表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アフロディアックスウェスト - 第04話「ハート財団」  作者: アフロディアックス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/2

●act02: 「油臭の鉄城」


ロッコの左頬に赤く手形がついていた。

誰の手形かは言わずもがな。


ケリーもニッキーの語気に圧されて沈黙していた。






砂丘を進んでいくと、やがて丘の向こうに砂漠の上に機械がいくつも点在しているのが見えるようになった。

「やっと見えてきたわね、あそこがガルフよ」


ケリーが呟く。

「なんか臭い」


ロッコも、

「オレもこの匂いは嫌いだ」


ニッキーが言う。

「まあ、すこしガマンして」


近づくにつれ臭いが強くなっていく。

腐臭とは違う、刺激の強い臭い。



近づくとその機械は30フィート程もある大きいモノで、シーソーのように動いている。

地面に空いた穴に棒状のモノを差し込みなにか掘っているようにも見える。

異臭はこの機械から発しているようだった。

その機械が周りに数十基あり動いていた。


ケリーが聞いてくる。

「大きい機械だ。なんの機械だ?」


「石油を採掘しているのよ」


「せきゆ?」


「燃やせば石炭より高い火力が得られる油よ」


「ふーん、なんに使うんだ?」

ケリーはよくわからず、燃やして使うモノであることだけわかったようである。


「製鉄所や、蒸気機関(スチーム)に使うわ。このパイプで港までその油を送っているの」


道沿いには太さが3フィート程もある太い鉄管(パイプ)が丘の向こうまで何マイルも伸びている。


ニッキーは目を輝かせ口調も強くなっていく。

「石油は新しい産業の礎になるわ。まさしく大地の恵みね。鉄鋼や電力、機関(スチーム)の燃料としてこれほど素晴らしいものはない。ここは新しい文化・文明の起点になるの。人は知恵をどんどん身に着けて文化的に発展していくわ!」


「、、、ハハハ、すごいな」

適当な相槌を言うケリー。

ニッキーのいうことのほとんどを理解できていなかった。




「ケリー、ひとつだけ忠告があるわ」


「なんだ?」


「貴女の不思議なチカラ、光のチカラはここでは使っちゃダメよ」


「なんでだ?」


ロッコが口をはさむ。

「使ったら、ドッカーンッさ」


「どっかーん?」










やがて砂漠の真ん中にある大きい工場にたどり着く。

太い鉄パイプが幾重にも折り重なり、高い煙突からは黒い煙が噴き出ていた。

多くの男たちが働いているようだ。


ニッキーたちが馬から降りると、数人の男たちが駆けよってきた。

暑いのにかかわらずネクタイを締め、身なりが整った男たち。


「これはこれはニッキー様。ご予定では明後日の到着とお聞きしておりました」


「ええ、ごめんなさい。馬足が速くて思ったより早く着いてしまったわ。お邪魔じゃないかしら?」


「いえいえとんでもございません。お部屋も用意しております。

どうぞこちらへ。」


男は深々とニッキーに頭を下げた。

ニッキーが案内されると、男は顔を上げ、ロッコ、ケリーもニッキーに()いて行くよう促す。

「お連れの方も」




ケリーはロッコに聞く。

「ニッキーは偉いのか?」


「そりゃハート家のご令嬢だからな」


「ハート家?」


「なんだハート財団を知らないのか?

ああ、だからか。君はニッキーが名乗っても平然としてたな。普通、ハートの名が出れば皆平伏すぞ。」


「悪かったな、田舎者で。知らないものは知らない。」


「悪くはないよ。ハート財団。農業、鉄鋼、造船、食品の加工、あらゆる産業に関わり運営している、この国一番の大財閥だよ。

国家から軍を持つことも許可されている。国家政府と肩を並べる権力を持つ大企業さ。

そして彼女はその一族で、次期頭主だ」


「ふーん」


ロッコは呟く。

「今夜は寝心地のいいベッドで寝れそうだ」







工場を視察するニッキー。

その周りにには常に十数人の男たちが付き従う。

ケリー、ロッコの二人はすこし距離をおいて付いてまわった。


昼食後は工員を集めて訓示を行った。

登壇し演説するニッキー。


ニッキーが立つ演壇の背後に並ぶ幹部たち。

ロッコ、ケリーもその端に並んでいた。



ケリーは感嘆し、

「すごいな、女王様みたいだ」


「ま、そんなところだ」



その後ろ側の二人の男たちが耳打ちをしていた。

その二人が奥に下がる。


ロッコはそれを見つけ追う。

ケリーがロッコに聞く

「ん、どうしたんだ?」


「ちょっと用足しだ」







演説を終え壇上から降りるニッキー。

工場長はニッキーにお辞儀をする。

「ありがとうございました」


ニッキーはその工場長に聞く。

「個人的にお願いしていた件はどうでしたかしら」


「それについては申し訳ありません。目ぼしい情報を見つけることができませんでした」


「そうですか、、、ごめんなさいね、ご面倒おかけして」


「いえ、ですがニッキー様がそのようなことをお調べになっているとは」


「友人がそれで困ってまして、手助けできればとおもい、、、」








ニッキーが演説中にその場を離れた男二人が、建物の隅の陰で話し合っていた。

「まだ、帳簿の裏合わせができておりません。明後日までと聞いていたので」

「バカモン、彼女が見る前に直すんだ。早くしろ!」


それを隠れて聞いているロッコ。









陽が沈み夜となる。

真っ暗な部屋。

ニッキーはスイッチを入れ電灯を点ける。

突然部屋の灯りが付ついたことに驚くケリー。

「え?明るくなったぞ」


「電気よ」


「でんき?」


「採掘した石油で電気を作っているの。

灯りだけじゃない、モノを温めたりモーターを回して動力にもなる。

新しいエネルギーよ。ここは水道もあって、お湯も出るのよ」


「へえ、ほんとだ。すごいな。でもこの灯り、チクチクするな」


「そうお?わたしはなにも感じないわ。貴女の不思議な力ではそう感じるのかしら?」


「そうかもしれない。大地の理ではない、人の知恵で作った灯りだからかもしれない」


「この部屋は好きに使っていいわ。わからないことがあったら、隣にいるから声かけて」


「ああ、わかった。これだけ広ければデレクも入れそうだな」


「魔獣はちょっとねぇ、、、」


「わかっている。馬宿を見たい」







ニッキーが厩の電灯を点けるとデレクは壁によりかかり地面に座っていた。

「ちゃんと屋根はあるわよ」


ケリーは、デレクの顔を持ちその長鼻を己の額に当てる。

「デレク、おやすみなさい」






ケリーは自分の部屋に戻りシャワーを浴びた。

この工場に着いてすぐにニッキーに部屋に連れ込まれて、下着とブラジャーを着せられた。

その上、「ボタン外すの上から2つまでよ」と念押しされしかもチョッキを着せられていた。

暑い格好のままでいたので汗だらけである。

早くシャワーを浴びたかった。


ハンドルを回すとシャワーから勢いよく水が出て、すぐに暖かいお湯になる。

宿場町の宿ではシャワーがあっても水だったり、お湯でも温くこんなに勢いよく水が出ない。


「すごい」

これがニッキーがいう『文化的』なところなのだろう。

いずれ町や村でもこのようなシャワーを浴びることができるようになるのだろうか。


火を起こさずとも簡単に点く電灯の灯り。

自由に使える熱いお湯。

人の知恵、文化・文明はいままでできなかったことや夢や願いをかなえる。

自分が授かっているこの理のチカラがなくても灯りや熱を誰もが使えるようになる。

それはよいことだと素直に思った。


人の知恵はいずれ大地の理も越えるかもしれない。

でもそれは、理のチカラも、自分たちの部族も、村も、いつか忘れさられ消えることになるだろう。



ケリーはすこし寂しい思いにかられた。



シャワーを終え、タオルで身体を拭き長い髪は風と光のチカラで乾かす。

そして用意されていた寝間着(ネグリジェ)を着た。

シルクのような薄く綺麗に装飾された生地。

まるでドレスのような寝間着(ネグリジェ)

村で着ていた無地木綿の寝間着とは大違い。

「これもすごいな」


電灯の明かりを消す。


ベッドの横で床にペタリと座り込むケリー。


窓から満月の明るいの月明かりが入り込む。

なにも聞こえない、静まりかえった部屋。


落ち着かない、、、。


寂しいおもいに気持ちが支配されていく。


自分はなぜココにいるのだろう。

取り戻すためにこの旅をはじめた。

でもほんとに取り戻すことができるのか、、、

グランデンに行くことに意味はあるのだろうか、、、


ケリーは月を見た。

満月。

月には小さい衛星がひとつあった。

その衛星も月明りを浴び輝いていた。


ケリーはその星に話しかける。

「ユエ、あたしはどうすればいい、、、」



ひとりでいると心が深淵に引き込まれ堕ちていきそうになる。

ケリーは立ち上がり寝間着(ネグリジェ)を脱いだ。

そして自分の服を着て部屋を出る。










ニッキーはロッコとベッドを共にしていた。

「あの()、デレクがよっぽどかわいいのね」


「かわいいだけじゃないかもしれないぞ」


「もう、いやらしい」


「オレたちも変わらんさ。彼女のことよりも、いまはこちらに集中してほしいな」


「ばか、、、」


ロッコを抱きしめるニッキー。

いつものようにロッコの愛撫に身を委ねる。

昼間は憎たらしいが、夜は安らぎを与えてくれる。

愛欲のためにロッコと共にいる。

悔しいがそうだろう。

理性ではない。

己の心がロッコを欲している。

他の男ではダメなのだ。

ロッコが愛しい。

ニッキーはロッコとの行為に耽る。







深夜、満月が真上に昇っていた。

ロッコが深い眠りについてしばらくした頃、ニッキーはベッドを抜け出しランタンを持ち部屋を出る。

隣のケリーの部屋にこっそり忍び込む。

だがそこにケリーはいなかった。


ニッキーは厩に向かった。

厩をランタンの灯りで照らすとデレクに抱かれ眠るケリーを見つける。

安らかな寝顔。

デレクの懐が安心するところなのだろう。


デレクが顔をあげニッキーを見た。

するとニッキーは、人差し指を立て己の唇に当てた。


「おやすみ、ケリー、デレク」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ