祝福を信じますか?
「うぐぅ……」
お腹が痛い。
熱も出ているだろう。
テントの中で身体を折り曲げて横になり、お腹を押さえる。
吐き気までは無いけれど、体調が良くない。
やっぱり、原因は魔物の肉を食べたからだろう。
思いつくものとしては、それくらいしか変な事はしていない。
美味しいからと食べたけれど。
「うぅ……」
強い魔素を体内に取り込むと、身体が対応できず体調を崩す。
転移させられた時も、濃い魔素のせいで体調を崩した。
それには慣れてきたみたいだけれど。
肉には魔素が蓄積されていたのか、より濃くなっていたのかもしれない。
一応、鞄から腹痛や体調不良に効きそうな薬は飲んだけれど。
魔素にまで効果があるのかは解らない。
スキルの【強化】を使用すると、少し楽になる。
僕のスキルは身体能力を強くするだけじゃなく、免疫力にも効果があるのかもしれない。
そういえば、あれは何だったんだろう。
転移してきた時に表示された、[祝福]と[呪い]について思い出す。
お腹を押さえる以外今は何もする事ができないので、考えてみる。
[称号を獲得しました。【奈落を識る者】]
称号。
取得の条件は解らないけれど、称号とは特殊な事を成し遂げた人が希に取得するものだったはず。
僕が称号を取得したのは文面から察するに、奈落層に来たからだろう。
[祝福されました。【限定解除】]
祝福は初めて聞くし、初めて知った。
祝福されたという事は、良い事である可能性が高いはず。
自身に何らかのプラスになる、何かを得たという事だろう。
祝福の文面にあった【限定解除】。
あれは、新しいスキルなのかもしれない。
何を【限定解除】したのだろう。
僕が限定されていたもの。
「あっ!」
ひょっとしたら、スキル【強化】にあった効果の事かもしれない。
僕は、自身のスキルを思い出す。
[スキル【強化】=自身の力を自身、又は触れているモノへと付与する。効果・1分限定。再使用・1分経過後]
僕が限定されているもので思いつくものは、これくらいだ。
これが解除されている可能性が、一番高い。
もし効果時間の1分限定が解除されていたとしたら、どうなるんだ?
効果は切れていないくても、【強化】ができる。
転移されてから此処まで、【強化】が使えなくなった事はなかった。
ひょっとしたら。
効果は【強化】をする度に、上乗せされていく?のかも。
それが当たっていたとしたら。
奈落層の魔素に身体が早く慣れていった事、角兎の魔物を倒せた事や攻撃で死ななかった事に、説明がつくと思う。
もしそうなら、僕は1分経つ毎に強くなる。
無限に強くなれる。
ダンジョンからの脱出に、光明が差した気がした。
心が軽くなる。
次いで、考える。
呪いの事を。
[呪われました。【愚者の行進】]
呪い。
これも初めて聞くし、初めて知った。
祝福とは逆に、きっと僕に何かしらのマイナスの効果を齎しているはず。
スキルには何かあった様には思えない。
実際使えているし、効果が消えたりもしていない。
それなら、スキルとは全く別の効果なのかも。
愚者。
愚か者。
行進。
暫く考えても、何も解らない。
鑑定の宝玉が欲しい。
呪いは勿論として祝福も、本当の事は解らない。
鑑定の宝玉は探索者ギルドや限られた場所にしかないから、数が少ない。
手に入れるのは難しい。
今の自分では、到底無理な話だろう。
ダンジョンで魔物を倒してドロップするか、落ちている物を見つけるしかない。
呪いについては解らないので、早々に考える事を止める。
腹痛は横になって【強化】を繰り返していたら、治まってきた。
薬が効いたのかもしれない。
動ける様になった僕は立ち上がり、テントから出て石を拾う。
祝福の効果が合っているかを確認する為に、拾った石を思いきり壁に投げつけてみた。
カンッ。
ダンジョンの壁はかなり堅い。
石も同じ材質だけど、石は壁に弾かれ床に転がった。
今度は壁を、思いきり殴ってみる。
ダンッ。
何も変化はない。
ビクともしない。
本当に予想が当たっているかどうかは、これでは解らない。
僕は考える。
これは賭けだ。
動ける内に、食料がまだある内に、此処を出て脱出の道を探すか。
祝福を信じて。寝る間も惜しんで此処で【強化】をギリギリまで続け、少しでも強くなってから此処を出て脱出の道を目指すか。
深層に上がる道が見つかるかは別として。
どちらも、死の確率は同じだと思う。
食料があっても、魔物と出会って死ぬか。
魔物が倒せても、食料が無くて死ぬか。
そもそも祝福の効果が違っていたら、後者の考えは成り立ちもしない。
考える。
僕は祝福を信じて、後者を選ぶ事にした。




