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追放された魔術師は、神に見られながら暮らしている〜生活魔法しか使えないのに、加護が止まりません〜  作者: 灰音 澪


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3/7

第3話 「神ミッション発生――家を建てろ」

村は穏やかさを取り戻し、人々が恐る恐る外に出てくる。


やがて誰かが叫んだ。


「本当に倒したの……!?」


その声をきっかけに、空気が弾けた。


歓声が広がり、

俺が魔獣を倒したと、村中の人が歓喜した。


退治した猪の魔獣を長老の家まで運び、明日、その肉で俺の歓迎会をしてくれる事になった。


帰り道、ガルドがお礼も兼ねて、夕食に誘ってくれた。


奥さんのミレイさん、娘のカナンちゃんの3人暮らしで、ガルドも一度は街に出たが、男手の少ないこの村に戻り、今は農業で生計を立てているらしい。


テーブルに並んだ料理を見て、俺は言葉を失った。


湯気の立つスープ。

焼きたての野菜。

香ばしいパン。


乾パンしか食べていなかった俺は、一口食べた瞬間、胸がじんわり熱くなった


「ミレイさん。凄く美味いです。心が癒されました」


ミレイは柔らかく微笑んだ。


《コメント:波乱こい》

《コメント:そこで未亡人ルート》

《コメント:やれ》

 (いやいやいやー、さすがにそれしたらクズっしょ)


《《同時接続数:67 → 72 → 78》》

《コメント:クズこいー》

(こいつらやば……)


――


小屋に戻り、水を飲もうと水袋を手にすると、もう殆ど残っていなかった。

ガルドの家で水を貰えば良かったと、

改めて後悔した。


一か八か、(水よ増えろ)

そう念じ、手を当てた。


水袋が、わずかに震えた。


次の瞬間――

内側から膨らむように、水が満ちていく。


「……嘘だろ」


ゼノは、無詠唱で魔術が使える事が、

すごい事なのだと、この時は知らなかった。


《コメント:水だけで驚いてる〜爆笑》

《コメント:初心者すぎて、ウケる》


(バカにされてんのか?)


――


次の朝、長老の家に行くと、今はブラッドボアを捌くのが忙しいので、歓迎会の時に、話をしようとなり、ガルドの畑に向かった。


ガルドは収穫後の畑を耕していた。


「おはようございます。ガルドさん、何かお手伝いする事はありませんか?」


「助かるよ。悪いが隣の畑をこの鍬で耕してくれないか」


「分かりました」


隣の畑、というが、かなり広い。


鍬を振りかざし、進んで行くが、途方もない。


 (まぢかよ。俺……力仕事無理だ……)


《視聴者:79》

《コメント:見ろよ。あの顔。ウケる》

《コメント:頑張る姿は美しい》

《コメント:効率悪いーー》


 (散々な言われ方だな……)


次の瞬間、柔らかな光が空から降りてきた。


本能が理解する。


危険ではない。


光は静かに俺を包み込んだ。


《汝に加護を与える》


低く、深い声。


《生活魔法の加護を付与しました》

《創造補助を解放しました》

《魔力効率が上昇しました》


体の奥に、熱が満ちる。


試しに水を思い浮かべる。


空間がわずかに歪み、両手を近づけると水球が生まれた。


「……本当に出た」


《視聴者:80》

《コメント:またショボ》

《コメント:生活チート》


「誰だ、お前らは……」


だが、不思議と嫌ではない。


だだっ広い畑。鍬なんかで追いつくはずがない。


(てか俺が無理)


前世、父親の田舎に帰ると、祖父がトラクターに乗って畑を耕していた事を思い出した。


イメージする。


柔らかく耕された大地。


両手に念を込めて地面に手を付ける。


すると、硬かった土が波のように動き、一瞬で耕された。


そして地面を撫でながら、綺麗に並んだ畝を想像すると、均等に整った畝が盛り上がってきた。


様子を見に来たガルドが絶句する。


「ゼノがしたのか?」


「はい……」


汗一つ流さず答えた。


――


長老の家の近くの広場に、机と椅子が並べられ、

村の女性達が、ゼノの歓迎会の準備をしていた。


辿り着く前から、良い匂いが漂い、

 

湯気の立つ料理が次々と並べられていく。


焼いたブラッドボアの肉に香草のスープ。

干し肉ばかりだった村人達は、久しぶりのご馳走に喜んだ。


その時――


長老とガルドが、両腕で抱えるほどの大きな木樽を運んできた。


ゼノは目を丸くする。


「……酒ですか?」


長老は穏やかに頷いた。


「この村で仕込んだ果実酒じゃ。歓迎の席にはこれが一番ふさわしい」


栓が抜かれると同時に、甘く深い香りが広場に広がった。


村人達がどよめく。


「ああ、この匂い……!」

「やっぱりたまらないわ」

「前に飲んだの、いつだったかしら……」


ゼノがカップを受け取りながら尋ねる。


「村で、お酒を作っているんですか?」


長老は静かに答えた。


「今は細々と、だがな」


ガルドが苦笑する。


「俺が子供の頃は、山に果実が溢れるほどなってたんだ。仕込んでも仕込んでも追いつかないくらいにな」


女性の一人が続ける。


「収穫の季節は村中が甘い匂いでいっぱいだったのよ」


長老の表情がわずかに曇る。


「……だが魔獣が山に入り込んできての。果実を食い荒らされ、木も倒され、収穫は十分の一以下になってしまった」


ゼノは眉をひそめた。


「酷い……」


「だが、王宮にだけは、今も納めておる。」


ゼノの動きが止まる。

 

「今も?」


「今は量はわずかだが、『この酒だけは絶やすな』と、王宮にだけ出荷しているんじゃ」


村人の一人が少し誇らしげに言う。


「祝いの席には欠かせないらしいのよ」


ガルドが肩をすくめた。


「だから他に回す分がほとんど無い。俺達ですら滅多に飲めないんだ」


長老は樽に手を置いた。


 この一本も、本来なら王宮に納めるはずの酒だったが……今日は特別じゃ。村を救ってくれた礼だからな」


ゼノは一口飲む。


濃い果実の甘み。澄んだ後味。


思わず息が漏れた。


(……うまい)


《コメント:王宮案件きた》

《コメント:これ絶対伏線》


――


村長が、捌いた魔獣の皮をゼノの物だと、渡してくれた。街で売れば少しくらいの金になるらしい。


久しぶりの酒を味わいながら、ガルドは、今日畑で起きた出来事を村長に話した。

 

どこも男手がいないので、仕事になるかもしれないと、集まっている村人に、話してくれ、

隣村にも宣伝してくれると言ってくれた。


《コメント:よっ耕し屋》

《コメント:仕事ゲットしたぞ》

《生活魔法の適性が微増》

 

気づいたのだが、この村の女性や、子供は、レベチな顔立ちだ。


《コメント:きたーハーレム》

《コメント:女たらし希望www》

 


(おいおい……)


――


その夜、俺は整理した。


時々現れるガラスのように透き通った画面と、脳裏に浮かぶ文字。

 

《視聴者:》

 

《コメント:》


《投げ加護》

 


(どう考えてもアレだよな)

(で、誰かに見られてる、よな)


《コメント:バレてるwww》


「という事は、面白くすれば?」


「と言っても、金も無いし……仕事からかよ……」


――


村長が隣村にも声をかけてくれたおかげで、調子良く仕事の依頼が来た。


金銭だけでなく、食事をご馳走してくれたり、「お腹が空いたらいつでも、いらっしゃい」と村中の女性から声を掛けられた。


《コメント:ハーレム希望》

《コメント:ヒロイン欲しい》


――


その夜。


横になった瞬間、視界に文字が浮かぶ。

 

《神A:5000加護》

《期間限定ミッション発生》

《【3日以内に家を建てよ】》

《報酬:結界魔法》

《未達成の場合、加護の一部を剥奪します》


「いや無理だろ」


《コメント:逃げるな》

《コメント:神案件だぞ》


《同時接続数:81 →158 → 356 》

 

《コメント:初案件》

《コメント:期間限定だぞ》

《同時接続数:420 →685 → 751 》

 

(なんか、勝手に盛り上がって来たな……やるしかないか……)


良いアイデアが思いつく訳もなく、そのまま眠りについた。


――


次の朝。

 

(家か……)

 

「とりあえず、屋根と壁があれば家だよな?」


《コメント:何言ってんだこいつ》

《コメント:でた、適当》


――


この時のゼノは、まだ気づいていなかった。

自分の作る家が、神々の間で“伝説の配信”と呼ばれることになるとは。


――――



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