第21話 とある開会式にて
世界でもトップクラスの名門校3校が集まる3校戦。元々の注目度は勿論のことだが、今年はより実践的な魔法を競うと言うだけあってその注目度合いは例年の比ではなかった。
招待されたVIPに留まらず世界中からあらゆる分野の有名人が出揃う。メディアでは特集や特別番組が予定されているほどの事態にライデンを除く多くの生徒はプレッシャーを感じていた。
そんな中幕を開けた3校戦は、彼らにとって憧れの人の挨拶で始まる。
開会式の挨拶は例年学園長が行っていたが、今年は新しい試みに興味を持った聖騎士たち(主にライデン出身)が多く来場するということで、学園長はその挨拶をとある人物に依頼した。
「開会に際し、秋の聖騎士団団長テイラー・メルクス様よりお言葉を頂きたいと思います」
突然のアナウンスに生徒たちは興奮を隠しきれない様子で声を上げた。秋の聖騎士団入団からわずか数年でそのトップまで上り詰めた彼は、まさに聖騎士志望の多い魔法職者養成学校の生徒たちにとっては憧れであり、目指すべき目標でもある。
マントを靡かせながら堂々と歩く彼を見てあちこちから「かっけー」とか「オーラヤバいんだけど」といった声が聞こえる。彼はマイク前に立つと、視線だけでその声を静め、一つに束ねた長髪を後ろにずらしながら声を響かせた。
「ご紹介に預かりました、秋の聖騎士団団長を務めております、テイラー・メルクスと申します。本日こうして無事3校戦を迎えられたことを大変喜ばしく思うとともに若き才能たちへの期待で胸がいっぱいです。私自身もライデンカレッジを卒業し、皆さんと同じように3校戦を経験しましたが、私の時はここまでの注目度と生徒たちの熱意がなく少し羨ましい気持ちもあります」
その声はアルトよりずっと男声ではあるものの、テノールよりずっと澄んだ響きを持ち、大きな声でなくともよく響く。いつもは大人の話など全く聞かないライデンの生徒も珍しく黙って聞いており、教師たちは驚きと共に教え子に負けたという悔しさに苛まれていた。
「この中から秋の聖騎士団へインターンに来られる方や将来私が背中を預ける人間が生まれることを楽しみにしています。皆さんの可能性を最大限見せてください!」
割れんばかりの拍手に包まれながら開会式が終わると、生徒たちはそれぞれ応援席と控室に向かった。ルカとアドラーもユニフォームに着替え、控室へと向かう。
「そう言えばシャルとレイは?」
「朝から見てない。まさかサボる気か?応援と言えど出席取られるのに……」
通常授業とは別カウントでとられる特別授業に該当する今日の3校戦は、そもそも特別授業の回数が少ないことと1日中行われるという点によって欠席するとかなり出席日数が厳しくなる。最も、サボりたいと思う生徒などほとんどいないためそこまで気にしている生徒など居ないが。
「おいお前ら、検査始まるぞー」
検査とは本人確認やいわゆるドーピングをしていないかという身体検査と使用する魔法具への不正カスタムが無いかという機材検査の2種類である。とはいえ今回の使用する箒は用意されたもので、杖だけを提出すれば後はドーピング検査用の魔法薬を飲めば終わりという簡単なものだ。そもそも学校行事であることを考えればこれでもかなり厳しいほうであるが。
無事検査が終わると選手たちは控え室へと戻る。緊張感が漂う中、なけなしのノックと共にドアが開いた。
「お疲れ様ー!」
「調子どうだ?」
ルカとアドラーは呆れを通り越して尊敬した。先輩たちがいっぱい、それも試合前の控え室はみな集中していて尋ねて来る者もいない中、この二人は先輩への挨拶もそこそこにゆるーい雰囲気で入って来た。常人には出来ない。しかもシャーロットはアイス片手に。
「ねぇ箒見たいわ!結局どんなのを使うの?」
「俺は杖が見たい。それぞれデザインも仕様も違うだろうし」
何言ってんだこいつらは。
流石に先輩たちも怒るかと思ったが、あまりの突飛さに驚いて「あ、あぁ」と従ってしまう者が半分、男子校が故に女の子への耐性不足で押し切られてしまうものが半分、と誰も2人を止める者は居らず、アーサーですら注意できなかった。その間にも2人はチームメンバーの箒や杖を触っては「すごーい!」と歓声を上げていた。……2人ってそんなに杖とか箒好きだったっけ?
一通り見終えると満足したようで「頑張ってください!」と愛想を振りまきながら出て行った。
「何だったんだ?」
「さぁ……」




