#13 危険
想像を絶する闇。絶望。死。
突然、強い揺れが襲った。
「うわっ!」
揺れと言うよりは、地面が落ちたという感覚。急いで宿屋へ駆け込む。受付机の上のものは見事に床に散乱し、窓ガラスは粉々に割れて飛び散っている。
「ウェン爺! ウェン爺!!」
何かの下敷きになっているのではないかと、必死に叫んだ。
「ここじゃ! 上じゃ!」
突然、上から声が降ってきた。上を向くと、大きく天井に穴が開き、そこからウェン爺が顔を覗かせている。
「ご無事で何よりです……!」
サフィールが呪文を唱えて僕の体にそっと触れる。たちまち僕とサフィールはふわりと宙に浮き、階上へと上がっていく。
「これは……一体何が起こったんです!?」
「見て分かるじゃろ」
ウェン爺が空を指す。視界いっぱいに広がる空には暗雲が渦巻き、雷鳴が轟く。
「もう当分の間……太陽は見られなくなるかも知れんな」
「闇が、動き出したんですね……」
ウェン爺は下を向いて唸る。
「遂に《光の大陸》で動き出した。魔王の手下共がな。最初に狙われるのはおそらく」
息を呑んだ。
「《知の森》……またの名を《神の信託の泉の森》」
サフィールがハッとして叫んだ。
「泉……ウンディーネ!?」
言われて、ようやっと気付いた。
「ウンディーネが危ない!!!」
僕は走り出した。ウェン爺が止めようとしている声を聞いても、体は言うことを聞かなかった。こんな僕が、役に立てるはずないのに。でも。
「仲間が……友達がピンチなんだ……!」
前にも言ったことあると思うけど、僕は何かとそつなくこなせる人間だ。街に来る時の道なんか覚えてる。
そして僕は《知の森》を進む。魔物の声が聞こえる。息を潜める。進む。ようやく辿り着いたその場所は、僕が転移して来た時とは少し違っていた。
「ウンディーネ!!!」
ウンディーネはこちらに背を向けて、魔王の手下と思われる輩に応戦していた。
「アユム!?」
振り向きざまに2体の魔物を倒す。辺りには僕とウンディーネ以外いなくなった。
「どうしてここへ来たの!? ここは今、王都よりも危険なのに!」
「君が危険だと思って!」
「私は水の精霊よ!? アユムには『まだ』主となる力が備わってないのに……」
「『まだ』ってどういうこと!?」
「それは……」
言いかけて、ウンディーネは動きを止めた。いや、止められた。
「随分と楽しい話をしているじゃないか……俺も入れてよ?」
「お前……誰だ」
そこに現れたのは、見るからに怪しい、真っ黒なフードを被った男。人間に良く似ているため、歩は動揺した。
「俺の名を聞いているのか……? 俺の名は……おっと、こういうのはあまり言わない方がいいってマスターが言ってたか……」
「マスター……?」
「俺の持ち主のことだよ! めちゃくちゃ強くて、かっけーんだぜ?」
「魔王のことか」
フードの男はニヤリと笑って言った。
「そういう呼び方……良くないと思うよ? 勘違いしてると困るから言うけど、今話の主導権を握ってるのは、こっちだからな?」
「ぎゃあああああ……っ!」
「ウンディーネ!!!」
いつの間にか、ウンディーネの体に斬りつけられたような痛々しい傷ができていた。
「ははははは! 嗚呼……滑稽だ」
「お前……」
「そこにただ突っ立ってるだけの坊や。その顔を見ていれば分かるよ? 君その剣、扱えないんだろう?」
忘れていた。僕は今ゲームの中にいる訳じゃない。これは生身の自分だ。剣やら魔法やらなんててんで扱えない。それなのに1人で飛び出して来た……愚かだ、僕は。
「でも……」
フードの男は下を向いた。泉の向こう側から少し僕に近付く。
「もう飽きた。この女……殺すよ?」
「!?」
歩とウンディーネが最大の危機です
その頃道具屋のリールは……
リール「あ……本がたくさん落ちた……」
(拾う)
リール「こんなところに……薬草が……」
(拾う)
リール「何故……縄が落ちている……?」
(拾う)
リール「この瓶……踏んでしまいそうだ……」
(拾う)
リール「お……落ちる……っ(焦)」




