表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/49

第47話 とある因縁にて

その知らせは突然であった。


「お呼びですか?総長」

「あぁ、今年のライデンでブラックを引いた子達がいてね」

「ブラックを?」

「そう。そこで君にお願いしようかと」

「それは、構いませんけど……」

「良かった!これ生徒の情報ね」

「これ……!」

「君も知ってるだろ?遠慮はいらないから」


じゃあよろしく、といって追い出されたしまえばそれ以上の追及もできない。


「まさかここで戦うなんて……」


私はあの女が羨ましくて仕方が無かった。


「兄の代わりにメルクス家を継ぐのはお前しかいない」


双子の兄が亡くなり、名家の令嬢としての私の生活は一変した。女の中では優秀だった私は12貴族の一員として男の中で優秀であることを求められた。だけど、体格差は成長とともに大きくなり、当然それに比例する魔素量だって魔法力だって女の子には限界があった。だから両親が私に性転換薬を飲ませるのは自然な流れだった。


男になれば、その時間だけ魔素の自己生産量が増えて難しい魔法も使えた。だけど、薬には当然副作用があって。ライデンへの入学が決まる頃にはもう薬を飲まなくても男の体のまま、女に戻ることはなくなった。

特段困ることでもなく、むしろ喜ばしいと父は言ったが、私は私の中の何かが崩れ落ちた気分だった。


人知れず入学した史上初のライデンの女子生徒は、苦労のおかげかライデンの中でも上位の成績を保ち、2年生に上がる頃には秋の次期寮長候補として名前が上がるようになった。この頃になれば、両親の洗濯は間違いでなかったと消化できるようになっていた。


それなのに。


2年生の頃、ひとつ上の学年に異例の転入生が現れた。3年生、つまり18歳とは思えない程幼い容姿の2人組。第4寮に配属された2人は一夜にして冬の長となった。そもそも実力者揃いだった100期生の中でも特に目立つ2人があのバケモノたちの中に溶け込むのは一瞬だった。


私が長年の努力と多大なる犠牲で得ようとしている地位を一瞬で手に入れた。しかも、私が人生を賭けて否定しようとしていた女が。


女は短くてヒラヒラしたスカートを履いて、絹のように美しい髪を靡かせて学園を闊歩していた。イベント事には同級生の仕立てた綺麗なドレスを着て。男になってしまった今の私には許されないこと。女ながら、彼女は彼女のままでこの学園に君臨していた。


彼女が羨ましく、そして妬ましくて仕方がなかった。

何の犠牲も払わず、女のままでも男となった自分と同等、それ以上の実力を持てるということ、自分の払った犠牲を嘲笑われている気がして。


いつか負かしてやらなきゃ気が治らない。だけど、彼女の目に私が映ることは一度も無かった。彼女はまさに漫画の主人公のように、バケモノたちと在学中たくさんの伝説を残した。私はその光景をイチ部外者として見ている事しか許されなかった。100期生は歴代のライデン生の中でも特に同級生同士の仲がよく、先輩や後輩たちとの関わりが少なかった。絶対に敵わない。実力のない自分が気安く声をかけるなんて許されない、当時の後輩たちはみなそう思っていたと思う。


100期生が振り回した学校は、彼らの卒業と共に急激に衰退し空白の世代とまで言われた時否定できない自分の実力が悔しかった。やっとの思いで聖騎士になって、聖騎士団長にまで上り詰めたときも、既に彼女はその席に座っていた。


詳細は知らないが、2人がライデンに出戻ったと聞いた時在校生に同情した。だが、平凡な生徒を瞳に映している彼らを見た時、自分の中で言葉にできない何かが湧き上がった気がした。たかが首席と聖騎士一家の息子。そんな4人とエドワードがチームを組んで自分に挑んでくるという。どうせあの2人は動かないだろうが別にいい。エドワードもきっと私と同じ気持ちなのではないか。


あの女とあの女の瞳に映る特別を否定してやる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ