#17 勇者
急展開中の急展開
レーシーを仲間に入れた勇者様御一行は森を抜け、王都へ向かい草原を進む。
歩は、幼いながらも強力な魔力を持った精霊を連れて歩けることはとても心強く思った。だが、その魔力が強力すぎるが為に苦しんでいるレーシーのことを考えると、戦わせたくないという気持ちも強かった。それに
(僕はロリコンじゃないのに)
サフィールが心配そうに尋ねる。
「大丈夫ですか? 歩? 具合が悪いのです?」
僕は慌てて首を振った。
「大丈夫大丈夫! ただね、レーシーのことを考えると胸が苦しくて」
「そ……それはもしかして恋の病!? 歩やっぱり本当はロリk」
「違あああああう!!!」
「勇者様うるさい! ちょうちょがにげちゃうから、しーっ!」
レーシーは蝶と戯れながら数m先を行っている。
「レーシーの魔力についてのことを言っていたんですね……びっくりした。私は遂に歩がレーシーをそういう目で見て胸が苦しいのかと……」
サフィールの発想は何次元か先を行っている。
「レーシーは幼いのに、僕らよりも遥かにすごい魔力を持っている。霊力と言った方が正しいのかも知れないけど……あれは一歩間違えれば命を奪ってしまう力だから……」
「分かります……私もあの子に戦わせたくない」
僕もサフィールも思いは一緒なのだ。
草原を抜け、王都へ着くと、辺りは騒然としていた。
「ゆ……勇者様! いや……歩! よくぞ……ご無事で!」
リールが向かってくる。
「リール!!! 何があった!?」
「アルフヘイムの王が政治を放棄して……攻め込んだ時には城はもぬけの殻だったみたいで……街の人々は絶望してしまっている……もう……王になろうと名乗り出る者もいない……」
リールは必死に説明してくれた。オーウェンは民衆を鎮めるため世界樹と不死鳥のところに行ったと言う。
「ど……どうしましょう!?」
サフィールの声は遠くで聞こえているような気がした。
はっと気が付いた。僕が今何をするべきか。
「表舞台に出る時が来たみたいだ」
「え……?」
やはりサフィールは気が付いてからは早いが気が付くまでが遅い。
「く……くれぐれも……お気を付けて……自分の立場はあまり公開しない方が……」
リールも心配そうに声をかけてくれたが、その後笑って言った。
「でも……あなたにマニュアルは……必要……ありませんね……?」
頷いて、僕は駆け出した。
ーーー
城門には人が集まっていた。息を吸って大きな声で、叫ぶ。
「皆さん!!!」
国全体が静まり返る。僕はコミュ障だから、あまり人前で話すことは得意ではないが、今回ばかりは弱音は吐かなかった。
「この世界は危機に陥っています! 王が政治を放棄した今、我々は一体誰に従えばいいのでしょう? 何を信じればいいのでしょう?
僕に、その役割を担わせてくれはしませんか!」
歓声とどよめきが混じった民衆の声が聞こえた。
「僕はこの世界に来てから本当に少ししか経っていないんです。僕は……人間です!!!」
噴水のある広場がどっと湧き、城門に人が更に集まりだした。人々が戸惑いを口にする。
「あの若者が、次の勇者様!?」
「これで世界は救われる!」
「本当にあんなのに任せて大丈夫なのか……?」
「……公開するなと……言ったのに……」
リールは笑いながら城を見上げた。
「僕は特別な魔力もなくて……最初はどうなることかと思いました。
お前は勇者だって言われてすぐに1歩を踏み出せる程勇気のある人間じゃないから……!
でもね僕には」
広場にいるであろう仲間達に届くように。
「信頼できる仲間ができた!
好きな場所はウェン爺の宿屋、
好きなことはみんなと将棋をすること、
この世界が好きになりました」
だから……!
「この世界を守る、勇者になっても、いいですか!?」
ーーー
宿屋を出る時、オーウェンはいなかった。城は僕達が住むにはもったいないくらい広くて豪華だった。
王の寝室「だった」ところからは世界樹がよく見えた。あそこでオーウェンは何をしているのだろう?
街の人々は僕のことを認めてくれたと思う。明日から僕は、何を思って生きていけばいいのだろうか?
読んでいる皆さんに歩の決意が伝われば作者も嬉しいです。
……多分サフィールは広場で号泣したと思いませんか?
今日は長めに書かせて頂きました。
文章の改行の構成とかが読みにくかったらごめんなさい(汗)
書いているこちらも意外と感情的になっていた回です。




