●act01: 「熱砂の悦楽」
ニッキーたちは砂丘地帯を進んでいた。
白い芦毛の雄馬ルドルフに乗るニッキー。
栗毛の牝馬エリザベスに乗るロッコ。
黒い馬人デレクに乗るケリー。
草木がまったく生えていない砂だけの荒野。
見渡す限り砂漠しかない。
緩い丘をいくつも越えていく。
雲一つない晴天。
日を遮るものはなにもない。
唯一カウボーイハットだけが日よけとなっている。
風もなく、地面からの照り返しもあり、かなり暑く感じる。
普段は身なりをきちんと整えているニッキーだったが、今は暑さをしのぐ為腕まくりをして胸元も開けていた。
ケリーもチョッキを脱ぎ、シャツの襟を第二ボタンまで開けている。
ほんとうはもっとシャツの前を開けたいのだが、下着を着ておらず胸がはだけて見えてしまうことをニッキーに咎められ、これ以上開けることができないでいた。
ケリーは「暑い」と愚痴る。
「我慢なさい。貴女、普段も下着を着てないの?」
「寒いときは着る」
「せめてシュミーズぐらい着なさい」
「暑い」
「ブラもつけなさい」
「持っていない」
「えっ、、、」
そういえばニッキーはブラジャーをしているケリーを見たことがなかった。
たしかにブラジャーはわりと新しい下着で、地方によってはまだ普及していないところもあるだろう。
「コルセットは?」
「したことない」
「、、、じゃあ、いままでどうしていたの?」
「前はさらしで巻いていた」
「さらしって?」
「胸を帯で巻いていたんだ。
それもあまり好きじゃなかった。
でも着物が着崩れるって、母様に、、、」
着物、となると前合わせで帯を締める服を着ていたようだ。
わりと古風な服装。
たしかヤポンはそのような服装を好んでいたと聞いたことがある。
ダイナフォレストではそういう服だったのだろうか。
であれば、なおさらブラジャーはつけてなかっただろう。
ケリーが首筋のあたりを手で扇ぎながら、
「こんなシャツやズボン、あまり着たことがなかった」
ニッキーはなんとなく合点がいった。
ケリーはラフな服装を好みわざと着崩しているのかとおもったが、そうではなく着かたや身だしなみそのものがわかってないのだ。
長身でスリムな身体つきだが、胸はその割に豊満である。
いままではチョッキも着ていたので気にならなかったが、シャツ一枚だけではその胸はかなり目立つ。
ケリーはまだ16歳。育ち盛りである。
その胸は益々ふくよかになるだろう。
女性の自分からみても均整のとれた魅力的なプロポーションを持つ。
そんなケリーが胸を露わにするような着こなしをすれば世の男共は黙っていないだろう。
ケリーの無自覚に男どもの欲情を煽りかねない姿にニッキーの脳内アラートが鳴り響く。
さっそくロッコが絡んできた。
「まあ、人それぞれ、いいじゃないか」
そのロッコの視線はケリーの身体に向けられていた。
スリムな身体にフィットしたシャツ。
そのため張りのある胸の双丘はより強調されてしまう。
そしてケリーが乗るデレクの歩調に合わせて揺れるその乳房。
明らかにロッコはそれを見て楽しんでいる。
己の愛しい男性が他の女の淫らな姿を見て悦んでいる。
ニッキーにとって由々しき事態である。
許せるわけがない。
ニッキーの嫉妬心が大炎上する。
そもそもこの娘は下着もつけずにシャツ一枚なんて、着こなし方がわかってない以前に羞恥心というものがないのか。
齢は16歳で一応成人年齢だが、身嗜みがまるでなっていない。
この男もだ。自分というパートナーがいるにもかかわらず、自分の目の前で他の女の破廉恥な格好を見て悦んでいる。この男には貞操というものがないのか。
ロッコは激憤してるニッキーを見てニヤリと笑った。
ああ、この男はそういう男だ。
わたしをわざと怒らそうと、からかおうとしている。
憎たらしい。
ホントに腹立たしい。
ハラワタが煮えくり返るとはこのことなのだろう。
なのにこの男を嫌うことができない。
自分自身の感情の不合理さ、不条理が納得できない。
ニッキーはロッコとケリーの間に割って入った。
ロッコからケリーを見えないようにして、ニッキーは鬼の形相でロッコを鋭く睨んだ。
「おーっ、怖っ」
いつものようにロッコはニヤケ顔でおどける。
ニッキーは語気を荒げる。
「この娘はまだ子供なのよ!」
ケリーが抗議する。
「子供じゃない、大人だ!」
「なら、もっと身だしなみに気を遣いなさい。
シャツ一枚なんて、恥ずかしくないの?
町に着いたらブラと下着を買ってあげるから、身に着けなさい」
「ブラしたことない。めんどくさい。」
ロッコがまた口をはさむ。
「オレはこのままで大歓迎だがね」
身体は大人でも心はまだまだ子供で羞恥心がない娘。
それを見て喜ぶスケベな男。
ニッキーの苛立ちが頂点に達し大声で叫んだ。
「モーーー!!!」




