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第19話 とある報告にて

「ダメ……僕もう死ぬ……」

「俺も、寮長鬼だろ……」

「2人共毎日夜遅くまでやってるもんな」


3校戦前日。長く続いた特訓に2人の体は限界を迎えていた。

毎日の基礎トレーニングとチームの実践練習に加えて半ば強制の自主トレーニング(寮長の監視付き)はどれも学内トップレベルが集まるだけあって1年生にはハードな内容ばかりであった。上級生でも脱落者が出る中生き残った二人は傍から見てもその魔法力は飛躍的に向上していた。その分授業時間はほとんど睡眠時間となってしまっているが。


「寮長ってばこっちが限界だって言っても気合で何とかなる!しか言わないんだよ!?ほんと脳筋!」

「俺、何回も死ぬかもなって思いながらやってたわ」

「しかも自分は休憩時間妹の自慢話ばっかしてるし!」

「シスコンなんだろ?俺ほとんど聞いてないけど」

「へぇ、あの寮長がシスコンとは意外だな」

「何か両親が亡くなって唯一の家族らしいけど。それにしたって長いし相槌求めて来るから僕休憩時間まで色んな意味で死にそう」

「そんなことよりレポートはもう書いたの?」

「そんなことって酷くない!?僕にとっては死活問題なんだよ!って、レポートなんかあったっけ?」

「トランスについてのレポート。明日までだぞ」

「気を付けなさいよ。ここの留年者って大抵出席日数の不足と課題未提出だから。まぁ喧嘩して入院とか事件起こして少年院入ってる間に落とすパターンが多いけど」

「相変わらず治安最低だよね。というかトランスって何?」

「トランスって言うのは魔法の使い過ぎで起こる魔力暴走状態のこと。状態によってステージ分けされるけど重度の場合はその場ですぐ亡くなるケースもある。俺も忘れてた。とりあえず3校戦終わってからやる」


ルカは徹夜を覚悟した。十中八九疲れ切ってレポートなど書ける状態ではないと言うことは分かっていたが今だって書ける状態ではないのだ。もはや内心もうあきらめようとすら思っている。


「アドラー、本番用の箒ではもう試したのか?」

「ううん。まだ。まだ届いてないっぽいよ」

「妙だな……」

「何が?」


今回のマジカルサバイバルでは不正を防ぐために全員一律の箒を使用することになっている。杖に関しては直前に検査を行うことになっているが、箒に関してはそれに加え全員が同一モデルのものを使った方が公平だとの判断により主催側から直前に配布される手筈になっている。しかし、いくら直前とは言っても前日の練習にすら間に合わないなんてことがあるだろうか。


「直前にも検査が入るのにそんなに俺たちって不正すると思われてるのか?」

「検査に魔法協会も入るのにね」

「え?」

「そりゃ3校のうちのどこかが検査するんじゃ公平じゃないし、出て来るのは分かるんだけど。それにしてもなんか気に入らないのよね」


静かな時って何かを企んでるって言うじゃない?杞憂だといいけど。

シャーロットは寮長会議で配られた会場図に目を落とした。

来賓席には現役の聖騎士や大企業の重役、他にもファッションモデルやアスリートと幅広い分野の著名人が招待されていた。そのほとんどが3校、ひいてはライデンのOBであり、彼らはこうした場で活躍することで自分の将来を掴んできた。もちろん3校戦でこれほどの注目度があるのは稀だが。


「絶対に活躍しないと。兄貴たちみたいな聖騎士になるためにはスカウト必要だし」

「あぁそういえばアドラーは聖騎士志望だもんな」

「いや、この学校にいて聖騎士志望じゃないほうが珍しいでしょ」

「そうなのか?」

「えぇ……みんなってなんでライデンに来たの?」


アドラーが思いついたように溢した。


「ちなみに僕は兄貴たちが聖騎士だし、親父もそうだから自然に。聖騎士になるには一番の近道だしね」

「私も似たようなものよ。私に色んなことを教えてくれた人が聖騎士だったの。その人と同じ立場に立って同じ景色を見るようになればあの人みたいになれるんじゃないかってね」

「俺は単純。シャルがライデンに行くって言うからついてきただけ。別に聖騎士希望だったとかではないな」

「え、2人ってそう言う関係なの?」

「違うわ。……で?ルカは?」

「俺は俺を育ててくれた人がここのOBだったから。シャルとほとんど一緒。ただ聖騎士とかそういうのは考えてなかった」

「へー。なら意外とみんな割と似たり寄ったりだね」

「確かにそうね」


夜も更けてきた頃、明日に備えるべく4人は寮に戻った。


ルームメイトが寝静まった後、ルカはまだ寝れないでいた。

第2寮はいつも真夏のように熱いが夜になると幾分かマシになる。バルコニーに出ると夜空にはいくつかの光が流れているのが見える。咄嗟に杖を構えて、安堵した。あれは魔法ではなく流れ星だ。


「君の名前は?」

「……ルカ」


突然訳も分からず降り注いだ攻撃魔法。どうしようもなくさまよっていたところを拾ってくれたあの人。


「ルカ、身一つになった時に助けてくれるのは知識だけだ。学ぶことを止めてはいけないよ」


誰よりも優しく、学校に行ったこともない俺に生きる力をくれた人。

あの人の使う魔法は世界の誰よりも丁寧で精密。なのにほとんど魔法を日常で使うことは無かった。人より多い俺の魔力量を見ても、まずは構造と理論と言って座学をひたすら叩き込まれ実践をさせてもらえることは無かった。あの時はそれが何より重要だなんて思っていなかったけれど。

結局、俺の魔法を見せる機会は無かったな。


「オリバーさん。俺、いつかあなたみたいに魔法が使えるようになるかな」


ルカの小さなつぶやきは夜空へと吸収されていった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

作者の星奈です。

なんだかんだ投稿を続けて気が付けば19話!完結まではまだまだですが、この調子でできる限り毎日投稿しますのでよろしくお願いします。

そしてぜひともブクマ、評価などなどお待ちしております!!!

モチベにもつながりますし、飽き性な私がサボらないよう激励の意味を込めてどうぞよろしくお願いします。感想、レビューも!ぜひ!

前作の目標と同様100話くらいで完結させたいのですが、現在の執筆状況的にまたしても超えてしまいそうな予感がしています(笑)どうぞ最後までお付き合いよろしくお願いします。

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