表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変異世界の異邦人《インターステラー》  作者: IK_N
第十三幕『刀使ノ巫女』編
PR
88/121

088.アミーゴタコスのうた

 AmigoTacosの店内に入り席に着いた暁たちにボスはこう切り出した。


「緑が丘を占拠しているカスどもを皆殺しにしてほしい」

「いきなり物騒だな。俺らみたいな子供に頼むことか?」

「お前フリークスだろ。前に新聞で見たことがある。世界で唯一の男のフリークスだったか」

「おお、この通りに入ってから俺の顔を知っている奴にはじめて会った。その通りだ」


 フリークスの顔や名前を知っている市民は意外と少ない。とくに広報もしていないからだ。この通りではそれがさらに顕著に現れていた。少なくともフリークスだと知っていれば、無謀にも喧嘩を売ってくる奴らは1人もいなかっただろう。


「それで、その皆殺しにしたい奴らは一体何なんだ」

「元々は俺の下にいた奴らなんだが、俺のやり方が気に入らないと言って出て行きやがったのさ」

「なんだ? ショバ代で揉めたりしたのか?」

「最近俺がやりはじめたビジネスが気に入らないんだとさ。ガキを高く買ってくれる上客が見つかったから通りのガキを騙したり攫ったりして売っぱらったが、それが我慢できないと青筋立てて出ていきやがった」


 暁は呆れてものが言えなくなった。


「出ていった奴らは俺に渡さないために緑が丘にガキを囲い込みやがったんだ。だから皆殺しにしてくれ。ガキは殺すなよ」

「ビックリするくらい民度が低いな。生きてて疲れないか?」

「ねー暁。こんな奴らの話聞く必要ないって。ていうかこいつらここで……」

「おっと」


 何かを言いかけたロジェに対して、暁は口をつぐむようにジェスチャーする。


「皆殺しにしたらゲーム探しを手伝ってくれるってわけか」

「ああそうだ。やってくれるよな?」


 暁は少しだけ考えるそぶりを見せた。


「……よしその話に乗ろう。善は急げだ。行こうかロジェちゃん」


 どう考えても善ではないが、暁はロジェに声をかけてその場から立ち去ろうとする。だが、ボスはそれに待ったをかけた。


「いや待て、そのガキは置いてけ」

「……なに?」


 今までは幾分か柔和な態度を取っていた暁が、はじめて険を見せた。


「当然だろ? お前が口先だけで逃げちまうかもしれないし、あいつらの仲間になっても困る」

「……それでロジェちゃんを人質に?」

「ああそうだ」


 しばらく、暁とボスは黙って睨み合っていた。そして、暁はロジェのほうを見て、ニコッと笑う。


「正直適当にあしらってこいつらとはおさらばしようと思っていたんだが、堪忍袋の緒が切れた。こいつらはここでぶちのめすことにする」

「いいんじゃない? 僕も協力するよ~」


 2人の会話を聞いていた男たちは途端に笑い出した。


「丘の上で能天気に暮らしてるお前たちは知らないかもしれないが、俺たちはフリークスだからって甘やかす奴らとは違うぞ」

「ほー。子供を甘やかさないかっこいい大人はどんなことをするんだ?」


 男たちは相変わらずへらへらと笑い、ボスとは別のひげ面がヤジを飛ばしてくる。


「知っちまったら夜に一人でおトイレいけなくなるぞ~。お母さんについていってもらえよ~!」


 そこでまた大笑い。なるほどなるほど、と暁はうなずいた。


「それが煽りになると思っているあたり、母親からの愛情に飢えてるんだな。やっぱり親がいない奴はカスに育つんだなぁ。かわいそ」


 そこでピタリと笑いが止まった。男たちの冷たい視線が暁に集まる。静かに、そして手慣れた手つきで男たちは銃を取り出し、暁に向けた。その銃の中にはいつぞや防衛隊が紛失したM16A4の姿もある。


「おお怖い怖い。今日はお母さんに連れ添ってもらってトイレに行かなきゃな。でも大丈夫か? セーフティがかかったままだぞ」

「かかってねぇよ。銃の事が分からねぇなら口を閉じてろ」

「なんだ。銃を向けられたら一度は言ってみたいセリフだったのに。これじゃ締まらないな」


 終始余裕ぶっている暁とは正反対に、男たちから重い空気が放たれる。スッと片手をあげて、部下に撃つ準備をさせる。だが、暁はそんなことは気にしない。


「だが、ちょっとだけその銃たちに親近感が湧いたよ」

「は?」

「俺に似てる。セーフティがかかってないところが」


 その言葉が終わると同時に、暁を包囲していた男たちは四方に吹っ飛んだ。突然のことに驚いた何人かがトリガーを引いてしまい、店の中には銃声が鳴り響く。そしてそれが収まった頃に立っていたのは暁とロジェだけだった。


「う、ううう……」


 ボスは足を押さえて呻いている。おそらく誰かの発射した弾が当たったのだろう。


「セーフティはかけといた方がよかったなボス」


 ボスはその皮肉に答える余裕はなさそうだった。一応病院棟にけが人の連絡を入れておいたが、実質治外法権のこの場所に来るかどうかはよくわからない。


「ちょっと寄り道したが、行こうかロジェちゃん」

「僕の出番なかった……」

「おっと悪かった。次やりあうときがあったらちゃんと出番を用意しとくよ」


 2人は会話しながらAmigoTacosから通りに出た。


「しかし、あいつらに探してもらうのは恒久的に不可能になったな」

「あんな奴らと協力して取り返しても気分悪いだけだしあれでよかったんだよ。それに、ゲームの場所も見当ついたし」

「本当かロジェちゃん?」

「うん。ゲームは子供がやるもの、そして緑が丘にはあのボスを見限った人が子供を囲い込んでる。つまり、ゲームは緑が丘にある!」

「……なるほど!」


 だいぶ穴のある論理展開ではあるが、むやみに探すよりも可能性があると感じて暁はロジェの推論を全肯定した。


「さあ、今度こそ本当に善は急げだ」

「うん!」


 そして2人は意気揚々と緑が丘へ……神社の名前が書かれた古びたゲートがあるその場所へ向かうのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ