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変異世界の異邦人《インターステラー》  作者: IK_N
第四幕『ぷちぷり*ユーシィ』編
33/75

033.LOVEマシーン

 ひととおりやるべきことを話し合った後、セシルは《パニック・ルーム》を解除した。そこから、6人は言いたいことを言い合うフェーズに突入した。


「えーと、セシルさんだったよね」


 ベティがセシルに声をかける。


「防衛隊の皆さんにお礼言っておいてもらえる? 拘束されている間思った以上に良くしてくれて、いろいろありがたかったよ~。何も言わずに逃げちゃったからね」

「ええ、わかりました」

「それとゴメンね。『役立たずな能力』なんて言っちゃって。してやられたよ」

「……いいですよ。気にしてませんから。それより風早さんやコミューンにちょっかいを出してくるのは止めていただきたいんですが」

「いやー、私も組織の一構成員にすぎないからねぇ。約束はできないかな~」

「まあ、そうでしょうけど……」


 2人の会話の裏で、リコとロココも話していた。


「私をけちょんけちょんにするとか大きく出たわね? どうする今からやる?」

「や、やりませんよ! 私はあなたみたいに暇ではないので!」

「あっそ。まあ元気そうで良かったわ」

「なんですか? 『敵のことを心配できるほど私は余裕です』アピールですか!?」

「そんなとこ」

「ムキーーーーッ!」


 そして、暁とマーシャル。


「不思議な気分だ。会うのは2回目なのに、はじめて会ったように錯覚してしまう」

「そりゃこの姿で会うのがはじめてだからだろ」

「そうかもな。その姿が君の本当の姿だと思っていいのか?」

「さあ、どーだか」

「まあ、どちらでもいい。偽りの姿だとしても、その容姿を選択するということは相当センスがいい」

「……そーですか」

「この前はいきなりキスしようとして悪かった」

「べつにいいよ。仕事だし」

「マーシャルちゃんさえよければ、これからあの時の続きでも」

「キモっ!」


 しばらくしてその場は解散となり、決めた報告日までお互いに連絡しないよう取り決めた。そして、日は流れ金曜日。暁とセシルはパーティー出席のためにフェリーで館山コミューンに向かっていた。


「他のコミューンに向かうときはいつも船で?」

「はい。視界を遮るものがなく魔甲虫を見つけやすいですし、彼らは泳いでいるとき動きが鈍いので船でも十分逃げ切れるんです」

「確かに、お世辞にも泳ぎが得意そうには見えないなあいつら」


 予定通り2時間程度の航海でフェリーは館山に到着した。ご丁寧に迎えまで来ており、そこから車でホテルまで移動する。ホテルの部屋は2人別々、そのことを暁だけが残念がった。部屋に入る前に2人は今後の予定を話し合い、ホテルのレストランで昼食を終えた時点で時刻は14:00。


 コンコン、と暁の部屋のドアがノックされる。暁はドアを開けてその姿を確認し、セシルを招き入れた。


「ようこそ、俺の部屋へ」

「お邪魔します」

「しかし、ここのランチはすごかったな。まさかビュッフェスタイルを今の時代に見るとは」

「館山コミューンの富と食糧は上流階級に集中してますから、ああいうこともできるんです」

「横須賀コミューンでは食べられないものがたくさんあって、楽しませてもらったよ」

「はい。そうですね」

「それじゃあ、俺たちも俺たちで楽しもうか。パーティーまで時間がある」


 暁はそっとセシルの肩を抱く。


「……はい」


 セシルは顔を赤らめ、頷いた。そして、2人の姿はバスルームの中に消えていく。バスルームの扉を閉めた後、セシルは《パニック・ルーム》を発現させた。


「それじゃあ報告を聞こうか」


 暁はセシルの肩から手を離し、目の前の少女……ロココに声をかけた。ロココはセシルの来る前からバスルームにテレポートして待機していたのだ。部屋の中にカメラや盗聴器を仕掛けられていると面倒なのでその対策である。先ほどの暁とセシルのやり取りは当然演技だった。


「ヴィクス家の方ですけどはっきり言ってあまり怪しい所はありませんでしたよ。製造、流通、不動産、サービス業いろいろやってるみたいですけど、妙な噂は流れてきませんでした。せいぜいが悪口レベルです。ただ1つ……」

「何かあったのか?」

「花婿の父親でヴィクス家の当主、バルテリク・ヴィクスはときどき1人で部屋にこもって数十分過ごすことがあるんですが、そこで何をやっているかは分からなかったんですよね。彼の部屋には水道通ってないのでベティお姉さんの能力じゃムリですし、誰も寄せ付けないのでマーシャルお姉さんもムリ」

「そうか……しょうがない、パーティーの時に調べてみるか」

「方法があるんですか?」

「1つある。ちょっと準備が必要だが、ロココちゃんならすぐだ」

「はあ……?」


 ロココはなんだか分からない、という顔をしたが仕切りなおして報告を続けた。


「ヴィクス家とは関係ないんですが、花嫁の万灯火夢香さんのある噂を聞きましたよ」

「夢香さんの? どんな噂ですか?」

「夢香さんは、アルトゥール・ヴィクス以外に好きな人がいて、そのことで今回の結婚を拒否している、という噂です!」

「え!?」


 寝耳に水の報告に、セシルは驚きと同時に目を輝かせた。


「一体誰からその話を?」

「マーシャルお姉さんが侍女に化けていた時に聞いたらしいんですが、どうやら夢香さんがお熱になっているお相手まであたりがついてるみたいなんですよね」

「名前は?」

「レヴィン・ラクロワ。ラクロワ家の長男でまだ19なのに経営者として腕を振るっているとか。しかも……」


 ロココはもったい付けるように言葉をためる。


「なんと、そのレヴィン・ラクロワも夢香さんの事が好きなんじゃ? って噂もあるんですよ!」

「ええ!? ほんとですか? その話、もう少し詳しく……」


 ロココとセシルは元の目的を忘れて恋バナに夢中になっていた。その姿を微笑ましく暁は見つめる。と同時に、バルテリク・ヴィクスがこもっている部屋について考えを巡らせていた。仕掛けるなら、今日のパーティー以外にない。そして自分の能力であれば、どんなコソコソ話も隠すことは不可能なのだ。


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