7 二日目の朝
ピピピピピピ……
鳥が鳴くような音が聞こえ、カイゼリスは目が覚めた。
座椅子から起き上がり、辺りを見回す。
ここはミサキの家だ。
目が覚めても、レーマンに戻ってはいなかった。
服装も昨夜、ミサキから渡された服を着ている。
なぜこの世界に来たか分からないまま、2日目が始まった。
ピピピピピピ……
また鳴り出した。
音の元を辿ると、テーブルの上にある四角い塊から鳴っているようだった。
ミサキは起きる気配が無い。
カイゼリスはそっと彼女に近づいた。
彼女は穏やかな顔で、規則正しい寝息を立てている。
心配になるくらい警戒心が無い。
この世界の者は皆そうなのか……?
ミサキ以外にまだ誰にも会ったことが無いので判断出来ない。
カイゼリスは溜息を吐いた。
じっと寝顔を見つめていると、彼女の瞳が突然開く。
そして、目が合う。
「えっ?……私のこと見てました?」
「……ああ」
彼は隠すことも無く、事実を認めた。
「うそ、恥ずかしい!」
ミサキは飛び起きると、洗面室に駆け込んだ。
カイゼリスはその行動を見つめている。
「良かった。よだれの跡は無かった!」
そう言いながら出てきた彼女を見て、自然と笑みが零れた。
「寝れました?」
「ああ。良く寝た」
「良かったです」
そう言いながら、彼女はキッチンに向かう。
「朝食用意しますね」
そして冷蔵庫から何かを取り出して調理し始めた。
「朝ごはんは、食パンと目玉焼きとソーセージ。あと、トマトです。カイゼリスの世界にはありました?」
「ああ。見たところそんなに変わらない」
「良かった!それなら気にせず食べられますね」
嬉しそうに言う彼女に頷き、カイゼリスは皿を受け取った。
「いただきます」
「イタダキマス」
そしてミサキと同じように言うと、食べ始めた。
「!」
カイゼリスはまず、パンを頬張った。
これは思った以上に柔らかく、香ばしい。1枚では足りないと思っていると、ミサキがおかわりをくれた。
目玉焼きは黄身がトロトロで、腸詰と共に食べるととても美味しかった。
トマトはみずみずしく、果物かと思うくらい甘い。
昨夜から思ってはいたが、レーマンとは違い、何もかもが美味しかった。
◇
ミサキは美味しそうに食べる彼を見て、満足していた。
味について何も言わないが、彼の食べ方を見て、気に入ったことはわかったのだ。
食パンのおかわりを渡し、他にも必要ないか聞く。
「大丈夫だ。ありがとう」
カイゼリスは満足そうだった。
すると疑問が浮かぶ。
「レーマンでは、1日に何回食事をするんですか?」
「朝と夜の2回だな」
「へぇー。ここでは、朝と昼と夜に食事するんですよ」
「3回もか!」
3回と言って、彼は妙に嬉しそうだった。
1日が3食になっても、この人はちゃんと全部食べられそうだな、とミサキは思った。
朝食を終えて身支度を始めると、カイゼリスがソワソワしているのに気付く。
「どうしました?」
「外へ行くのだろう」
彼は窓から外を見た。
しかし彼女の部屋の目の前は隣のマンションの壁で、外はあまり見えない。
「外見えます?」
「見えん。だから、少し楽しみではある」
「え、楽しみなんですか?」
昨日突然この世界に来て、今日は外に出ることが楽しみなの?
この人、こんな状況なのに不安よりも好奇心の方が勝ってるんだ。
ミサキは感心してしまった。
「家の中だけでも初めて見るものだらけだ。外にも興味がある」
「なるほど!せっかくだから、外でも楽しまないとですね!」
私もなんか楽しくなってきた!
ミサキは思った。
「じゃあ出掛けましょう」
「ああ」
カイゼリスは槍を掴んだ。
「ちょっと待って!槍はダメです。いりません」
「……盾もか?」
「はい。ここは基本的に安全です。戦ったりはないですから」
「わかった」
彼女の言葉の意図がわかっているのかいないのか、カイゼリスは残念そうに槍を離した。
「あ、そのサンダルの脛当てもズボンの中に入れてくださいね!」
「……」
ミサキがそう付け足すと、カイゼリスはいそいそと網靴を履いて脛当てをズボンで隠した。
「はい。それで大丈夫です。普通になりました!」




