計画方針
感想いただけたらうれしいです。
俺とミツキは海の迷宮を突破した。
とりあえず迷宮九十九層地点からワープしてから町の方に戻ってきた。
***
~町の大通りにて~
「あ~やりましたねー」
「思ったよりもキツかったな。最後のミツキのサポートが無きゃ即死だったよ」
「仲間なんですから当然ですよ」
最下層での蟹の攻撃を防いだのは他でもないミツキだ。
あの動きを止める白いビームが無ければ確実に頭蓋骨を割られていただろう。そう考えるとミツキと出会わなければ死んでいたことになるのか。
「そういえばさぁ……」
「ん? なんですか、モトキ様?」
「いやな、俺をサポートしたあの白い光線って結構ギリギリだったな~と思ってな。俺の記憶が正しければ、確か頬のあたりをチリッて掠めてたんだよ」
「あ~あれですか。いや~私がんばりましたよ。モトキ様を傷つけず蟹の腕の動きを停止させるの」
「あと数センチずれてれば俺の頬が持ってかれてたけどな!?」
まったく……いくら着弾を早めたいからといって俺の命まで危険にさらされては本末転倒だ。
まぁ、助けられた身で言えることではないのは分かっているが。
「ん~それについては問題無いんですよ」
「なぜに?」
「あれですよアレ。1、2秒先の未来が視えたりするそういう系の能力ですよ」
「え!?そんなのあんの!」
「はい~ですからモトキ様の次の行動を事前に予測して、その位置すれすれに"聖滅線"を打つ事も少し集中すれば余裕なのですよ」
だめだ……ここにチーターがいる。未来が視えるってほぼ無敵じゃないか。
そういえば最近おかしいと思ってたんだ。ことあるごとに何も無いとこから緊急回避をするし、俺が0,5秒前にいた場所に極太ビーム流すわ、不思議に思う節はいくらでも見つかる。
「……ちなみに聞くけどどうやって手に入れたんだ?」
「最初から右目に付与されてましたよ?」
「今すぐその眼、くり抜きたくなってきた」
なんの苦労することも無くミツキ……いや、おそらく英雄も勇者もそういうチート能力を手に入れたんだ。
俺から言わせれば一つ固定能力を発現させようとすれば、それなりの地獄を強いられる事になる。
例えば、俺はモンスターの攻撃を幾多にも受け、"鋼の体躯"という固定能力を手に入れた。その結果そこらへんの冒険者の攻撃なら簡単に弾けるようになったのだ。
「一年半だ……」
「へ?一年半……?」
「俺が能力一つ発現するのにかかった期間だ。しかもその間俺は、一日平均二十時間は戦っていた」
「それは……なんといいいますか……ご愁傷様ですね」
分かっている……勝者が敗者に掛けること言葉なんて無いのだ。
それでも初期値の違いを改めて見せられると多少……いや相当凹む。
「まぁ元気出して下さいよ。迷宮完全攻略したんですから今日は、ぱーーーとお祝いをしましょう」
「そ、そうだすね」
人が行きかう町の中。
俺達の声は人混みと騒音により傍からみれば何を話しているのか分からないだろう。
突如、俺が溜息をつき、ミツキがそれを見て面白そうにクスクスと笑っていながら話している横を一つの集団が通りすぎる。
衛兵……あの剣と盾と鎧から見るに騎士団だろうか?
「……!」
「ん? どした?」
「モトキ様お静かに!」
その騎士団の一行は俺達の横を通り過ぎると皆揃って眉をピクリと上げる。
「けん……じゃ様……!?」
「はい?」
「ん?なんだ知り合いかミツキ?」
騎士団の連中は俺達……もとい、ミツキの姿を視認すると輪になり取り囲む。
そういえばミツキって国家級魔術師だった。最近普通に話していたもんだからすっかり頭から抜け落ちていた。ミツキは王宮で暮らしていていた時期もあったのだから騎士団の人達とも面識があるのもうなずける。
「随分と捜しましたよ賢者様! 我らアルベイ騎士団、賢者様が行方不明とのことでしたのでこの数ヶ月寝る間を惜しみ捜し続けましたよ」
「そう……」
「現時刻にて賢者様の生存を確認、これより王宮へ帰還する」
「え? 戻るの?」
「当然です、貴女はこの国の救世主なのですから。勝手にあちこち行ってしまわれては困ります」
おおぉ……なんだか大変な事になってきてるな。
それにしてもミツキの奴、勝手に城を抜け出してきたのか。それは城の人間も慌てるわな。なにせ国の最高戦力がいなくなるんだから。
「さぁ今すぐ王宮に戻りますよ」
「でも、モト――!」
「「「「王が困り果てています! ですから早く王宮へ――」」」」
なんだかかなりの修羅場が繰り広げられているようだ。
おい、そんな視線で俺をみるなミツキ。今回の件は完全に俺は蚊帳の外だ。
でもミツキを助けられないことは無い。えーとこういう時ってなんて言えばいいだろうか。
「え…と、俺の連れなんで放してくれませんか?」
「むむ!? なんだ貴様は!」
「えっと俺は、モトキっていう冒険者で……」
「そんな事はどうでもいい! 私達は今取り込み中だ。邪魔だからどいていろ」
なに……たしかこうすれば敵が襲い掛かってきたり少しは話に耳を傾けたりしたりしてくれるハズなのだ……漫画とかラノベだと。
どうしよう、変に斬りかかるわけにもいかないし、奴らからミツキを強引引き剥がそうとしても地の果てまで追ってくることだろう。それはダメだ、必死な人間は何をするか予想ができない。
騎士団が身を翻し城の方に向かう中、騎士団長らしき人物が足を止め、俺の顔を一重の鋭い双眼でにらんでくる。
「モ、トキだと……だと?」
「団長、なにか引っかかる点でもあったのですか?」
「いやなぁ……お前たちも噂程度には聞いたことはあるだろう、"怪剣"の噂を」
「怪…剣ですか!? この二十歳にも満たない少年が!」
「あんたらにまで俺の悪い噂は流れてんのかよ」
騎士団の全員がどよめく。どんな酷い噂を流されたんだ。
足は止めてくれたようだが、これではまた別の事件が起こりそうな――
「ま、まさか!? 貴様、その力にものを言わせ賢者様を強引に仲間に引き入れたのか!?」
「そんな訳ないでしょ! 騎士の皆さん、あなたたちの目は節穴ですか!?」
「あーまたややこしい事になった……」
ミツキが全力で騎士団長の推理を否定する。騎士団長はそれを耳に入れようともせず俺に向かって鼻息を荒立て、血走った眼でこちらを凝視してくる。
俺の溜息すらも掻き消す騎士団員共の怒り狂った叫び。
「よくも賢者様を!」
「処刑だ!いますぐギロチンの刑に処すべきだ!」
「いや、いまここで首を狩った方が良い見せしめになる」
「ちょ、ちょっと待って下さい! 私の話を――――」
あーーややこしくなってきた。
騎士団の勘違共が一斉に剣を抜いているところから察するにここで処刑してしまおうという結論に至ったらしい。
しかし、俺の罪はこれだけに留まらなかった。
団員の一人が抜いていた剣を路上におとし、掴んでいたミツキの腕を目を皿のようにして見つめる。
「こ、これは奴隷紋!?」
「まさか連れ回すに留まらす奴隷契約を交わさせるとは……」
「だから違いますって!」
もうだめだ……完全に奴らの目が狂ってきてる。
その中でもまだ冷静なのは……うん、いないね。
「モトキ様はたしかに勇者の国から追われていますけど、それはモトキ様が悪いわけではなく……と、とにかくモトキ様とっても優しいひとです。少なくともあなた達の思っ――――」
「なにいらない事までベラベラしゃべってんだお前!」
「す、すみません!?」
ミツキはむきになったのか騎士共にいあらないことまでしゃべってしまった。
もしかしてコイツ俺を嵌めようとしているのではないかという疑惑は心にしまっておく。
「まさか、怪剣がイヤール王国が指名手配書をだしている少年だったとは!」
「団長、やはり、いますぐコイツを抹殺すべきです!」
「あー変に指揮あげちゃったよ。どうするよミツキ君?」
「はい……すみません……」
慌てているミツキは無視して、奴らの面を睨む。
どうやら皆さんお怒りのようだ。今にも爆発しそうな表情だ。
「どうします~モトキ様~」
「お前って範囲魔法使えなかったけ? あの水の迷宮で獲得した魔法だよ」
「あ、すっかり忘れてました」
このままじゃ埒が明かないので交戦するしかない。
俺は、いつもモンスター相手に剣を振るってるから、寸止めや手加減などといったことには慣れていない。ミツキの光線では殺しはしなくても確実に相手を傷つける。本人もそれを望んでいないだろう。
そこで、水の迷宮で手に入れた魔道書の出番だ。
これなら加減が効くし、敵も気絶だけで済ますことができる。
「えっと……"ツナミボール"!」
「賢者様たかが水の玉でなにを……うごごごがぁぁぁぁぁっぁ!!!」
「違います、狂った水の玉です」
荒れ狂った水の塊が騎士団たちの顔面に直撃し、即座に気絶させる。
これがミツキが水の迷宮で手にした魔法。書によれば極めると、山一つを水掛け感覚で破壊できると記されている。
「……っ!」
「おっと」
騎士団の一人が俺に向かい剣を振りおろす。
それを肩で弾き、反撃に移行する。
俺の場合、戦闘になるとミツキのように思ったように加減ができないのが難点だ。だから集中して、できるだけ力を分散させて――
「んーこんなもんか」
「ぼぐぅっ!」
「なんでそんなに飛ぶんだ!?」
「モトキ様! それでは私が手加減した意味がありません!」
俺の張り手を受けた騎士は何十メートルも転げ回り、木の柱に不運にも衝突する。ちょっと鈍い音がしたが問題ないだろう。
別に人を手にかけたのはこれが初めてじゃない、キャラバンなどで襲われたときを例に挙げると、よく腹を突き刺していた。
「ミツキ、増援が来るのも時間の問題だ早くこの国を離れるぞ」
「え、でもあの騎士は……」
「大丈夫だ、鎧も着ているしあの程度で死ぬような鍛え方はしてないだろ」
「あの程度の定義を教えて欲しいですぅ!」
ミツキと俺は口と足を忙しく動かせながら事件現場から離れる。
さーてこの国にもいられなくなったし、次の行き先はどこにしようか。
「何を使っていくんですかー? 馬なんて使ったら追いつかれますよ」
「大丈夫だ、こも町に着いたときからそういうことは決めてある」
「おー用意周到ですね」
足を止めたのは馬などを扱っている店。
そのなかでも一際異彩を放つ生物に視線を向ける。
「お~い、このグリフォンをくれ」
「こいつをかい? 金貨五十枚枚だが、あんたに払え――」
ブチッ!
この店の主人の言葉に耳を貸さず、金貨の入った袋を噛み千切る。
そこから留めなく溢れ出す百枚はあろうかと思われる金貨の洪水。その光景に主人の目は釘付けになる。
「これでオーケー?」
「お、オーケーだ。す、好きに使うといい」
「サンキュ」
グリフォンを買うと、主人に貰った首輪にミツキと俺の血を垂らし、暴れるグリフォンに巻きつける。
首輪を巻きつけられたグリフォンは途端におとなしくなる。
「はやく乗るぞ」
「はい」
俺はグリフォンの手綱を握り締め、ミツキは俺の腰に手を回す。
これで旅たつ準備は整った。
「そういえば、どこいくんですか? 魔界ですか?」
「地の迷宮に寄ってから魔界の方へ行く」
「了解です」
雲をつきぬけ、俺たちはザウェイ王国を背に地の迷宮があるカリュー帝国に向かう。
読んでいただきありがとうございます~




