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第32話 とある春のお屋敷にて

「はいはい、やめやめ。そいつらクリスのお使いやから」

「「ノア兄さん!」」


ノア兄さん、と呼ばれた男は制服をもはや原型がないところまでアレンジし、紫の前下がりショートの髪から覗くピアスには矢のようなデザインが施されていた。


「ごめんなぁ1年坊。クリスから話は聞いてるで、案内するわな」


そういって連れてこられたのはお屋敷の離れにあるアトリエ。一見ガラス造りで温室のようにも見えるその建物の中にはこれでもかと洋服が並べられていた。完成したものから洋裁途中のものまでさまざまなトルソーが置かれている。


「とりあえず君ら2人の採寸するわな。時間もないし今回は俺の過去作手直しするしそれで許してや」


4人は思った。めっちゃいい人だと。

偏見持っててすみません。心の中でそう謝った。


「ほんまはガラの準備もあるし殺したろか思たけど、クリスにはこの間の借りがあるさかいしゃーない。会場で俺の名前宣伝してきてやー」


前言撤回。普通にライデンの人だった。


「そんでそこのお嬢ちゃん。シャーロットやっけ?あんたは服あるん?」

「私は見に行くだけなので。友人が用意してくれる手筈なのでそれを」

「そうかぁ残念。女の子の服作れる機会なんてここではそうそうないねんなぁ」


いつもは後輩に無理やり性転換薬飲ませてるんやけどアレでもやっぱり本物には敵わんねん。

ぼそりと呟かれた間違いなく禁術レベルのそれを拾い上げる愚か者は幸いこの場にはいなかった。


出来たら寮に届けるわなぁ、と言われ寮に戻る。

勿論自分の寮に。


「シャルの友達って洋服作れるの?」

「えぇ、すごく上手なの」

「ふーん」

「そういえばシャルの事僕全然知らないかも。出身ってどこ?」

「うーん……言ってもわからない田舎よ」


シャーロットもレイモンドもいつも自分の話になるとはぐらかす。

そのことに疑問を持っているのはどうやら自分だけではなかったらしい。

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