第35話 とある発表にて
『続きまして、ライデン魔法魔術学校よりA班の発表です。筆頭著者、ミスティー・ブルー。共著者、アドラー・ルイス、ルカ・フェイマス』
拍手の中、だるそうなミスティーの後を緊張した様子の2人が続く。
「間に合ってよかったな」
「ほんとよ全く」
「間に合わなかったらどうしてやろうかと考えていましたが、よかったです」
ご紹介に預かりました、ミスティー・ブルーです。
マイクを手に持ち軽く確認をすると、ミスティーは口を開いた。
「今回の研究テーマは人工知能の魔法使用について。現在人以外のものが魔法を使用することは不可能とされており、魔法の効果を発揮させる場合はその発揮させたい物自体に条件を付けて魔法を付与することが必要です。しかしそれでは常に術者の負担になるだけでなく、1種類以上の魔法を付与することは困難です。そのため聖騎士団の保有するキラーでもかけられている魔法は外側の保護魔法のみで……」
普段の様子とは違ってまじめに発表をこなしていく様子にレイモンドは驚いた。また辺りを見回すとハイレベルかつ実用的な研究に多くの企業や関係者が食いついている様子だった。
「リスクとして考えられるバイアス問題ですがこれは学習するデータ一つ一つに含まれている気が付かないようなバイアスを学習してしまうことに起因します。ですから……」
一通り説明が終わると苦労して運んだハードが現れる。
「では実際にお見せしましょう」
『テストモード作動』
「ノイロイド、この会場を星空に変えろ」
『星空再現魔法、ステラマリスを実行します。魔素数確保、魔法式演算フィールド処理完了。実行まで、3,2,1』
聴衆は天井に現れた満点の星空を見て驚嘆の声を漏らした。
ミスティーはその後も様々な指示を出すが、ノイロイドは正確な魔法選択と処理でそれを実行していく。
「この人口魔法使用装置ノイロイドですが、実用化に至るまでの課題点として挙げられるのは魔素の許容量と確保です。大規模な魔法であればあるほど当然魔素の減りが早く、現状の許容量では3回の魔法使用が限界です。いかに魔素を蓄え、そしてそれが尽きたときの魔素をいかに確保するかということについて今後も研究を続けていきたいと思います」
ご清聴ありがとうございました。
その言葉を皮切りに会場からは割れんばかりの拍手が巻き起こる。
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「よかったですね」
「変な質問が来なくてね」
「え?」
いやいや君らは知らんだろうけどさ、とミスティーは「素人質問ですが」というキーワードや沈黙の恐ろしさについて語り始めるが、アドラーには全く響かなかった。ルカは食事片手に辺りを見回すが、目線の先の怪しげな商談にはクリスの姿しか確認できない。
秋の魔法コンペティション、優勝はミスティー・ブルー。審査員たちは満場一致の決定だったという。レセプションパーティーには多くの人間がミスティーたちを囲んだが、当の本人は面倒だと早々に壁の花へとなり果てた。いまだ話す機会を伺う視線は感じるが、彼の出す話しかけるなというオーラに気圧されてよほどの人間でない限り近づいてすら来ない。
「やぁ、初めまして」




