武器など飾りにすぎないのだよ
「あのー…冒険者登録の方ですよね?」
「あ、すいません。少々考え事を…はい、登録をお願いします」
おっと、いつの間にか自分の番がまわってきていたか。
「それではこちらのカードに触れてください」
渡されたのは名刺ほどのサイズの小さな銅色のカード。指先で触れると淡く発光した後文字が浮かび上がる。なんだか異世界転生小説みたいな感じだな。
「はい、問題ありません。それではギルドの利用方法とランクについてですが──」
ボーッとそんな益体の無いことを頭の片隅で考えている内に登録が終わり、チュートリアルの開始だ。
ランクアップのためには一定量のクエスト消化に加え、達成率などの人格査定がある、という点以外に特筆すべきものは無かった。昇格云々に関してはあまり興味はないけどな。
「この近辺のモンスターの情報とかってありますかね?」
あ、情報料は勿論必要なんですね。はい。
そんなこんなでやってきましたファース南部の森へと続く草原──ではなく服屋である。
情報料にかなりの手持ちを削られてしまったので勿論装備のアップグレードなどでは無い。
「こちらの服なんですけどね、"来訪者"たる我々が最初に身につけているものなんですけども、ほら見てください。ほつれも汚れも無いでしょう?」
「ふむぅ…」
装備の売却だ。
「そうでしょうそうでしょう。古着となってしまいますがソレを差し引いても品質は確かです」
「…不良在庫の処理も出来るし、悪くない取引だ!買おう」
「ありがとうございます」
テイムモンスターの維持には金がかかるし、なにより自分は安全圏から指示を出すだけだ。装備なんてやっすい普通の服で十分だ。
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スキル"交渉術"を獲得しました
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交渉術
交渉行為に補正。多少強引な取引でも成立するようになる
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おう、どうせ押し売りだったよチクショー。
今度の今度こそ草原へ出陣。この草原での出現モンスターはスライム・角兎。森に近づくとゴブリンがでてくることもある、と。戦闘を繰り広げているプレイヤー達からなるべく離れたところをフラフラと採取をしながら探索を開始する。
今回の目的はスライムの入手だ。スライムは核を叩き潰せば死んでしまうという特性上、木の棒を持った子供にすらやられる弱い生物だが、そのゼリー状の身体が顔に纏わり付けば窒息死することもあるとか。
ここがゲームで、痛覚などは大幅にカットされているとはいえ最序盤の敵にこんなえげつない攻撃能力を持たせるとは、中々趣味の悪い人間もいたものだ。いやむしろ、そこまでリアルに仕上げているなら趣味が良いと言えるのか?
ガサッ
10分ほど探索しただろうか、音のした方に首を向ければ空色のゼリー状の物体がぷるぷると揺れながら飛び出してきた。
──『鑑定』。
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名前:
種族:スライム
スキル:消化吸収 分裂
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薬草採取中に得られたスキル『鑑定』は対象の名称やスキルなどを調べるスキルだ。買った情報とのすり合わせを行いながら事前に拾っておいた石ころを投擲。核には当たらなかったものの奴を形成するゼリー状のそれがビシャリと飛散する。
飛びかかり攻撃をこれまた拾った木の枝で迎撃してはたき落とす。何故武器を使わないのか?馬鹿め。どうせ全部モンスター任せにするのだから狙ったところに当たらない鞭なんてモン使わなくていいんだよこの野郎ォー!!!
スライムのような不定形生物は核を潰されなければ死ぬことはないが、肉体を形成するリソースが削られるのも立派なダメージになる。先ほどまでの「やってやるぜ!」という気概が失われ、「すいません見逃してください」といわんばかりの全力逃走(遅い)を敢行している。
突撃気質なところが少々あるようだが、敵わないと見るや即座に逃げに転じられるその判断力や良し。
「よう、お前さん。俺についてくる気はねぇか?」
こうして俺は初のテイムモンスターを確保したのであった。
とりあえず体力回復に薬草を食べさせておくか。ほーれ食え食え、ってお前なんだその速度。逃げるときの倍はあるぞ!?




