第48話 とある実技試験にて
「さぁ両者スタート位置に立ったところで……試験、開始ぃぃぃぃぃぃぃーーーーー!!!!」
合図とともに地面から氷の棘が襲ってくる。
「大人気ないな」
「久しぶり、エドワード」
間一髪のところを魔法で防御したエドワードは乾いた笑みと共にそう言うが、テイラーはにこやかにあいさつを交わした。
この試験の制限時間はない。テイラーが全員にハンドカフスを付けるか、こちら側がテイラーにハンドカフスを付ければ終了。もちろん負傷などによって行動不能になった場合も終了となる。
いきなりの大魔法に観客は歓喜した。
自然と応戦するエドワードとテイラーの一騎打ちのような状態になる。アドラーとルカも参戦しようとするが、魔法を展開してすぐ対抗魔法を使われてしまう。
この状況に苛立ちを覚えたアドラーがハイテンポで魔法を展開するが、次第にパターンを読まれて最後には展開する前に防ぐどころか解除魔法を構成されて無効化されてしまう。
会場からは感嘆と嘲笑の声が響いた。
なんだあいつら全く歯が立たないじゃないか。
まぁ所詮こんなものか。
そう言ったものがこちらまでひしひしと伝わってくる。
「何?本当にこの程度?」
ガッカリだな、とテイラーが嘲笑う。
少なくとも3人の魔法師を一気に相手にしたとは思えないほどの余裕ぶりだった。そのあまりのオーラに観客たちは目を輝かせ、しばらく嘲笑ったような表情でこのセリフを言うのがライデン生の中で流行するのはごく自然な流れであったと言える、多分。
完全に負けモードに入った会場であったが、そこにコツコツとヒールの音が鳴り響く。
「さて、お遊びはこのくらいにして……そろそろ始めましょう」
ずっと後ろで立っていたシャーロットが手をパチンと叩いてそう言うと他のメンバーは作戦通りの位置に着いた。
「何か作戦でもあるの?」
テイラーは余裕そうに笑った。
そしてお前らが戦わなきゃ勝てないぞと視線を向ける。しかし、シャーロットはお構いなしに作戦開始の合図を出した。
まずは同じ視界の中で魔法を使わないこと。
ルカ、アドラー、エドワードが同時に魔法を展開するとテイラーはエドワードの魔法を防いだ後、アドラーの魔法を防ぎ、ルカの魔法を防ぐタイミングがワンテンポ遅れる。
「どんなに優秀な魔法師でも、視界を拡大する魔法を使わない限り視野の広さは変わらない。同一の視野で魔法を複数展開するのと、離れた所で展開するのでは反応速度は簡単に落ちる」
そして、反応速度が落ちれば少なからず焦りを覚える。しかし、テイラーはそんな中でも冷静に優先順位をつけて魔法を処理し、攻撃にまで転じる。
「この程度で作戦?」
そうテイラーが笑ったところで、真後ろから黒い影が迫る。
「そんなわけないだろ」
そう言って後ろから殴りかかるレイモンドを避けるべくテイラーは体勢を崩した。そしてレイモンドに対抗するように彼の襟元に掴みかかる。
「……あれ?」
掴み掛かろうとした手は空を切った。
幻影か。
そう気がついた時には視界の先にいた本物のレイモンドによって足元に大規模な魔法陣が現れていた。テイラーはその魔法が何かを判断する前に走って魔法陣から逃れることを選択する。足元に展開するタイプは発動範囲が魔法陣の上に限られるので。逃げてしまえば問題ない。魔法陣は発動に時間がかかる。飛んでくる魔法にだけ注意を向けてテイラーは足を動かした。
「ルカ!!」
シャーロットがそう叫ぶと同時にテイラーに向かって走り出す。どうしてわざわざ味方の邪魔をするように魔法陣の上に走ってくるのか。状況を処理できないテイラーは警戒を強めたままルカを探そうとする。が、その瞬間体の異変に気がつく。
「あれ……」
体が動かない。
そう認識すると同時に、ガシャリと手に重みが与えられた。




