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第22話 とある試合にて

マジカルサバイバル。

仮想空間内において各校代表20名が殺し合うサバイバルゲーム。ルールはシンプルでフィールド内に隠された空間魔法の解除コードを探し出し、空間魔法を解除した時に生き残っていた人数が一人でも多いチームが優勝となる。なお、解除コードを手に入れたチームは生き残り人数が5人加算され、持ち込みの道具は杖と箒のみだが使用魔法に制限は一切なく、魔法で作った武器であれば使用することが出来る。

制限時間も存在せず、魔法が解除されるか2チームが全滅するまで試合は続く。


通常であればこの手のゲームは簡易仮想空間と言って体をそのまま仮想空間に転移させるが、今回は多くのスポンサーや聖騎士団の協力により完全仮想空間魔法の大規模使用が実現した。完全仮想空間魔法とは作り上げた仮想空間の中に身体情報をコピーして意識や感覚だけを転移させる方法である。つまり、魔法を使う感覚や魔素(マナ)量、攻撃を受けた際の痛みはそのままに、実際の怪我のリスクだけを回避できると言う優れモノだ。しかし、本番以外でこの魔法を使用することは難しく各校練習は現実世界での肉弾戦である。いくら意識と感覚だけを転移させるとはいえ、当然その人の現在の身体情報がそのままコピーされてしまうため、練習段階で怪我をした人間などは出場辞退するほかないと言うのは普通の競技と変わらない。普通は怪我をしないよう細心の注意を払うが、ライデンでは毎日が殺し合いであった。


「全く、こんなめちゃくちゃな練習してるのライデンだけだよ」

「でもそのおかげで出場できたんだろ?」

「そりゃ兄貴たちに見てもらえるのは嬉しいけど……」


出場選手たちがコピー用の魔法陣の書かれたベットに横になる。ライデンチームは補欠を含めた5人が練習段階で出場不可となった。これに関しては不慮の事故と言うより意図的な出場争いによる退場がメインである。つまりここにいるのは、運よく生き延びた者と席争いからレギュラーを弾くことに成功した者、そして圧倒的な強者だけである。


『これより競技を開始いたします』


アナウンスと同時に真っ白になった風景は一瞬で草原へと切り替わった。手には箒と杖。周りを見渡すとそこには同じユニフォームのものしかおらず、おそらくチームごとにエリアのどこかに固められていると考えられる。


「事前の指示通り動け。B班、行くぞ」


副キャプテンで参謀役のアルベルト・スイフティーが指示を出す。チームの中で役割別に班分けがされており他チームと戦うアタッカータイプのA班、偵察及び作戦立案のB班、解除コード担当のC班。アドラーとルカの1年生コンビはA班に振り分けられており、C班を守りつつ他のグループを殲滅する役割を与えられていた。


他の2校は勿論、ライデンの生徒ですら人を殺した経験などおそらく無い。いくら現実でダメージを与えられないとは言っても生きている人間。各校生命を奪うような決定的な魔法は使わず脱落者はゼロ。おまけに解除コードも見つからないとあって試合は長期戦化していた。


「解除コード、どこにあると思う?」

「誰が隠したのか知らないけど、私なら各校のスタート位置から等しい距離、もしくはラッキーで見つけられない場所。例えば、火山の中とか海の中」

「ははっ、イカれてる」

「だって見てる側としたら高校生がどんな大魔法使ってくるのか試したいでしょ?」


簡単に終わっちゃつまらないわ。それにこの地形を作って解除コードを隠したのは聖騎士たちだもの。

美しい髪を靡かせながら、シャーロットは関係者席に目を向けた。


「……どうやら上手くいったみたいだな」

「どうかしらね」


エリアの中心である火山エリアにて。

長期戦化しプレイヤー同士の殺し合いを優先した3校の生徒が集まっていた。どうやら3校ともこの広いエリアにおいて地道にコードを探して魔力を消費するくらいなら今のうちに潰してやるという考えに至ったようで、かちあった2校の争いにライデンの生徒が漁夫の利を狙って見ていたところ巻き込まれたという状況。

いつの間にかほぼすべてのプレイヤーが集まったそこは戦場と化していた。


「ルカ、アドラー俺についてこい」

「「はい」」


戦況はライデンの圧倒的優勢。そもそも魔法協会の教育改革によって危険な魔法を習わない2校の生徒はせいぜい失神魔法くらいしか使わないし、ライデンの生徒は禁術研究が趣味の人間や喧嘩慣れしている人間が多いことから考えて負けるはずがない。実際に殺したことはなくても瀕死に追い込む、追い込まれた数はピカイチなので。なんなら練習の時の方がよっぽど命の危険を感じた。

ライデンの脱落者がゼロなのに対して、2校は残り人数半分と言ったところ。中には脱落者の死体や重傷者を見て逃げ出そうという者もいる。ライデンの応援席は大盛り上がりだった。


「やっちまえ!」

「おいアーサーもっと殺せ!お前に全賭けなんだぞ!」

「ぬるいんだよ!」

「もっと痛めつけろ!」


倫理観なんて存在しないライデンでは人が死ぬごとに歓声が上がっていた。自分が殺すとなると話は別なのだろうが見ている分には面白いことこの上ない。

誰が一番多く殺すかで賭けが行われており、1番人気はアーサー、2番人気は戦闘員ではないもののサイコパスと名高い参謀役であった。


「何だあれ?」


誰かが発した声は観客席に広がっていく。火山の中から現れる何か。

まだ選手たちは気が付いていない。


あれってキラーじゃね?

会場に動揺が走る。キラーとは聖騎士団の保有する殺人ロボットのことである。そのレベルは1から8の8段階であり、肩に入ったラインの色で判断することが出来る。

肩の赤はレベル5を示していて下級聖騎士と同等のレベルの強さを示している。


「アーサー先輩!」

「どうし……」

「アーサー先輩!!」


いち早くその存在に気付いたアドラーは先導していたアーサーに声を掛けるが、振り向いた瞬間アーサーの頭部はどこかに消え去っていた。


「キャプテンがやられた!」

「レッドキラーだ!逃げろ!!」

「嘘だろなんでいるんだよ!」


さっきまで我が物顔で杖を振っていたライデンの生徒たちは逃げ惑う。突如現れたレッドキラーたちはそれを逃がすはずがなく、確実に選手たちを攻撃して脱落させていく。


「これ、ライデンの生徒ばっかり狙われてないか?」

「え!?」


ルカの言葉を受けて走りながらアドラーは周囲を見回した。一見無差別に攻撃されているように思えるが、確かによく見てみるとライデンのユニフォームの多いところに攻撃が集中している気がする。


「確かに!でもなんで!?」

「分からない。でも俺たち離れないと狙われ……」


刹那、目の前に現れたキラーがこちらに魔法を向けているのが見えた。

スローモーションになる世界の中でルカは悟った。

これ、死ぬな。

でも、俺たちが死んだらもうアタッカー全滅だ。負ける。反撃しなきゃ。

何か。何か。何か対抗できる魔法は。


「ファンファーレ」


咄嗟に向けた杖と共にいつの間にか出ていた言葉は、世界を変えた。

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