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アフロディアックスウェスト - 第04話「ハート財団」  作者: アフロディアックス


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3/4

●act03: 「偽るもの」


翌朝、ニッキーとロッコが食堂で朝食を摂っていると、あくびをしたケリーがテーブルに来た。


「おはよう、ケリー」


「おはよう、、、」


「ぐっすり眠れた?」


「ああ」

ケリーも同じテーブルの椅子に座る。

するとウェイターがケリーの前にパンやサラダを手際よく並べる。

ケリーはパンに食いつきながらフォークでサラダも食べていく。


そして上着はまたシャツ一枚であった。

「貴女、昨日あげた下着は?」


「暑い、めんどくさい」


ニッキーはため息をつき、

「はあぁ、貴女も年頃なんだから、身なりにすこし気を配りなさい」


暑いから薄着でいたい。

それは理解できるし仕方がない。

しかし、最低限の身嗜みというのはある。

成人した女性ならなおさらだ。


ニッキーは着こなし方の件から、ケリーの素行も気になりはじめていた。

いままでは気にしてはいなかったが、大人の女性として気をつけることがあるはず。

いまの食事の仕方もまるで子供のような食べ方。行儀よくない。


だが、横柄や傲慢、いい加減ではなく、ただ無頓着、わかっていないだけのようである。

いままでも言い聞かせれば直る。

根は素直である。

しかし、着こなしについてはだいぶ面倒がっているようだ。


身嗜み、行儀・作法。

ケリーに身につかせなければならないことがかなりありそうだ。




ロッコがパンを頬張りながら、

「さて、飯を食ったらすぐ出るかい?」


ロッコの行儀もたいがいである。

ニッキーは目の前に子供が二人いるように思えた。



「まだ、帳簿のチェックをしていないわ。昨日は、まだ纏めていないと言われて、見せてくれなかったのよ」


「そんなもん見なくても、昨日ぐるっと見てまわったじゃないか。オレはこの臭いと早くオサラバしたいよ」


「なに言ってるの。帳簿の確認は一番大事なことよ」


「はいはい、じゃ、とっとと、済ませてくれ」


ロッコはひとり小声で呟く。

「頼むぜぇ、従業員さん、、、」


帳簿の裏合わせはちゃんとできただろうか。

ニッキーにバレないよう、うまくごまかしてくれればここを早く出られる。

たぶん不正をやっているのだろう。

だがそんなことなんてどうでもいい。

面倒事には関わりたくない。

この臭いと早くオサラバしたい。

ロッコはそう思っていた。



朝食のあと、ケリーはまたニッキーに部屋まで連行され下着とブラジャーを着せられることとなる。










広い応接室のテーブルの前のソファーにニッキーは座っていた。

そのソファーの後ろに立つロッコ。

その対面に立つ工場長。


工場長はニッキーにお辞儀をして、

「ニッキー様

もう少しお待ちください。

すぐに担当の者が参りますので」


「いいえ、かまいません。

お手間をかけます。

でもこれがここに来た目的のひとつですから」


「承知しております」



しばらくして部屋の扉がノックされ開く。

書類を持った男が入って来た。

「お待たせして申し訳ありません。

工程と経理を担当しています、課長のフレディ マーチンと申します」


「いえ、わざわざありがとう。

よろしく」


「こちらが、管理帳簿になります」


男は手に持った書類をニッキーに渡した。

ニッキーは受け取った書類をテーブルに広げ見ていく。

一枚、一枚丁寧に。


書類を見ながら、ニッキーは男に尋ねた。

「財団の規定では、工程担当と経理担当の兼任は認められていないはずですが」


「ご指摘はごもっともです。

ですが、石油採掘は新規の事業で、日々新しく起きる問題に対して工程の見直し、改善を頻繁に行わざるえません。

当然、経費はかかり、その関連や紐づけは煩雑を極めます。

これを複数の人間で行うとどうしても齟齬や業務遅延が起こりがちでして、そこで例外的に両方の業務に精通している私めが兼任で担当させていただいております。

この件は財団本部にも報告し了承をとっております」


「仰ることもわかりますが、貴方自身の負担も大きいのではありませんか?

それに相互確認ができず、ミスを見落としてしまう可能性がありませんか?」


「はい、それについては慎重に行っておりますし、私自身は重要な業務を受け持っていると重々承知して、慎重にやりがいをもって仕事をさせていただいています。

それに最終確認だけは部下にも目を通してもらっているので、大きい問題は起きておりません」


「そうですか、、、」



黙々を書類を確認していくニッキー。

それを見守る二人の男とロッコ。

沈黙の時間、ニッキーの紙を捲る音だけが聞こえる。




しばらくののち、ニッキーは顔をあげ書類をまとめる。

「ありがとう。業績も順調のようですね。

あまり無理をなさらず仕事を続けてください」


笑顔のニッキーに工場長も笑顔で返した。

「お疲れ様でした」


担当の男、フレディ マーチンは深々と頭を下げた。

「ありがとうございます」

不敵な笑みを浮かべながら、、、






その後、ニッキーたちにコーヒーが振る舞われる。

工場長はまたニッキーにお辞儀をして、

「今日はありがとうございました。

お出ししたコーヒーは名産地ブラジから取り寄せた豆を挽いたものです。

どうぞ冷めぬうちにご賞味ください」


「ありがとう」




工場長とフレディ マーチンは部屋を出て、ニッキーとロッコが応接室に残った。

ニッキーは両手でコーヒーカップを持ちコーヒーを飲む。

ロッコもニッキーの隣にドカリと座り、片手でカップを持ちコーヒーをゴクリと飲んだ。


ニッキーはカップをソーサーに置いて、

「ロッコ、ここをまだ出られないわよ」


「なんでだい?」


「経費の上乗せが疑われるわ。本部で見たのとかなり違う」


「君は記憶力がいいな。でも、計算ミスじゃないのか?

あの旦那だけでやっているんだろ。それを指摘して直させればいいんじゃないかい」


「それにしても数値が不自然なのよ。意図的に改ざんしている可能性が高いわ」


「よくそんなことがわかるな?」


「以前にも似たようなことがあったの。確証はまだないけど」


「なら、ハート財団の会計士を呼んで調べさせればいいだろ」


「来る前に証拠を隠蔽されるわよ。いまなら、尻尾を押さえられるかも。証拠を押さえれば軍も動かせる。

ロッコ、もうすこし回るわよ」


「へいへい、、、」

ロッコはソファーの背もたれに寄りかかり子声でつぶやく。

「おいおい従業員さん、頼むぜぇ、、、」



コーヒーを飲んだあと、二人は工場長の部屋に向かった。

「帳簿の保管庫はどこかしら?」


工場長は問題があったのではと狼狽え、

「なにか不備な点でも?」


「いえ、ここは3年近く本部の監査を受けていないようなので、念のために確認だけさせていただこうと思いまして」


「はあ、承知しました」

工場長は困惑した表情で応えた。



ニッキー、ロッコは書庫に案内された。

ニッキーは書棚に並ぶ帳簿を引き出し、出納記録を確認していく。


ロッコは書棚によりかかりニッキーを見ていた。

ロッコは言葉に出さず、呆れ感心して、

・・・よくこんな数字だけの紙を見てわかるもんだ。


書類を真剣な眼差しで見つめるニッキー。

その表情もソソるものがある。

昨夜の喘ぎ顔もいいが、こっちもイイ。

この生真面目顔なニッキーをこのまま押し倒し、悶えさせたい衝動にかられるがここはガマン。

ロッコは昨夜のニッキーの乱れた姿を反芻し心の中で楽しんだ。




暫く時が経ちニッキーが、

「あった。

しばらく監査がなかったんで油断していたわね。

詳細帳簿はナマの記載だわ。

これと、さっきの報告書を較べると毎年20万から30万DDの上乗せがある。

それを特別会計扱いで詳細記入がされていないわ。

これを横領しているのね。これなら軍も動かせる」


どうやら確信的容疑を見つけられたようである。


・・・ゲームエンドだな、、、

ロッコは心の中で呟いた。



※筆者注:『DD』は貨幣単位です。

 現実社会での米ドルと同価値のものとしてください。(^^ )








ここは先ほどの応接室。

先ほどと同じメンバー、ニッキーとロッコ、工場長とフレディ マーチンが室内に居た。

ニッキーは椅子に座り、テーブルを挟んでフレディ マーチンがニッキーに対面して立っていた。


ニッキーは、見つけた『疑わしい不整合な帳簿』をテーブルに置き、フレディ マーチンに問いただした。

「Mr.マーチン。

この特別会計の詳細について伺いたいわ。

先ほど見せてもらった報告書にはこの記載がなかった。

記入ミスにしてはかなり高額で見落としとしても不自然に見えます。

それも毎年あって、最終報告書ではその記載がない。

貴方の上司と所長に尋ねましたが、お二人ともわからないと言っているわ。

意図的な改ざんをするのであれば、貴方しかできない。

この書き込みの筆跡も貴方のものと酷似しています。

誰かに指示されてしたのかしら?

それともご自分でされたのかしら?」


マーチンは明らかに動揺し目を泳がせている。

深々と頭を下げたままマーチンは答える。

「それは、集計のときにどうしても帳尻が合わないことがありまして、それを特別会計扱いで合算したものです。

年間ではどうしても高額になります。

この会計方法は規則でも認められています」


「それにしても額が多すぎます。

しかも最終報告に記載がない。

会計の不整合がある場合は報告が義務付けられている。

その報告もない」


「最終報告に記載しなかったのは私のミスです。

不整合の報告も失念しておりました。

ですが、私はやましいことはしておりません!」


行方のわからない巨額の金。

しかし、マーチンはヒューマンエラーによるものとの言い分けしている。

不正・横領の証拠がなければそれで通されてしまうかもしれない、、、


だが、金の行き先がわかれば、、、






部屋の扉が突然開き、数人の男たちが入り込んできた。

書類を抱えた経理担当の男と軍の兵士。


「ハートお嬢様、マーチン課長の部屋を捜索したところ、株券とその売買記録が見つかりました。

かなりの額のものです。

彼はここ3年程で60万DDの株を購入しています」



ニッキーはマーチンを呼び出す前に、マーチンが自室を空けたときに捜索するよう己の権限で兵士と経理担当に命令・支持をしていた。



金の行方・使い道を掴めたようだ。



「Mr.マーチン。

ハート財団は貴方に業務負担に応じた給与をお支払いしているはずです。

ですが、その給与だけでは賄いきれない額ではと私は思います。

資産をお持ちであれば別ですが、貴方の預金通帳を拝見させていただきませんか?」



マーチンは顔を上げることができずにいた。

額から滲み出る汗。

それは砂漠の中の工場である、この部屋の暑さのせいだけではなかった。






マーチンは横領の疑いで収監されることとなり、兵に連れ出された。



ロッコが呟く。

「60万DDか、オレも肖りたいね」


「不謹慎なことを言うのはやめなさい」


「はいはい」


「帳簿の保管庫は私設軍の兵に押さえてもらったから、もう改ざんはされないわ。

あとは会計士が来て見てくれるわ」


「どうだろなぁ、買収されるかもよ」


「ハート財団私設軍の兵を甘く見ないで。

厳しい規律の中で働いている鍛えられた人たちよ。

それにもし、買収がバレれば、その兵は銃殺よ」


「おお、怖っ!」


工場長が頭を下げ詫びた。

「ニッキー様、誠に申し訳ありませんでした。

重々反省しております」


「彼は優秀な部下だったのでしょう。

でも過剰な負担や待遇を与えれば、不満も出るし驕りも出ます。

これは彼だけの問題ではありません。

所長、貴方の管理責任でもあります。

また、例外を許可し監視を怠った本部にも問題はあるでしょう。

ハート財団全体として見直す必要があるかもしれません。

このようなことがないようお互いに気を引き締めていきましょう」


「肝に命じます」


「Mr.マーチンの経歴を見ました。

大変有能で、多くの功績を果たした方ですね。

己の地位を悪用した横領は許されるものではありませんが、今回の件を反省し、また業務に邁進していただけるのなら、情状酌量の余地はあると思います。

これは、私設軍と会計士の捜索と調査、貴方の判断に委ねます。

罪を責めるよりも、更生する機会を与えることを望みます」


「ありがとうございます」


またロッコが口をはさむ。

「罪を憎んで人を憎まず。大岡裁きだねぇ」


「なによそれ?」






ニッキーとロッコは事務棟の建物を出て宿舎へ向かった。

もう陽は傾き、夕焼けが周りを紅く照らしていた。


「もう日が暮れるわね。

出発は明日にしましょう」


「この臭いともう一晩か、、、」


宿舎の前にケリーがいた。

やることがなく日がな一日、工場の敷地をうろついていたのだろう、飽きて待ちくたびれているようだった。

「終わったのか?」


「ええ、お待たせ。

でももう遅いから出発は明日にしましょう。

いぃい?」


「ああ、かまわないが、デレクが馬宿に入りっぱなしだ。

一度外に出したい」


「ええ、ひと廻りして来ていいわよ。

でもあまり遅くならないように帰ってきて。

それと明日に備えて、今日はちゃんとベッドで寝なさい」


「えっ、、、?!」


「デレクと一緒だと、貴方の寝顔かわいいわよ」


昨夜、デレクのところにいたことがバレている。

ケリーの顔が赤くなる。

そんなケリーを見てニッキーはイタズラっぽく微笑んだ。







夕闇がせまり、徐々に暗くなっていく荒野をデレクはケリーを乗せ歩いていた。


ケリーはひとり愚痴る。

「人の寝姿覗きにくるなんて趣味悪いぞ、、、

デレク、お前わかっていただろう」


ケリーはデレクを睨んだ。

デレクの背に乗っているため、デレクの顔を見ることができない。

でも見えたとしてもその表情からなにかを知ることはできないだろう。


デレクからの反応はない。


ケリーはため息をついた。

ここでデレクを責めてもなんにもならない。

まあ、今日一日、厩に閉じ込められ退屈していたのはデレクも同じだろう。

「、、、まぁ、いいか、、、

デレク、走ろう!」


デレクが勢いよく駆けだした。

周りの景色が一気に躍動する。

デレクの力強い駆け足。



幼い頃から弟とふたりでデレクの背に乗り駆けまわった。

デレクはいつも新しい景色を見せてくれる。

デレクとなら何処へでも行ける。





お前がいたから旅立つ決心をした。

お前となら取り戻せると思った。

あたしの相棒はお前しかいない。

お前と一緒なら、、、








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