕は何も言えなかった。


  スキルの鑑定が済んでからの小学校生活は、普段と余り変化はなく。スキルに関しての勉強と練習時間が授業に追加された程度。

 だからみんなも、僕も、スキルに関する熱や勢いが落ち着くのは早かった。


 それが当たり前になっていったから。


 あの日以来、ショウちゃんとダンジョンの話はしなくなった。

 仲は良いままだったけど、お互いに気を使っている感じ。


 僕は他の子達と、迷宮探索者になるにはどうしたら良いのかと話をする。

 ショウちゃんも、生産系の職業の子達と何かを話していた。


 お互いのスキルが距離を生んで、少しずつ離れていった。


 6年生になってからはクラス替えで別々になって、卒業式で擦れ違って軽く「久しぶり」「またな」と声を掛け合う程度の関係になっていた。


 そこから先は別々の道に進んだから、会う事は滅多にないだろう。


 ショウちゃんは【鍛冶】のスキルを活かせる生産系の中学校へ進み、僕は僕で迷宮探索者の訓練学校へ。


 ショウちゃんとの関係は、小学校で終わってしまったんだと思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ