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第36話 とある衝突にて

声が聞こえた方へと振り向くと、そこに立っていたのは見覚えのあるバッチを付けたスーツを身にまとった男。渋い声とは裏腹にその顔はずいぶんと若く見える。刹那、周囲にいた人間が一斉に頭を下げる。男は右手を軽く上げてそれを制した。誰だろうと思考を巡らせるルカに対して、ミスティーは眉をひそめた後すぐに営業スマイルへと切り替える。


「初めまして、ミスティー・ブルーと申します」

「魔法協会の理事をしております。エルヴィス・ミネルヴァです。いやいや、素晴らしい発表だったよ」

「ありがとうございます」

「隣の……ルカ・フェイマス君、だったかな?」

「……え?あ、はい」


思わぬタイミングでの発言に気の抜けた声を返すと、隣に立っていたアドラーが顔を真っ青にしていることに気が付いた。


「君の活躍は3校戦の時から拝見させてもらっていたが、学年主席なんだってね?君のような優秀な人間がまだいてくれると思うとこちらも安心だよ。卒業後の進路はどのように考えているんだい?」

「いえ、まだ何も……」

「そうか!どうだろう、魔法協会に来るというのは」

「えっと、」

「ライデンから魔法協会の人間が生まれるというのは興味深いですね。魔法協会とライデンはてっきり折り合いが悪いと思っていました」


ミスティーはハハハ、と乾いた声を上げる。


「私は優秀な人間に声をかけただけだよ。前例がないなら作ればいいしね」

「なるほど、流石です」

「それほどでもないよ。……そういえば、今年のライデンは何か変わったことはあるかい?」


例えば新しい教師とか、変わった生徒とか。

あぁ、それなら。ルカはあのモノクロの彼らを思い浮かべた。


「いえ、何もないですよ」


間髪開けずにミスティが答える。


「そうか」


では、フェイマス君、よく考えておいてくれ。

それだけ言い残して彼は要は済んだと言わんばかりに会場から姿を消した。


「何あれ、こっわ。僕の事完全無視だったんだけど」

「まぁルイス家は代々聖騎士の家系だし。あいつらが一番嫌いな人種でしょ」

「あのなんでみんなあの人に頭下げてたんですか?」

「……は?この子何言ってんの?」

「ルカは常識が抜け落ちてるんですよ」

「まじか。さすがにヤバすぎ。12貴族知らないとかある?」


12貴族。神の持つ創造の力を与えられこの世界を作ったエウリクスの末裔、つまり太陽王を中心とする貴族たち。世界の象徴であるエウリクス家以外の家はそれぞれ魔法協会としてこの世の魔法の一切を取り仕切っている。彼らは治める土地こそないが基本的には太陽王と同列の貴族という位置づけがなされている。もちろん実際には大きな差があるが。


「なんでエウリクス家だけが突出して太陽王と呼ばれているんですか?」

「まじで知らないの?それは……」

「貴様ら!!!」


鬼の形相で近寄ってくるデイヴィッド・マーフィー先生。

どうやら彼の車の件がバレたらしい。あぁ、俺たち死ぬんだ。3人はそう思った。

だって彼の趣味拷問だもん。研究室にめっちゃいっぱい道具置いてあるし、校内には彼の作った罠があって引っかかった生徒は姿を消してしばらくしたら人が変わって帰ってくる。

あぁ、殺される。そう思ったとき、


「マーフィー先輩」


神が舞い降りた。


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